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49.「弱冠9歳にして悟りを開いた私の心境」

「いやぁ、北の国の王子ことアイオリア様だっけ?王家の証とかいう水銀色の目で、亡き王女にそっくりだったらしくて凄い歓迎されて受け入れられてたし、ヴァッザーの件はこれで締めくくろうと思うんだけどどうだろう?」






「良いんじゃないか、あんま興味ねぇし」






「あ、水資源の確保ルートははっきりさせてきたから安心して頂戴」






「ちゃっかりしてるな」






「お礼よお礼。王家派の人たち、良い人ばっかりだったんだよねえ。騎士団の方からも、何かあったら手助けできる範囲の事はしてくれるって言ってくれたし」






「…お前、3日の間に何して来たの」






「共同戦線を張っただけなんだけど」







あー笑った笑ったと、少しだけ痙攣する腹部に耐えながら私は飛鷹王と夜鷹姫を抱き直す。すると陛下が手を伸ばして来て、夜鷹姫を私の腕から取って行った。






「夜鷹、安心したか?」






「したわ。だって、ちゃんと帰って来てくれたもの」






陛下の言葉に返す柔らかな少女の声音。現実に聞くことはないだろうと、諦めていたその声に心が温かくなる。






「夜鷹姫、私は戻って来るわ。もう2度と、消えたりしないから」






「…あぁ、その嘘偽りのない言葉を信じるから」






「可愛い夜鷹姫。千景の目となり足となって、大空を羽ばたきなさいな」






お前が挫けるにはまだ早いだろう?






「飛鷹王、私の目となって夜鷹姫と大空を渡りなさいな。エノクは滅びたが、エノクの宝は彩帝国と共に生きていく。エノクの怪物はそれぞれの居場所に戻り、今までの日常に戻るわ」






前を向きなさい。これより、俯くことを私が許さない。






「海の怪物、セイレーン。お前はどうする?」






「彩帝国の哀れな皇帝の影となり、鳥となろうかと」






私は海の怪物セイレーン。怪鳥の名を威のままに揮う言葉と音を操るエノクの民。







「ほぉ。大陸最強の彩帝国を治める俺に哀れ、お前はそう言うんだな?」






「貴方は弱いですからね」






「それ、不敬罪で首を刎ね飛ばされるぞ」






「この首を落とすことが出来るのは、貴方だけですよ」






虚弱体質だった貴方が、私に剣道を教えたんでしょう?私の師は千景君だよ。千景君の取り柄と言えば剣道だったぐらいだし。全国1位の千景君に敵う気はしないよ。






「良いだろう、その言葉に免除しよう。俺を裏切った時、それがお前の死ぬ時だ」





「是。しかし、貴方が死した時も私の死となりましょう」






私が死んだあの時、それが千景君が死ぬ時だったのだ。






「ルーチェ、これで良いのか?」





「飛鷹王、これが良いんだよ」





「ルーチェ、違う。千景が言いたいのは、」






「――ちょっと、飛鷹王。俺が折角、カッコよくシメようとしてるのにそりゃないよ。一度ぐらい言ってみたいじゃん!俺を裏切った時がお前の死に時だって!!」





「「………」」






この瞬間、この場に居る誰もが思っただろう。






あ、この男駄目だなと。





「無表情の癖に声だけ弾むってどういうことだよ」





「メルですら出来ない芸当ですね」





「え?無表情ですか?」






私の不思議そうな言葉に、メル兄様とレイ兄様はえ?という分かっていない顔をした。まぁ、うん、そうだろう。無表情だけど無表情なりの表情ってあるんだよ?






「陛下、凄くテンション上がってますよ。あの人、シケ雰囲気苦手で、たまに場違いなテンションできます」






それをスルーするとか上手く交わすスキルを、私は幼馴染9年目にして手に入れたことがある。その時に私は悟ったことがある。






この男の精神状態はよく観察しなければならない、と。




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