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アーティーとケイティー

翌朝、さっそくアーティーのお兄さんが襲われた場所へと、足を運ぶ。

場所は孤児院の裏庭、男の子たちだけで秘密基地を作っている最中に、死神は現れたらしい。


じゃりっ・・・

地面を踏みしめ、アーティーの泣き顔を思い浮かべる。

幼女を泣かすヤツは、このチート勇者ユイチ様が許さねえ・・・!


意識を集中させ、1年前の事件が起きる、少し手前まで時間を巻き戻す。


「時空の扉よ!!今この時、過去へのゲートを開け放て!!」



「 タ イ ム リ ー プ ッ ! ! ! ! 」


・・・

・・・・・・

なぜ飛ばない。

『ぷっ・・・くはっ・・・ふははは!』

そして、なぜ大爆笑なのですか、神よ。

『すまんすまん、いやあ、いい声だったよ』

涙声になりながら、神様が続ける。

『ちょっと待ってな‥・よし、使用許可を出したからもう飛べるぞ』

オイイイイイ!!!神イイイイイ!お前のせいかよおおおおお!!!!

『毎回、どうやって飛ぼうと思考錯誤するのか、試すのが楽しみなのだよ、許せ』

‥・

『ほら、もう飛べるぞ。あ、ちなみに掛け声はいらないからな。何だっけ、時空の扉よ今この・・・』

ぶつっ


俺が過去に飛んだので、神様の通信は、そこで途絶えた。




「・・・今度こそ、成功か?」

地面が一瞬ぐらっと揺れたかと思うと、次の瞬間にはそこに、立っていた。

だが、所詮1年前の話だ。あまり、景色の違いは認められない。

どうしたもんかと唸っていると、後ろの方から、ボーイソプラノが聞こえてきた。


「おじさんそこで、何してるの?」

「・・・アーティー?」

「おじさん、ぼくの妹を知ってるの?ぼくはアーティーじゃなくて、ケイティーの方だよ」


うお、お、おっしゃああああああ!!!!!!!!!!!

は、初めてのタイムリープ、これはちょっとどころかかなり嬉しい。

浮き立つ心を抑えながら、ケイティーに孤児院へ案内してもらう。

教室の時計を覗くと、14時30分。ケイティーが襲われるのは、15時頃だ。

50代ぐらいの、物腰の柔らかなシスターが、こちらへ歩いてくる。

「ねえ、シスター、アーティーを知らない?」

「アーティーなら、教会へお使いに行きましたよ」

そうなんだ~とがっかりする彼の横顔を、じっと見つめる。

こんな、あどけない少年が、無闇に命を奪われていいわけがない。


「アーティーに御用でしたか?」

温かみのある声でシスターに訪ねられ、はっと顔をあげる。

「はい、彼女に先日、ハンカチを拾ってもらいまして、お礼がしたいと伺ったんです」

スラスラと用意していた言葉を述べながら、時間になるのを待つ。

「シスター、ケーティーはどんな子ですか?」

「少しやんちゃですが、年下の子におやつを分けてあげる、やさしい子ですよ」

世間話とは裏腹に、緊張で心臓が早鐘を打つ。

あと20分・・・15分・・・10分・・・‥・5分!

シスターに断りを入れ、ケイティーがいる裏庭へと足を運ぶ。


兄のために重たい剣を背負って、届かない掲示板を必死でジャンプしたアーティー

あの子を悲しませたことを、地獄の底で後悔させてやる!


「ひっ・・・ぎゃああああ!」

突如、少年たちの叫び声が木霊する。

何も無いはずの空間から、黒い塊が出現し、それは、次第に人型へと変化していく。

2Mぐらいの影が、ケイティーへと手を伸ばす。


「 さ せ る か あ あ あ あ ! ! ! 」


ザシュッと、用意していた剣で切り裂くと、影は小さく悲鳴をあげ、呆気な4く消えていった。

チート能力すげええええ!!さすがレベル999!!!!

心の中でガッツポーズすると、ケイティーがシスターに保護されたのを確認し、俺は足早に立ち去った。

人気の無い木陰に隠れ、スキル「空間操作」を発動させる。


地面がぐらっと揺れたかと思うと、俺はまた、元の時間軸に戻っていた。



そわそわと冒険者ギルドに戻ると、そこに、アーティーはいなかった。

毎日来るだろうから、報告できると思ったんだけどな~。

がっかりしながら、カウンターに座ると、メルたんが近付いてくる。

「魔王様から依頼された仕事、うまく行ってる?」

私が手伝ってあげてもいいけど、と心配してくれるメルたんのツンデレハアハア

そんな風に身悶ていると、ガッシャーンという机の倒れる音が、鳴り響いた。


「あアん?!報酬が払えねえって、どういうことだよ!!」

「で、ですから、皿洗いで、お皿を10枚も割ってしまったら、報酬どころか赤字で・・・」

「んだとゴラア!!子供だからって、舐めてんのか!!」

受付のお姉さんに怒鳴りつける少年に、メルたんと部下たちが近付いていく。

「何か問題でもありましたか?」

メルたんの冷徹スマイルと、屈強な男たちに囲まれ、少年が舌打つ。

「ちっ、だから、大人なんて信用できねえんだ・・・」

そう言って立ち去る少年の横顔が・・・


「ケイティー・・・!」

俺の声は届かなかったらしく、ケイティーはそのまま、外へと出て行った。

呆然としている俺に、メルたんが近付いてくる。

「あの少年、知り合いですか?」

「いや・・・見間違いだ」

ケイティーが死ななかったということは、アーティーは、冒険者ギルドに兄を救ってくれる人を探しにくる必要は無い。

俺が過去を変えたことで、未来が変わったのだと、合点がいった。

じんわりと、胸が、熱くなる。



よかったアーティー、俺は、救えたんだな



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