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51.「(※ただし千景君に限る)」

抜身の剣を私は陛下に向けて腕を振り被った。そう、今から陛下目掛けて投げるのだ。不敬のなかの不敬だけど、致し方ない事ってあるよね!





「「ええぇぇええええ!!」」




「オイコラ、マジかよ!!」




「そんな至近距離で!?」






ブンッと投げた。まぁ、確かに至近距離だけどさソレが一番いいのよ。ほら、拳で語り合うってあるじゃない。






「意味がちげェ!!」





「――誰、今投げたの」






メル兄様の言葉に被さるように、陛下の低い低いドスの利いた声が響き渡った。ちょっと怒ってる感じがするねー。






「陛下!!」





私が全力で投げた剣は陛下の足元に突き刺さっている。それを引き抜いたかと思うと、首を傾げながら嗤っていた。






「そうこなくっちゃ。ちょっと、皆さん下がった方がいいですよ。陛下、怒ってますから」






「怒らしたのお前ェェェエエ!!」





「何平然と言ってんのぉぉおおお!?」





「ちょっと、この子頭大丈夫なの!?」






イゼベル姉上、それは失礼だよ。何処も打ってないから、これが通常運転だよ。陛下と対面して、私が剣を構える。音の消えた静寂な空間に、陛下の魔力がジワジワと追い詰めて来る。あーぁ、近衛さんズ顔を真っ青にしちゃって。第三皇子も、ってみんなが真っ青じゃん!






「1本勝負…は面倒だから、どちらかが膝をつくまでね」






「良いだろう、久々だ。全力で掛かって来い」







低いドスの利いた声のまま、陛下は仄暗い瞳で嗤う。スイッチ入りましたね、多分。こっちの貌も持ってるから彩帝国の上に立ててるんだろう。





本当は誰よりも、何よりも、弱いくせに。






病弱だった千景君が、唯一続けてきたことがある。それが剣道。私は千景君のマネージャーみたいな感じで、傍で見て来たんだけど、気付いたら千景君に教えを乞うていた。





で、色々なことを教えて貰いながら共に高めあった。剣道において天才児だった千景君。千景君の戦い方は、極めて異端。





結局、高校に上がる前に剣道を辞めた。本人曰く『俺の剣道は剣道じゃないし』とのこと。確かに、見ていればわかる。何処の流派にも存在しない、千景君の独自の構えがあった。






――そして、性格の代わりようだ。





普段、温厚すぎる程の温厚さを持つ千景君だけど、剣道の時だけは違った。人の皮を被った魔王とまで言われるほど、千景君はオラオラ系になったのだ。







だから、それは今も引き継がれている筈で…






「あぁん!?てめぇ、サボってたんじゃねぇのか!!」





「サボるわけないでしょーが!!」





「鍛錬してたら軽くなる筈ねぇだろうが!!」






辛辣な言葉と冷え冷えとした口調。殺伐とした雰囲気を身に纏い、情緒不安定な皇帝陛下は其処には居ない。所謂、戦闘中毒者である。バトルジャンキーとしての面も持ち合わせていて、最恐の軍事力を擁する国の頂点に立てるだけの頭脳も武力も持ち合わせているから、ある意味最適といえば最適。






「おっかないねぇー!!」






一太刀、一太刀が重たく骨に響く。それ等がジンジンと痛みと疼きを生む。避けて、向かって、振り下ろして、受けて、また避けて。






あぁ、嫌にキラキラした陛下の貌。





――かなりストレスを抱えていた模様。





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