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求・ヤンではなくクーな人達  作者: 綾織 茅


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 夏休みとはかくも面倒な期間であったとは…。今までの認識をまるっと覆してくれたよ。


 洸蘭の広い敷地には温室がいくつも存在する。ある一つを除いては正しく温室の機能を果たしていた………ということを今日知った。


 千鶴が実家に帰り、手持ち無沙汰になった私。もちろん帰る予定はない。


 というのも朝霞恵斗を筆頭として攻略キャラが全員仕事で学園を離れなければいけないというパラダイス期間中なのだよ!これはもう…私に帰るな!今のうちにやるべきことやっとけよ!という神様の啓示だろう?

 やるさ、もちろん!あぁ、神様はやっぱりいたんだね?存在を疑ったりなんかしてごめんなさい。


 ………なんて思っていたのは数十分前のこと。今?神様?いないよ、そんなもの。フッ。


「……あの、これを一体どうなさるの?」


 温室の一つで誰も来ないような位置にある場所にカメラを隠しにきた。誰も来ないような=密会やら人に言えないようなことをする場所になりやすいからね。

 そこで出会ったのが目の前にいる彼だ。


「どうって…見たままですよ」

「見た、まま…」

「えぇ」


 見たままって……君、昔話の魔女さんになってるよ?あ、魔法使いの方か。男の子だしね。


 ………ってそんなのどっちでもよくって!

 そのすり鉢でゴリゴリやってるのは何かな?何なのかな?私にはそれが注!混ぜると危険!と書かれてある薬品と同じようなものに見えるんだけど気のせいだよね?なんか持ってる本の背表紙に必殺、証拠の残らない~なんて自主規制かけなきゃいけないようなタイトルに見えるのは見間違いなんだよね?ね!?

 ……お願いだから誰かそうだと言ってぇ~!


「と、取りあえず…犯罪だけは犯しちゃだめよ?」

「大丈夫です」

「そ、そう。それはよかっ

「証拠残しませんから」


 ノ~~~!!!全然大丈夫じゃないーっ!!

 むしろどこに目をつけて大丈夫と言い切ったのかが分からない~っ!


 や、やばい。この学園。ヤンデレだけでなく変人も集まってきている。

 なんとかせねば。………なんとかって、どうやって?

 三人寄れば文殊の知恵をしようにも一人足りないっ!っていうかこの世界が本当はゲームの世界だなんて頭のおかしい話、師匠以外誰も信じてなんかくれない!


 ……そう考えるとよく信じたなあの人。

 ……ま、面白けりゃ何でもいいっていう人だしね。


「先輩はどうしてここに?」

「あ、あぁ。ちょっと花を見に。ここの温室は来たことがなかったので」

「そうですか」


 …………会話終了。元来口下手な方らしい。


 中等部の制服を着た一見すると真面目そうな彼は中身はとんでもないマッドサイエンティストだったらしい。

 私も一回だけ本でお目にかかったことがある高山に生えるという毒草をごりごりといつまでも飽きずにやっている。この子なら誰かしらを実験体に本当にしかねん。


「あの、ちょっと休憩してお茶にしません?」


 温室の中には常時生徒が憩えるようにティーセットが用意してある。生菓子などはさすがにおけないが、クッキーやらキャンディーなど冷蔵保存しなくても大丈夫なものならお茶菓子もいくらかは用意してあるのだ。さすが洸蘭。こういうところに金の糸目はつけないらしい。


 さて、なんとかしてやめさせないと。洸蘭から犯罪者が出てしまう。

 さすがにそれはまずい。なぜか?ここで愛校心とか言えればカッコいいんだろうけど、生憎そんなものはない。むしろ入らずにすむなら入らなかった。

 洸蘭で何か起これば警察が入ってくる。そうなれば私が至る所に設置している隠しカメラの回収に奔走しなければいけなくなる。後処理も面倒だ。


 だから頼むから思いとどまってちょうだいよ。


「……分かりました。一杯だけ」


 良かった、誘いにのってくれた。


 凶器というか危険物を取り上げれば彼は至って紳士的だった。

 分かってる。地雷は踏まない。踏んではならない。

 ここで少しでもアレのことを深く尋ねてみろ。すぐさま後悔す

る確率百パーセントだ。むしろコンマいくつの世界になっても後悔しない確率は残されていない。

 本当の本当にゼロ、零、0なんだ。


「そういえばお名前聞いてませんでしたわね」

「あぁ、御門です」


 御門、ね。後で要注意人物として調べとこ。


「私は…」

「知ってますよ。神宮寺先輩、でしょう?」

「あら。えぇそうよ」


 まぁ生徒会入る時とかで目立っちゃったしね。

 そういえば幼等部にも初等部にも顔が知られてたんだっけ。あちゃー大人しく目立たず卒業しようと思ってたのになぁ。


「神宮寺家には昔から出入りしてますから」

「え!?そうなの!?」

「えぇ。御門家は代々公家に仕えた陰陽師の一族ですから」


 …………なんだろう。この子のルーツが見えたような気がする。今時呪いじゃあれだから毒殺(これ)に走ってそう。

 うわ!なんかヤンデレよりやばいような気がしてきた!


「神宮寺先輩?」


 帰ったらすぐに家に電話して御門家に息子の趣味…趣味って言っていいのかな?……とにかくやめるよう説得してもらわなきゃ。


「……神宮寺先輩にはいないんですか?消したい相手。お得意様ですから特別にタダで差し上げますよ?」

「い、いらない!いらないから立ち上がらなくていいから!」


 どこへ行こうというんだよ!行かせないよ!?引き出しのついた桐箱のところには行かせないよ!?絶対!!

 無理矢理座っていた椅子に引き戻し、お茶のおかわりを勧めた。

 いやぁこのクッキーおいしいはずなのにどうしてだろう。味がしないや(泣)


「そういえば先輩、生徒会の他の先輩と仲違いしていらっしゃるそうですね」

「……千鶴以外とよ」

「気をつけて下さい。先輩に死相が表れてます」


 ………ちょっと待てぇーい!それシラフで聞いちゃいけないセリフ!

待って!誰かー!耳かき!耳かき持ってきて!幻聴が聞こえる!


 スゥ~…………よし。


「い、今なんと?」

「気をつけて下さい?」

「その後!」

「先輩に?」


 何故そこで区切る!まさかの単語切りですか!?


「その後!」

「死相が表れてます」

「なぜ!?」


 W・H・Yを繋げてー……WHY!!?

死相ってアレよね、もうすぐ死んじゃう人に出るというアレでしょ?

私ピンピンよ?人生十五年しか生きてないのよ?

まさか前の世界の分も一緒にカウントですか?それでも三十くらいなんですけど!

 …………やーめーてー!!!


「ちょっと来て!」

「うわっ!」


 死相なんてもん言われたらやること一つしかないでしょ!?

 この子も取り込む!でもって死相回避よ!

 ポケットマネーで今から私専属のアドバイザーなのよー!!

 師匠ぉー!また一人ゲットしましたー!


 ……………あぁ、死相。今まで祈ってきた神様ってもしかして死神だったのかもしれないと思い始めた今日この頃。


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