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35.「神意のままに跪け」

【飛鷹SIDE】






――飛鷹、大丈夫だからね。





そう幼さの残る顔で笑ったのはルーチェか。それとも真夜か。否、双方だったのだろう。ルーチェ・アルグレッセル。生後間もない時に両親の手から離され、怪物の統率者であるメルキゼデクとレイヴァールの手に渡った。






それから、20年という時が過ぎて行った。






エノクの始まりとされる初代国王の弟であり、何よりも戦と血を好む戦闘狂の初代系統という系統の統率者でもあったメルキゼデク。





エノクきっての頭脳派だった二代目国王の兄、比較的温和な性格の多い第二系統の統率者だったレイヴァール。





唯一エノク建国の時代を生き、その歴史と血を引き継ぐ使命を持った2人の転生した末に、出会った〝本来ならば居なかった存在〟のルーチェ。メルキゼデクとレイヴァールに跪く竜族の頂点は、そのイレギュラーの存在を我が子のように愛しみ育てた。







――それが、俺にとってどれだけ有り難く喜ばしかったことか。







〈飛鷹、どうかしたの?〉






〈何でもないが、どうもルーチェから流れて来る力が多くてな。どうしようも、〉





「「あ、」」






ない、と続けようとした瞬間、メルキゼデクとレイヴァールが、情けない呻き声を零した。





「ぬぬぬ」





自慢の羽とくちばしが消え、見えるのは人間の手足。






〈人型・・・!?飛鷹、貴方ってまさか・・・!!〉






「ルーチェと契約を交わして、力が増えた時だけこうなるのだ」






推定5歳ぐらい。何年経っても、この姿は変わらん。子供の姿のままの俺は飛鷹だ。肩につかないぐらいの長さで切揃った赤茶の髪と赤茶の瞳。ルーチェがこよなく愛する人型の俺。日本の着物に似た様な服は、神獣用の衣装だと、俺たちをこの世界に落とした神が笑っていた。







「飛鷹王、何時まで経ってもその姿は愛らしいなァ」






「お主に褒められても気持ちが悪いだけだ、見てみろこの粟立った腕を」






「鳥だけに鳥肌って上手いこと言いますね」





「誰がそこまで言ったのだ、誰が」






メルキゼデクとレイヴァールに冷たい視線を向けながら、俺のことを悲しそうに見て来る真紅の目。





〈…飛鷹、〉






「俺も一応は神獣の括りに入るからな。それに、ルーチェと契約を交わしたが、俺もルーチェも望んだことだ。姫には悪いが、俺は国になぞ囚われぬ。俺が囚われるのは夜鷹と千景とルーチェだけだ」






「――強烈な、というよりも熱烈な告白ですね」






「飛鷹様のお好きなようなさって下さい。私もルー姉様が大好きですもの。それに、エノクは滅んだ国。もう二度と栄えることはないでしょう」






「あぁ、他には要らん。姫も物わかりが良すぎて末が怖い。だが、俺は気に入っているからな。第三皇子、宰相、その首を刎ねられたくなくば剣を下げろ」






「なっ!?」






呆然と俺に剣を向ける第三皇子と宰相。コイツ等は、ルーチェにも剣を向けていたな。敵意と得体のしれない恐怖を抱えながらも。






「夜鷹、そんなに泣きそうな顔をするな。なに、ルーチェは3日後に戻る」





椅子の背もたれから飛んで、俺の腕に留まった夜鷹の背を撫でた。夜鷹が誰よりも何よりも千景と真夜のことを愛しているのだから。





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