0話 ぷろろーぐ
人生とは唐突に何かが起こるものである。
それは日常的に起こるものであったり、日常的にはあり得ない事だったり。
基本的には前者の方がはるかに多い。
他愛ない事柄だとすれば、買い物に行ったら財布を忘れていたり、特売の卵を買ったと思ったら冷蔵庫に卵のパックが1個まるまる鎮座していたりと、とても平凡な突発的事項は腐るほどあるだろう。まあ、時折交通事故やら破産宣告などという悲劇的突発事項も無い事は無い。
それでもそれらはすべからず日常的な突発事項だろう。
そして後者は、はっきり言えばほとんどないと言える。
日常的にはあり得ない突発的事項とは?
たとえば心霊現象に襲われ、良く分からない物の怪や怪物に襲われたり、悪の組織などが徒党を組んで襲って来たり、ライトノベルなどの異世界召喚などがそういった類と言えるだろう。
特に最後などは物語の中にはありふれていたとしても現実にはそんな事はあり得ない。
有り得たとしたら、異世界から帰ってこれた人間が一人くらいは自叙伝を出していたりネットに掲載していたとしてもおかしくはないだろう。
だと言うのに世に蔓延るのは作り物の物語。
虚構の物語ばかりだ。
故に後者はあり得ないものとして認識されている。
己の脳内に置いてはだ。
そして、別段そんな展開も望んではいない。
己はただ、一日一日を堅実に凄して行ければそれで良いのだ。
その時は、そんな風に考えた事も無く、ただ毎日を楽しく時に忙しく過ごしていた。
大学2年生の終わり。
季節は3月、桜の開花予想を大幅に前倒しして、桜の花が満開になったその日にちょっとしたイベントが起きるその前まで、日常の片隅で己は平々凡々と暮らしていたのだ。