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初期練習作(短編)

昔の名残

掲載日:2015/07/09

 この地域には、昔から戦争が多かった為か、

いくつもの古い城が点々とある。

ある城は白く高貴な雰囲気があり、

また他の城は幾分個性的であるというように、

それぞれの城が情緒にあふれている。

実は、城のどこかにお宝があるという噂を聞いた。

しかしあるのは、降り積もる塵ばかりだということだ。

それに焼け落ちて無くなってしまったものもあるらしい。

それらは歴史深くを流れる忘却の彼方にあるだろう。


 わたしは、住民達に聞き取り調査を行い、

このいくつもの城について、詳しくまとめてみることにした。

彼らが言うには、ほとんどの城が空っぽで、

今現在は全く使われていないとの事だった。

たまに近所の住民が荷物を置かせて頂いたり、

雷雨の日に家畜をお守り下さったりする、

と皆が言っていたが、一体どうして、

そのように丁寧に、古くさい城に頭を下げるのだろう。

大切なご先祖さまか何かを、あがめているのだろうか。

まさかとは思うが、誰かが住んでいることはないだろう。

ひとまず聞きまわるのは、この辺りで切り上げようか。

今日はとある茅葺小屋の旦那の家に、

一晩だけ泊めてもらう約束をしていた。


 部屋で休むと疲れが心地よい。

わたしは次の日に備えて早めに休もうとした。

しかし、家の者は揃って出かけたいと言う。

わたしは不思議に思ったが、

安心できるような賢い猫がいるというので、

その猫と一緒に留守番をすることになった。

猫はよくわたしの周りをぐるぐると動き回り、

手近にあった灯り用のひもで遊んであげると食いついてきた。

じっと見ると、確かに頼りになる目をしている、

ような気もしないことはない……。

さて、そろそろ寝よう。

わたしは明かりを小さく消して眠りについた。


 しばらく経つと、不穏な空気によって目が覚めた。

じわじわと寒気がし、わたしの歴史学者としての勘が警鐘を鳴らし始める。

ひとまず身支度をする。そして、いつでも出かけられるようにしておく。

猫は、そういえばどこにも見当たらない。

今のうちに明かりを増やしておこう。

予備の行灯をつけると、わいわいと皆が帰って来る。

「どうしたのだね、そんな慌てて」

にぎやかな空気に、どっと気が抜ける。

わたしの気のせいだったのだろうか。

少し話してから、また就寝することにした。

しかし家の者たちは皆、

どこに出かけていたのかということには口を閉ざし、

結局わたしに、何が起こったのかを知るすべは無かった。


 ふとんの中で寝そべっていたが、

目が冴えて眠れない。

先ほどの事について、頭の中で整理していた。

気晴らしにはなるが、まだうっすらと気味が悪い。

何かが隠されているような、そんな気がした。


 「なんだ、奴はまだ寝ておらんのか」

家の老人がふてくされている。

「まったく今の若い者は……」

おじいちゃん、それ関係ないから。

「何とか早く寝てもらえないかのう」

「そうそう、そうでないと、私たちも寝られませんものね」

「俺らは行灯の火が付いている間しか、人間の形を保てないからな」

困ったね。本当に。

え、私のこと?

気になるのなら教えてあげる。

私はね、いわゆる妖怪なんだ。

人をびっくりさせないように、

本来の姿のときは隠れているんだ。

特にあの学者さんには、見つかりたくないんだよねえ。

だって、何でもかんでも嗅ぎ回りそうじゃない?

真実をあばかれようものなら、まったく目も当てられない。

さっきはあの人にたくさん遊んでもらったけど、

本当は行灯の油が欲しかったんだ……

やれやれ、早く帰ってくれないかなあ。

この地域は、化け猫の集落なんだということを、

知られたくないからね。

そんなことが噂になったら、

きっと三味線屋さんに目を付けられてしまうだろう。

私たちは、いい音色になるそうだよ。

その為にこの辺り一帯は、えらい人(猫?)を中心に、

はるか昔、ほとんど全滅してしまったんだ。

今は、その子孫が細々と暮らしてるけど……

怖いから、人間にだけは気を許してはいけないな。

さて、おじいちゃん、そろそろ大丈夫だよ。

老人たちは跡形も無く消え、あとには油のシミだけが残った。

そして、いくつもの塵がかすかに城のほうへと飛び去り、

永久に続く夜の彼方へと消えていった。

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