心の独り言
それは、雪解けの季節。
ぼけっと街灯に寄りかかっていた。
「ハロー、生きてますか?」
ふざけたように、君は言う。
「生きてるよ。まだ、ね」
とぼけたように、僕は答える。
幾度と繰り返したいつも通り。
「ソレは重畳です」
淡泊な受け答えと、親密な距離。
対比するような温度が、体の内と外。
「どうした?」
「夫に会うのに、理由が必要ですか?」
意味のない問答。
雑味のない空間。
冬の終わりが、澄んだ空気を。
春の始まりが、密やかな温もりを。
「帰りましょうか」
「あぁ」
君が歩き出す。
帰る場所は、二人一緒。
「どうしました?」
立ち尽くした僕を振り返る君は。
花ほころぶように微笑んで、手を差し伸べた。
「ありがとな」
あの時から変わらない。
貴女に救われたあの日から。
「どういたしまして」
そっと手をとれば、いつも通りで懐かしい。
そして、愛おしい温もり。
僕は君と一緒に歩くよ。
だから、君は僕と同じ方を向いていてほしい。
「ね、恋って素敵でしょう?」
自慢げにいう君に。
僕は言葉で答えられなかった。