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幼女天国

ぎし、ぎし、と鳴る木の階段を降りていくと、そこは確かに冒険者ギルドだった。

受付で冒険者登録の説明を一生懸命聞く猫耳少女、

掲示板のクエストをジャンプして見ようとする、ちみっこ幼女戦士、

パーティーに何とか入れてもらおうと駆け回る、悪魔幼女

いや屈強な男たちもいるがそれはこの俺様の心眼には見えていないぜえええ!!!


てってれ~、スキル「現実逃避」を手に入れた!


うるせえええええよおおおおおお!!!!!!

冒険者ギルド内は、確かに男:女比率が、7:3ぐらいだ。

その中でも幼女は1割にも満たないが、俺の心眼にそんなことは関係ないッ!

あえて言おう!ここは幼女天国だと!!


と、一通り心の中で叫んでから、ふと強烈な違和感に襲われる。


多種多様な種族が和気藹々と仲良くしている、この光景は、

・・・ひどくおかしい。

ケモノ耳の亜人たちは差別されたり、エルフとドワーフたちは馴れ合いを嫌ったり、

そもそも魔族は魔王の手下で敵ではないのか?

仮に、差別も何もない平和な世界なのだとしたら・・・

彼らは一体、何と戦ってあああメルたんかわいいぺろぺろおおお!!!


人ごみを掻き分けて、赤いローブの美少女が駆け寄ってくる。

「突然気を失ったので心配しましたよ、大丈夫ですか?」

優しい瞳を向けるメルたんなうが止まらないという意味では全然大丈夫じゃないです。

「俺は市ヶ谷龍一です。助けてくれてありがとうございました」

「いえいえ。魔物がたくさん出る山中に倒れていたので、無事でよかったですよ」

ちょ、神様、そんな危ないところに俺を放置するなんて!!

そんな美味しいご褒美、意識がある時にやってください!!


気を失っていた悔しさに震えている俺に、メルたんが、赤いローブから小さな手を差し出す。

「きっと、すごく怖い思いをしたんですね。ここは安全ですから、もう大丈夫ですよ」

優しく俺の手を握り、そっと撫でながら上目遣いでメルたんなうううううう!!!!!!

「お腹すいてますよね?うちのギルドの食堂、結構美味しいんですよ」

「あ、俺お金持ってなくて・・・」

「ふふ、出世払いでいいですから。さあこちらへ」

魔法少女メルたんは、天使で良妻でロリで幼女でパーフェクトだと今、確信した。



一通り食事を終えた後、疑問に思っていたことをメルたんに聞く。

「あの、スキルとかレベルとかって、どうやって知るんですか?」

「えっ?ギルドカードは持っていないんですか?」

今までどうやって冒険していたんですか、とメルたんが驚く。

「いや、実はこの年で冒険者デビューでして‥・色々と教えてもらえると助かります」

素直に打ち明けると、メルたんは優しい瞳を俺に向けた。

「いいですよ、では冒険者登録から始めましょうか」


ぴょこぴょこと歩くメルたんの後ろ姿ハアハアしていると、あっという間に受付についた。

「この人初心者さんなんです、丁寧に説明してあげてください」

そう言うと、メルたんは小さく手を降りながら、立ち去ってしまった。

さようなら、俺の心のアイドル、魔法少女メルたん‥・


名残惜しげに見つめる俺を無視し、受付のお姉さんが淡々と始める。

「まずは、名前と年齢をお願いします」

「えっと、市ヶ谷龍一、27歳です」

お姉さんが、イチガ・ヤリ・ユイチ、27とメモを取る。

「あの、違いま・・・」

「次はこの石の上に手を乗せてください」

無視かよおおお!俺を無視していいのはかわいい幼女だけなんだよおおおお!!!

とメンチを切る度胸は無いので、微妙な愛想笑いをしながら手を乗せる。


石が赤く光だし、カコンと、1枚のカードが出現した。

「これがギルドカードです。ご確認ください」

味気ない灰色のカードだ。裏返すと、レベルとスキルが書かれていた。


名前:イチガ・ヤリ・ユイチ

年齢:27

職業:魔導士

レベル:1

スキル:「時空操作」「忍耐」「現実逃避」


・・・あっるえ~?チートで最初からレベル999俺つええええとかないんですかね?

わなわなと、震えながらカードを見つめる俺をガン無視し、受付のお姉さんが説明を続ける。

「ギルドでクエストを受けると、報酬が出ます」

掲示板で受けたいクエストを見つけて、受付でエントリーするらしい。

「説明は以上です。質問はありますか?」

ありません、と言おうとして、また、強烈な違和感に襲われる。


オンラインゲームでは、ギルドランクごとに受けられるクエストが制限されていたような‥・


それでさくさくとクエストこなして、もうこんなにギルドランクあがっちゃった俺すげえてへぺろとか

「美味しいイベントはないんですかね!!」

思わず声に出すと、お姉さんが手元の用紙をパラパラとめくる。

「あー・・・それなら、軽食屋の皿洗いのクエストが、賄い食とか出ますけど」

そういう意味じゃねえええええ!!!!!!!!!!!!

とツッコミかけて、はっとする。今、クエストが皿洗いとか、言わなかったか??


ダッシュで掲示板の方へ向かう。人混みを掻き分けて、だんっと掲示板に張り付くと‥・


「クエスト:土木作業 条件:レベル不問・未経験大歓迎」

「クエスト:果実販売 条件:接客経験必須」

「クエスト:治療補助 条件:簡単なヒールができる方」


ない‥・ないっ・・・!どこにも魔物討伐の文字が無い!!!!

へなへなと座り込むと、後ろの方から慌ててメルたんが駆け寄ってきた。

「大丈夫ですか?やっぱりまだ体調が‥・」

「あ、あの、魔物退治のクエストとか無いんですか?」

「えっ?!魔物を狩るには、保護協会の許可が必要ですよ」


ナニソレ魔物が保護とか、どこぞの日本の山ですか??

クエストがまるで職業斡旋とか、ここはどこぞのハローワークですか??


ぐるぐると混乱しながら、俺はまた気を失った。


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