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外面がいくら良くても中身は透けて見える

恋ヶ窪さんと一緒に帰りたい!

俺は彼氏だ!一緒に帰りたい!2人だけで!


しかし俺の心の叫びは虚しく響いた。

今日は週に二回しかない部活だ。


「部活頑張って。」


「ありがとう。

気を付けて帰って。」


何故テニス部になんか。

水泳部にすればよかった。今プールが壊れたとかで修理の工事で部活動ができないから。


「光ヶ丘、早く来いよ。

先輩待ってる。」


「あ、うん。」


椎名くんに返事をした隙に恋ヶ窪さんはいなくなっていた。

ああ、一緒に帰りたい。



部活はいつも通りだった。

先輩も同学年も俺に胡麻擂り必死だった。

つまらない奴らだ。


「おーい!光ヶ丘くーん!」


「……田無さん?」


俺が着替え終わり帰る支度をしていると、田無さんが慌てた様子で教室に飛び込んで来た。


「どうしたの?」


「恋ヶ窪さん待ってるよ!」


待っててくれたのか。

喜びで胸が一杯になる。


「どこにいるの?」


「図書室!」


「ありがとう!」


俺は支度を適当に終わらせ、急いで図書室に向かう。

今はもう17時半。

3時間近くも待っててくれた……。


廊下に一歩踏み出した時、思い切り誰かにぶつかった。


「って!」


「あっ、ごめん!」


そこにいたのは拝島くんだった。

後ろで田無さんが固まるのを感じる。


「光ヶ丘?どうしたんだよ、お前が慌てるなんて珍しいな。」


「彼女が待っててくれてるからさ。

ごめんね、ぶつかっちゃって。」


「いいって、気にすんなよ。」


拝島くんはおおらかに笑う。

拝島くんが動くたび、田無さんは萎縮していく。


「じゃあそういうわけだから。

田無さんも行こう。本返すんでしょ。」


「うん。」


彼女はサッと駆け寄って俺の陰に隠れるようにしていた。

真っ白な顔色だ。


「また明日。」


「ああまた明日……。

依澄もまたな。」


田無さん……田無 依澄は返事をしなかった。

ただ拝島くんから隠れるように縮こまっていた。


そういうことをするから余計に苛められるんじゃないだろうか。

暫くお互い何も言わずに廊下を歩いた。


後ろを振り返ると、拝島くんは俺たちを憎々しげに睨んでいたが、目が合うと下駄箱の方へ去って行った。


「……光ヶ丘くんに言うことじゃないと思うけど、気を付けてね。」


田無さんはボソリと呟く。


「……そうだね。」


Aクラスは今現在、二手に分かれた派閥がある。

俺以外は女子で固められた派閥と、それ以外の男子の派閥。

勿論、派閥に属さない朝霞さん、千川くんなどもいる。

そして派閥同士互いに仲が悪いという事はない。

ただ拝島くんに対する振る舞いが違うだけだ。


拝島くんと仲良くしたり、媚びへつらったりしている男子と、拝島くんから距離を置こうとしたり、軽蔑している女子。


それだけ拝島 遥は影響力がある。


全て人伝に聞いただけだが、彼は小学校の頃から暴君で、気に入らない子は苛めて学校をやめさせたという。

喧嘩上等、上級生だろうと殴りかかった。

それは中学に入ると毛色を変え、より凶暴になった。

普段はおおらかで優しいが、一度怒るとその相手を再起不能にする。


本当かどうか知らないが、上級生をムカついたからと病院送りにし、ゲームセンターに入り浸ってカツアゲをしたり、女の子に襲いかかったりするらしい。


そんなこともあり、クラスの女子は拝島くんと関わらないようにしている。

だから俺に近付いてくるというのもあるのだろう。

拝島くんと敵対しても、俺ならば権力を使って彼をどうにか出来るから。


勿論、噂の全部が本当だとは思わないから対立するつもりはない。

が、全部が嘘だとも思わない。

田無さんという生き証人がいるのもあるが、何より彼の言動には引っかかるものがある。

恐らく俺が嫌いなのだろう。

クラスメイトを掌握するのに邪魔だからか、鼻に付くからかなんなのかはわからないが。


「……何考えてるんだろう。」


「さあ。俺にはわからない。

でも誰かといれば危ない事はないんだから、1人にならなければ平気だよ。」


「うん……。」


田無さんは拝島くんの幼馴染だという。

が、彼女は昔から拝島くんに苛め抜かれ、小学校の時は不登校になるも家まで押しかけられ、中学でやっと離れられた……と思ったら高校で同じクラスになってしまったそうだ。


田無さんはお姉さんもキリンを飼っちゃうような人だし、幼馴染は悪逆非道だし、本当に哀れなものだ。


「……哀れな田無さん、今度ベタ買ってあげようか?」


「いいの!?」


「うん。だって魚でしょ?

1000円しないくらいだよね。」


「まあ安いのは……。

でも私が欲しいのは15000円。」


「いちまっ……」


魚に15000円?それは無理だ。

お年玉で買ってくれ。


「1000円くらいならお布施にちょうどいいと思ったんだけど魚に15000円は高すぎる。

ベタは諦めて、ドーナツにしよう。」


「100円……。」


くだらない話をしていると、図書室に着いた。

恋ヶ窪さんはどこかな。


「あっ、光ヶ丘くん、田無さん。」


「恋ヶ窪さん……!」


いた。彼女はブラックジャックの12巻を読んでいた。


「待たせてごめんね。」


「う、ううん。私がその……一緒に帰りたかったから……。」


その言葉に全身が痺れる。

恋ヶ窪さん……なんて可愛いんだ……。


「帰ろっか。ブラックジャック借りてく?」


「平気。

田無さんも帰る?」


え?

恋ヶ窪さん、まさかと思うけど田無さんとも一緒に帰るつもりか?

それじゃいつもと変わらないじゃないか。

俺の殺気を察したのか、田無さんは引きつった笑みを浮かべて「もう少し図書室いるから。」と答えた。


「そっか。

じゃあまた明日。」


「また明日〜。」


田無さんと別れて、2人きりになった瞬間彼女の手を繋ぐ。

あったかい。図書室にいたからかな。


「……朝霞さんと一緒に帰らなくてよかったの?」


「結衣は今日コナンくんの映画観るからって先に帰ったよ。」


「そうなんだ……。」


ありがとうコナンくん。

お陰で2人きりで帰れてる。


「恋ヶ窪さんは普段どんな映画観るの?」


「んー、あんまり映画観ないけど……ディズニーとか観るよ。」


「ちょうど今やってるよね。

今度観に行く?」


「う、うん!」


恋ヶ窪さんはニコニコと笑った。

こんなに可愛い子が俺の彼女か……。

最高だな。


「……あれ?」


「どうかした?」


「いや、今拝島くんがいたんだけど……。

こんな時間に何やってたんだろ。部活かな。」


拝島……?

彼は水泳部だ。今は活動していない。

……そういえばさっきも何故教室に入って来たのだろう。

何か嫌な予感がする。


「拝島くんってどこにいた?」


「下駄箱のところ。」


恋ヶ窪さんは俺の手を引っ張って拝島くんがいたところを指した。


「ここ。靴履き替えてたけどもういないね。

テレポーテーション?」


「テレポーテーションならいいんだけどね。」


拝島くんがいたというところは、田無さんの靴箱の前だ。


「拝島くん、靴履き替えてたんだよね?」


「え?うん。

ここら辺で下駄箱開けてたし……。」


それって靴履き替えてたんじゃなくて、田無さんがまだ校内にいるか確認したんじゃ……。

田無さんの身が危ない?


「光ヶ丘くん、どうかしたの?」


「……なんでもないよ。」


折角2人きりで帰れるんだ。

田無さんの身よりも恋ヶ窪さんと一緒に帰る方が大事だ。


「……ん?拝島くんの下駄箱ってここじゃないよね。

どうして下駄箱開けてたんだろ。」


恋ヶ窪さんは勘がいい時がある。

普段は鈍いのにな……。


「さあ……。ラブレターとか?」


「えー、拝島くんはそういうタイプじゃなさそう……。

力づくで手に入れるタイプ。」


「どうしてそう思うの?」


「……父に似てるから。」


恋ヶ窪さんはどこか遠くを見たまま言った。

あのドメスティックバイオレンスクソ野郎に拝島くんが似てるのか。


「光ヶ丘くん、本当になんでもない?」


恋ヶ窪さんは不安そうな顔でこちらを見つめた。

嘘はつけないか……。


「……田無さんがもしかしたら何かされてるかもしれない。」


「田無さん?

まだ図書室にいるよね。」


「多分。」


「行こう!」


恋ヶ窪さんは俺の腕を引っ張って図書室に走り出した。

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