ここが異世界‥・!
はっと、目を覚ますと、目の前に味気ない木の天井が広がっていた。
どうやら俺は、粗末なベットに寝かされているらしい。
「気がつきましたか?」
つぶらな瞳で、俺を覗き込む美少女・・・
鮮やかな赤色のローブを身に纏い、手元には水の入ったコップが握られている。
「何かして欲しいことはありますか?」
透き通った美声で尋ねられ、俺の幼女センサーがびくんと跳ね上がる。
無防備にベットの上に横たわる俺に・・・
「その手元の水をぶっ掛けて罵ってくれたら、とてつもないご褒美です・・・」
その後、響き渡った叫び声と、駆けつけた屈強な男たちに、
これは俺の願望を叶えた限りなくリアルな夢ではないと、把握した。
「すみませんでした!!」
床に手をつき土下座する俺に、赤いローブを被った美少女がため息をつく。
「いえ、こちらこそ叫んだ上に、思わず叩いてしまってすみません・・・」
「大丈夫です!!」
幼女に嫌がられた上に、平手打ちされるとか、むしろご褒美です!!と心の中で叫ぶ。
声に出さないのは、駆けつけた屈強な男たちが、後ろで睨んでいるからだ。
「私は、ここのギルドマスターのメルです」
へえ~、メルたんかあ、かわいい幼女は名前もメルヘンチッ‥・
「へ?!ぎるどますたー?!」
思わず叫ぶと、メルたんは口をぷうっと膨らませて、被っているローブを脱ぐ。
くせっ毛が可愛いショートの茶髪から、とんがりとした耳が覗く。
「私は魔導士系エルフなので、こう見えても140歳です」
ご・・・
合法ロリ幼女キタアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「っていやいやいや!」
違うだろ俺!!今はその興奮は置いといて、なんだ、ぎ、ギルドマスター?魔導士??エルフ???
ふらふらと部屋の窓に歩み寄る俺に、メルたんが続ける。
「ここは冒険者ギルドの2階で、職員宿舎です」
とても丁寧な説明だが、そのときの俺の頭には、理解不能だった。
なぜなら、目の前の窓の外には・・・
ドラゴンが空を飛び、猫耳娘が屋台を開き、ドワーフや魔族たちが賑わう、
まるでファンタジーの様な世界が広がっていたからだ。
・・・
おーい・・・
お・き・ろ!!!!!
「がふっ」
俺の無防備な頭を、神様が容赦無く蹴り上げる。
悶えながら辺りを見回すと、見覚えのある真っ白な空間にいた。
「お前が気を失ったから、魂だけ呼び戻したんだ」
いや、さらっと言いますね。ていうかさっきの場所は何ですか??
「あれは異世界だ」
い・・・いせか・・・
いせか・・・
異世界で幼女とケモノ耳とエルフたんでうはうはハーレムな展開キタアアアアア!!!!
と同時に、興奮する俺を冷やかに見下す合法ロリの目線ゲットオオオオオ!!!!
「・・・何故、チート能力の適正がある魂が、お前みたいな変態なのか・・・」
ええ?!変態と罵るご褒美まで貰っていいんですかハアハア
「チート能力の方に食いつけよ!」
もう頭痛い・・・とため息をつく神様タンもかわゆいですなあハアハア
「いいか?お前には時を操る能力を授けるから、それを使って世界を救うんだ」
と・・・時を操る・・・だと・・・?!
ということは、時を止めて入浴シーンとか生着替えとかロリとか幼女とか
「今、時を止めることはできないように調整した」
神様あああああああああ!!!!!!!!!!!!!!
「では、健闘を祈る」
再び目が覚めると、そこはまた、味気ない木の部屋の質素なベットの上だった。
さっきまでの神様との会話を思い起こし、体が震える。
「時を止められないなら、一体何のためのチート能力なんだ・・・!」
いや、世界を救うためだよ!!という神様のツッコミが聞こえた気がしたが、気のせいだ。
さっそく異世界での生きる目的を見失った俺は、これからどうやって生きていけばいい・・・?
いやこういうときこそポジティブに考えるんだ。
入浴シーンも生着替えも見られないというおあずけをくらってると思えば‥・
「興奮してきた‥・!」
神様のドSっぷりに身悶ていると、どこからともなくテッテレーという機械音が聞こえてきた。
スキル「忍耐」を手に入れた!
頭の中で響いた声に、思わずがばっと身を起こす。
スキルだと・・・?!ということはレベルとかステータスとかあるのか?!
きょろきょろと辺りを見回すが、アイコンらしき物は無い。
自宅警備員の副業で、屈強なモンスターに立ち向かう命がけの戦士を(オンラインゲームで)
やっていた俺としては、心が踊るのを抑えるのは難しい。
よし!心のアイドル、魔法少女メルたんに聞きにいこう!
俺は意気揚々と、1階の冒険者ギルドへと向かうのだった。
待っててねメルたん!今チート勇者の俺が会いにいくよ!!