第2章 で? あんた何ができるの?
そんなこんなで、
高田さん(彼らに名前は存在しないとのことで仮名)との生活が始まった。
しかし、たとえ宇宙人とはいえ、おっさん同士の生活だ。
いろんな意味で盛り上がるはずがない。
不安と絶望を感じつつ、実験開始から4日目を迎えた‥‥‥。
「で、高田さん。あんた何ができるの?」
「何がとは、なんでしょうか」
あいかわらず、感情の乗っていない冷淡なしゃべり方だな。
はっきり言って、おっさん宇宙人との生活は、普通につまらない。
話しかけなければ会話はほとんどないし、単に食費が倍に増えて生活が厳しくなっただけだ。
しかも、宇宙人なんだから、そりゃ特別な能力を期待するよね、こっちとしては。
でも今のところ、死体いじりしかないわけで。
既に俺は飽きていたのだ。
「すみません、お金は持っていませんので‥‥」
「飽きてしまいましたか。そのような感情も、我々にとってみれば貴重なのです」
なるほど、俺に興味心身ってわけね。
そりゃ良かった楽しそうで。
しかし、この人見てるとたまに思うんだよね。
本当はこの人死んでるって。
おーこわっ。 ブルブル。
「そういえば、先日映画を観ましたね。過去や未来に行く」
人の感情読めるくせに、淡々と会話進めないで下さい。
「え~と、マイケル・〇・フォックスのやつね」
確かに観ましたよ。
暇つぶしに金曜ロードショウ。
おっさん二人で。
‥‥‥‥それが何か。
まさか、タイムマシーンがあります的な感じですか?
「未来に行くことなんて出来はしません。地球の科学でも証明されていますが、光の速度に身を置くことで、まわりの時間経過を遅くし、擬似的に未来へ来たようにすることは出来ますが」
ふむふむ。
映画のダメだしを始めたってわけですか、高田さん。
「ですが、過去に行くことは簡単です」
そうそう過去に行くことなんてねぇ。
「そう、簡単です」
「って、えええ!するってぇと、おまえさん。過去行きのタイムマシーンはあるって言うのかい!?」
驚きでキャラが変わってしまっただろ。
「全ての出来事は、データに置き換えることが可能です。データならば、以前のデータを復元することは簡単です」
「またまた~、どうせアミューズメントパークみたいに、昔を疑似体験出来ます、的なもんでしょ?」
そんなに俺は単純じゃないぞ。
30過ぎのおっさん舐めんな。
「本当ですよ」
「悠真さんの身体を一時的にデータ変換し、そのデータを同時に過去へと転送し復元させます。多少時間がかかりますが、可能です」
マジか!
そうだよね!
宇宙人だもんね!!
未知との遭遇だよ、そのくらいの特典あってもいいよね。
しかも最初の実験なんだからさ。
初回特典ってやつ?
「私に出来ることは、そのくらいです。行きたい時間軸があれば、過去にでも行ってみますか?」
メガネを、指で少し上げながら話しているところを見ると、自信があるのだろう。
珍しく、鼻高々な様子。
「ああ、もちろん行くぞ。そんな貴重な体験逃すかって」
俺はガッツポーズでお応えした。
行くに決まってるよね!
過去にいけるんだぜ!
ターミネーターみたいだな! マジで。
裸で登場か?
場所考えないとな!
うっし、盛り上がってきましたよ。
「喜んでもらえてなによりです」
「では、行きたい時間軸が決まりましたら、教えて下さい」
オーケイ! と、上機嫌で答えた俺は、早速いつに行こうか考え始めた‥‥‥。
「その前に一つよろしいですか?」
なんだよ、今どうするか考えてるのに。