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「奈緒ちゃん?どういうこと?」


 なぜだ。


 生徒会室に入った途端、私は拉致られた。

といっても生徒会室の中の和室ブースだけどね。


 しかもマジだ。今、目の前にいる西條呉羽は笑っている。ただし目の奥は…というなんともテンプレ化したマジだ。

 けれど本当にそれを目の前でやられると怖い。いやもう本当に。落ち着いてくれよ、視線で殺す気か。


 …………笑えん。こいつらに殺されるキャラだった神宮寺奈緒、つまり私だから全く笑えん。むしろ殺りかねん。


 とりあえず身の安全のために言い訳しておこう。突然後ろからグサリと来られたくない。


「西條様、どういうこととおっしゃられても分かりかねますわ。例の婚約話のことならば私も関知しておりませんの」

「へぇー。知らないんだ」


 納得…はしてないな。その証拠に瞳が冷たい。

いや、別に冷たくても全く構わないんだけどね?全く!構わないんだけどね!?

 だから黒いオーラだけは納めて下さい。


 それに本当に私だって知らなかったんだって。そんな話、昔したっけ?全っ然覚えがない。都合が悪いことは忘れるの特技にしちゃやっぱりまずかったな。


「奈緒ちゃんはさ、僕と彼、どっちが好き?」


 え、どっちも好きじゃない。


 そう即答してしまえればどんなにスッキリするか。そもそも好きかどうかなんて考えたこともないし。恐怖の対象ではあるけども。それを考えると間違いなく君が一番だよ、西條呉羽君。君にはマジに殺される設定だからね、千鶴も私も。

 私はKYじゃない。しかし!自分の命が惜しくないわけでもない。ここ大事。とっても大事。空気読めないなんて現代社会生きてくのに最悪だからね?空気読めませーんなんて言ってられるのは漫画のモブキャラぐらいだから。

 …………あ、私、モブキャラだ。

 …………………ダメだ!モブキャラにもモブキャラなりの意地がある!空気が読めないなんてレッテル貼られた日にゃ私……あ、想像しただけで泣ける。


 え?話し?あ、忘れるところだった。


「どちらと言われましても…よく分かりませんわ?女の子なら千鶴が一番なんですけれど」

「…奈緒ちゃん…私も好き!」

「………ふーん」


 自分を睨みつけてくる千鶴がベェーっと舌を出してきたものだから西條呉羽の眉がピクッと動いた。私と千鶴が組んでいる腕を見て瞳の冷たさはさらに増した。


 千鶴!やめなさい!もう、あんたって子はっ!

自分からフラグ立て回ってどうするの!!ここは取り扱い注意点多数の猛獣が棲むところだからフラグを立ててはいけません!


「呉羽。そこら辺にして勉強しますよ。神宮寺さんも何も知らなかったとおっしゃってるんですから」


 そーだそーだ。私だってびっくりしたわ!

 

 とりあえずまだ西條呉羽に喧嘩という名のフラグを乱立させようとしている千鶴の手を握ったまま立ち上がった。

 正座って慣れてないとしびれるんだよ。千鶴?足、プルプルしてるよ?大丈夫?


「………奈緒ちゃん。今度の試験でさ、僕が奈緒ちゃんより順位上だったらデートしよ?洸蘭の中でいいから」

「………奈緒ちゃんよりも頭悪…むぐっ!」

「呉羽?何を言ってるんですか?」

「……ずるい」

「………」


 シャルルの言い出した賭けも無理だったけど、こいつの言い出した賭けも無理!

 そんな賭けにのろうものならトップ5に入らなきゃいけない。となると必然的に今までの努力が水の泡。パァだパァ。そんなこと、しない、させない。


「西條様は試験を受けないだけで成績は良ろしいはず。それは私には不利ですわ」

「えっ!」


 千鶴…そうなのよ。人を見た目で判断しちゃダメ。

 いくら見た目がバ…頭の中身が可哀想に見えても真実を隠すくらい、この男ならやってるわ。見た目がいいとみんなコロッと騙されるんだから。しかも人畜無害そうな、ね。


「えー…じゃあ生徒会みんなででいいや。みんなで出かけよう」


 …はい、出た!こいつの腹黒さ!

 譲歩したようだけど全然してないから!ただ単に仲間を増やしただけでしょ!


 千鶴!何考えてるの!?そこの男三人組も!それなら、とか言うな!

 滝川由岐!あなた保護者代わりでしょ!止めなさいよー!

……お願いだから止めてください。


「ねっ、奈緒ちゃん。それならいいでしょ?」


 私が千鶴の頼みは断れないのを知ってるな?千鶴を完璧に味方につけおって。

 腹黒さは外面の良さだけで十分!これ以上増量するんじゃない!


「奈緒ちゃん、私ね、奈緒ちゃんとペアのもの買いたいんだぁ」

「……………行こうか」

「ホント!?やったぁー!」


 泣ける。心の中でだけど泣けるよ。

 そして千鶴、痛い。飛び付くのはいいけど痛い。


「試験の結果に関わらずですの?それとも先程の条件で?」

「さっきの条件でだ。ただし、瑠偉も入れて」

「分かった」

「いーよー」


 朝霞恵斗の言葉に神園瑠偉も全く不満なく頷いた。

 

 試験の度に姿を消す西條呉羽と神園瑠偉が今回やっと試験を受けることを教師陣が聞いた瞬間、職員室内で歓声がわいたのはまた別のお話である。


 この二人、普通に受ければtop5入りは確実なほど頭はいい。


 な・の・に!


 受けないし、そもそもどこにいるのかも分からなくなるので教師泣かせな二人なのだ。


 おそらく今回大幅な順位変動が予想される。

 私?結局行くことになるんだからそこそこの順位上げに留めるよ。変なやっかみとか持たれたら嫌だし。ありもしないう疑いとかね?私が持ってる後ろめたい事と言えばプライバシーの侵害スレスレな事してるって事だけよ。それ以外で砂かけられるようなのは真っ平ごめんだから。


「楽しみだね!」

「……そうだね」


 千鶴、それ、別に私と二人でも行けるということを忘れてないかい?

 ……天然か。天然だからか。


 うんうん可愛い可愛い。でも頼むからこいつら関連な時にそれを出して欲しくないんだぁ。


 勉強しようとテーブルに向かった時、西條呉羽が他三人に感謝してよ?と囁いたのが聞こえてきて怖い。


 とりあえず…お父様に抗議の電話決定。元々の諸悪の根元を断罪すべし!

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