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57.「外見と中身の正反対だった女」


というこ・と・で!!





「どうしたんですか、入らないんですか?」





陛下と海燕殿と3人で、妃候補の危険人物(ルル王女)の居る部屋の前に立っています。いよいよ会えるんです、千景君が無意識に愛している少女に、会えるんです。何でだろう、変に緊張しているわ。





「ルーチェ殿?」





敷居の向こう(王女の部屋)から私を呼ぶ海燕殿。不思議そうに陛下が私を見ているのも分かる。でも、この足は前に進もうとしない。どうして。千景君の幸せな姿が見えるというのに。





…実はまだ、千景君のことが好きだとか?




―――否。





思い浮かんだ疑問を即座に切り捨てた。アホ臭い疑問だった。ありえない、と完全な否定は出来ないけど、私は千景君を好きじゃないし、千景君も私を好きじゃない。




そう、私たちは主と部下。それだけ。特別な感情はない。生まれ変わってまで、引き摺る意味もない。





私は誰?。





私は、エノクの民にして海の怪物ルーチェ・アルグレッセル。




恐るることなど、何もないじゃないか!!






「――これまた、濃い魔力だねぇ」





躊躇いも緊張も全てを忘れて、私は部屋に踏み込んだ。ふっと包み込む柔らかな、それでいて濃い魔力に笑みを刻む。部屋の片隅で大きく体を揺らせた少女を横目に、私は前を向く。俯いている時間などない。





「ルル、大丈夫だからこっちにおいで」





人が変わったように、甘くて温かな声を出す陛下。うわ鳥肌。気持ち悪いよ。今まで以上に優しい笑みを浮かべる陛下から目を逸らして、ナチュラルに私の隣に立つ海燕殿を見上げた。






「…気持ち悪いでしょう?」





「…真面目な顔で真面目な声音(トーン)で言うんだね、それ」





「いつ見ても慣れませんし、これだけは慣れないでしょうね」





「うん、だろうね」





海燕殿のちょっと絶望したような遠い目を見てたら、何だかんだ陛下の宰相してて乳兄弟だったら苦労してるんだろうなぁと思う。それぐらい、今の陛下は気持ちが悪い。





「ルルの近衛を務めるルーチェだ、コイツは俺と昔からの知り合いだから何も心配することないよ」






「ほんっと昔の知り合いだろーが。初めまして、ルル王女。私はルーチェ・アルグレッセル。見ての通りエノクの民。侍女業も出来るから、なんでも言って」






「あぁ、そうだったな。ほんっと昔の知り合いだ。つかルルに気軽いな、お前」





陛下の後ろに隠れて、チラチラとこちらを伺うルル王女。うん、なんだ、私はびっくりしている。気軽いんじゃなくてチャラさが、つい表に出てしまったんだけど…。







―――前世の自分の顏じゃん。




ビックリ通り越して怖いわ。恐れることあったわ。これは怖い。





クリッとした新緑の目にふわふわの茶色い髪。ふっくらとした血色の良い頬、小さな桜色の唇。目の色は違うけど均等にパーツが整ったその顔は、まさに雑賀真夜(前世の私)の顏である。





まぁ、分かってしまっただろうが私は顏と言葉遣いが似合わない、外見と内身と正反対の女だった。外見はお姫様だとかなんとか言われてたけど、内身はかなりの男勝りだったから。






……こりゃ、外見も中身も一致してるな。





「ルーチェ?」




「あ、いや。ルル王女、不躾だと分かっているけれど何歳なの?」





「17歳だが、何か問題でもあるのか」





「そこでお前が答えるんだ?度の過ぎた過保護か?」





変わりに答えるとか、どんな過保護っぷりだよ。17歳か。あの時と同じ年齢だけど、確か陛下って24歳だったよな。7歳差か。割と大きいぞ。





「ルルは声が出ないんだよ」




「…あぁ、そうだったの。本当に不躾だったわね、ごめんなさい」





なんだか見下げるのも可哀想な気がして、膝を着いた。これで目線は同じぐらいだ。きょとんとした新緑の目とかち合う。雑賀真夜の顏が此処(ルル王女)にあって、雑賀真夜の魂は私にある。不思議だな。





――――でも、本当にコレは怖いわ。自分の顏よ?前世と言えど、過去にしていた自分の顔があるのよ?同じ顔がホイホイあってたまるかってんだよ。





まぁ、陛下はちゃんと陛下の顏で千景君の魂だから問題なかったんだろうけど。再会した時、私に気付かなかったわけだわ。なるほどね。





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