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25.「登場の仕方を考えて欲しかった」

―――ソレは、最初想像の産物であったもの。



―――ソレは、古より古き時から闇に居たもの。



―――ソレは、この世を統べる力を持ったもの。



―――ソレは、その種の中で最も尊き生き物。





「ヘルシリアとラドンと来たみたいだねぇ」




「また凄まじい登場の仕方だこと」






風に揺らめくカーテンの奥には、二匹のドラゴンが下り立っていた。白のヘルシリアと黒のラドンが空へ咆哮を上げる。






「久しぶりですね、怪物の同胞たち」





「よォ、元気にしてたかァー?」





青藍の瞳の人間離れした美貌を持つ青年は、悠然と席を立つ私たちにほくそ笑む。守の怪物、ケルベロスの名を保持するレイヴァール様だ。






その隣に立つ紺藍の瞳の青年は戦闘狂染みた笑みを浮かべていて、それでいても人間という域を超え人の手が掛けられたような――まぁ、人間離れした絶世の美男という顔だ。なんとも憎たらしい。






彼の名はメルキゼデク。蛇の怪物ヨルムガンドの名を振りかざす怪物たちの統率者。暴君、狂暴、凶悪、極悪、冷徹、非道などといった様々な負のレッテルを身に纏って歩いているような男であることを言っておく。







「メル兄様、レイ兄様、遅刻です。ヘルシリアとラドンを放して、さっさと席に着いてください」






周りの男共―彩帝国側も含め―美形ばかりだなんて、面白くもない。






「おーおー、久しぶりの師匠に冷たいねェ?」





「まぁまぁ、僕たちが一番遅かったんですから。メルキゼデク、早く宝を起こしてくださいよ」






ケラケラと笑うメル兄様、そんなメル兄様に殺意を覚える私を知って知らずかレイヴァール様ことレイ兄様は笑って宥める。







エノクの宝であるアマルティア様は夢うつつの境目を彷徨っていることだろう。怪物が全員揃ったと言えど、目を覚ました様子が見えない。






「アマルティア、随分と細くなったなァ」





「ずっと寝てますから当然です。早く起こしてください」






「ルゥ、あとでじっくり話しような。仮にも師匠、お前等怪物の統率者に向かってその態度は頂けねェよ」





「ならば、統率者らしい態度をしたら良いではありませんか」






ベール越しにメル兄様を見つめる。メル兄様も、割と苛ついているらしい。暴君、狂暴ではあるが気は長い方だ。滅多にキレることはない。その辺は、統率者に向いているのではないかと私は思っているが。






「ちっ、一体誰に似たんだか。アシェルとシェザードにゃない部分だな」






「では、師匠である貴方に似たんでしょうね。私の性格云々は良いですから、早くアマルティア様を起こしてください。我等は、待っているのですよ?」






後で絶対に話をしような、とメル兄様から呟かれるがあえて聞き流す。話ではない、説教になるのが目に見えている。





メル兄様は、バルコニーの敷居を超えてアマルティア様に近付いて行く。カツカツと響く音は、着実にアマルティア様との距離を縮めるもの。







「――起きろ。目覚めの時間だ、アマルティア」






張りと艶のあるバリトンの宣告と同時に、ピクリと動いた瞼が上がり紫紺の瞳が虚ろではあるが宙を彷徨う。そして、ゆっくりと繰り返される瞬きのあと、ようやく紫紺の瞳は私たちを捉えた。



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