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俺と宇宙人  作者: bdsfkjldfvdskj
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第1章 未知との遭遇

「ところで高田さん、いつ出てっていただけるんですかね」



俺は今、ある事情があり中年の男同士で二人暮らしだ。


ある事情と言っても、一方的にこの高田さんの事情だ。



「いやいや、私のことは、晴之はるゆきと呼んで下さって結構ですよ。私と悠真ゆうまさんの仲ではないですか」



けっ、何が晴之さん、悠真さんだ。気持ち悪い。



この高田という中年、3日前に玄関の前で倒れているのを見つけてそのまま介抱‥‥いや、飯を食わせたらそれ以来ずっと家にいるってわけ。



おまけに、表情は常に無表情。



能面のうめんのようなつらで話しかけてくるから、付き合いずらいったらない。


あーあ、おっさんなんか家に上げるんじゃなかった。


倒れていたのが、今流行りの秋葉なんとかってアイドルみたいな女の子だったら良かったのに。


誰がこんな七三分けでメガネでスーツの、いかにもサラリーマンみたいな中年と暮らしたいかってーの。



「あのーうちはさ、見てのとおりの2Kの狭いアパートなんですよ。いやそれ以前に、早いとこ現実逃避はやめて、一般社会に復帰していただけないですかね」



いい加減出てってくれないと、警察呼びますよ。



「ふむ、その秋葉なんとかの女性がお好きなんですか。しかし困りましたね、この姿はこの星の一般的な人間の容姿だと、リサーチで結果が出たのですが‥‥」



はいはい、色々設定があるんですね。



「ひとえに人間といっても男性と女性の二種類が存在するとは、考えもしなかったもので。しかも、私の姿は中年なのですか‥‥いやいや申し訳ない。私たちには、発育、老いといったものはないものですから。生物とは、非常に面白いものですね‥‥ふむ」


「えーと、細かい設定はもういいです。勘弁して下さい‥‥‥ところで、なんで俺がアイドルのことを考えていたのか、分かったんですかね」



どこから説明しようか。


この男、自称『宇宙人』。


たまに人の心を読み、しばしば会話をしてくる。



「自称ではありませんよ、悠真さん」



ほらね。



なんだろ、読心術に長けているってやつ?

 

そのせいで、自分は特別な存在だとでも思ったのだろうか。



「確かに、私は特別な存在と言えるでしょう。この地球は、宇宙でも珍しい、生物が存在する惑星なのですから」



頭、大丈夫ですか? 高田さん。


‥‥‥‥。


こんなのはほっといて、テレビでも観ますか。


どうせこの朝の時間帯は、ニュースしかやってないけど、おっさんと話してるよりはましだろう。


最近は、アニメとお笑いしか観てないしね。


たまには、日本の情勢を把握しておかなければ‥‥。


このままだと、社会的に置いていかれる。間違いない。



そして俺は、この後観た報道番組で、衝撃的な事実を知ることになる‥‥‥‥。





俺の名前は秋山悠真あきやまゆうま。三十路をすぎた中年だ。


でも先月うっかり会社を辞めて、今は単なるハローワーク通い。


そう、いわゆる就活中というやつ。


別に会社が嫌いだったわけでもなく、仕事がイヤだったわけでもない。


じゃあ、なんで辞めたかって?

 

このまま組織の歯車となって、使われて、ある程度出世して、定年迎えて、んでもって年金で死ぬまで暮らす・・。


そんな人生が見えちまった。



平和でいいじゃないかって?


 

まあそうだけど、一度しかない人生だぜ。


だからさ、一度は「社長」って呼ばれてみたいし、世の中には勝ち組って奴がいて、俺らとは比べ物にならない位の波乱万丈で優雅でセレブな人生を送っている方もいらっしゃるわけで‥‥。



そんな実業家の成功例なんかを、テレビでよく見るだろ?


同じ人間ですよ、俺にだって勝ち組になる権利がある。



いや、可能性があるんだ。



そうなれば、可愛い恋人だって出来るし、結婚だってしちゃうよ。


マジで。



だからその第一歩として、会社辞めてやったのさ。



そして今ニートなのさ。



ニート最高、イエース!



そして最近は、毎日ゲーム三昧、アニメ観まくりのダメな生活‥‥。


はー、やっぱりダメな男はダメなんだよ。



自分で会社を作ろうと思ったけれども、どうしていいか分からない。


そりゃ少しは調べたさ。


だけど、肝心のお金がないのよ。


知ってる?


世の中って、何をするにもお金がいるんですよ。



本当だよ。



あああああああああああ、貯金するべきだった。


車ばっかり買っちまって、ローンなんか払ってる場合じゃなかった。


借金するか?


銀行で貸してくれるのか?


それとも友人に頭を下げて‥‥。



いやいや、そうじゃないだろ。



もう転落人生確定だよね。


しかも、おっさんと二人暮らしだなんて‥‥。


あーあ、アニメなら、行き倒れっていったら可愛い美少女じゃないのかい!!



ガンガンと、フローリングの床を相手に格闘している俺を横目に、例の高田さんが、コーヒーを煎れ、どうぞと差し出してきた。



勝手に人の家の備品を使ってんじゃねー。



「悠真さん、美少女じゃなくて申し訳ありません」



まあ、話さなくても気持ちが伝わるから、なかなか便利だよね、この人。



「でしょう?ですから、このまましばらくこちらに置いて下さい。この身体は有機物を摂取しなければ、どうやら機能を停止してしまうようなので、とても不便なのですよ」


「なるほど、宇宙人らしいこと言うねぇ。なんとなく、俺も現代っ子だからさ、そういうオタクなノリも嫌いじゃないぜ。むしろ、本当ならそりゃ面白いよね。そしたら俺、あんたの星に行ってさ、そんでもって、その星の重力がものすごく小さくて、そこでは俺、すんごいパワーで、スーパーマン的な存在になっちゃったりして。そりゃ楽しいなー」



思いっきり皮肉たっぷりに言ってやったさ。



「それは、無理ですね。私たちは、星に住んでおりませんので」



はーそうですか。



「‥‥いえ、まあでも、信じてもらえないのは私にとっても不都合ですので。ちょっとテレビのチャンネルを変えてよろしいですか? この身体の前の持ち主が報道されています」



前の持ち主? なんのこっちゃ。


好きにして下さい。



「では、そのリモコンとか言うもので、お願いします。操作が分かりませんので」


「はいはい、何チャンですか?」


「8です」



リモコンをポチっと。


‥‥なるほど、ニュースがやってますねぇ。



「ここで、4日前におきた、連続殺人事件のニュースです。犯人は現在も捜索中ですが、最後の犠牲者として病院に搬送された高田晴之さん41歳の死体が行方不明となっていることが、関係者により明らかにされました」



‥‥‥へ? なんですと?


死体が行方不明? 高田晴之さん?



「死体は死因解明の為、安置されておりましたが、搬送直後に消失。行方が分からなくなりました。関係者からは、死因を特定させない為に犯人が死体を持ち去ったものと考え、現在も捜索中―――」




高田さんの写真が画面に映し出され、下には、死亡した高田晴之さん41歳とある。


俺はテレビの高田さんと、隣でコーヒーをすすっている高田さんを何度も見返した。



‥‥うん、この人だ。



この俺の隣にいる人が、高田晴之さん41歳。


どうやら、死体ではないらしい。



「高田さん、死んでいなかったんですか?」



「いえ、確かに死んでいました」



なるほど。死にかけて、頭がおかしくなったと。


理解完了。



なら膳は急げだ、警察に通報しておくか。


えーと、携帯っと‥‥。



「やめておいた方がいいですよ、確かに私は死んでいましたから。大騒ぎになりますし、なぜ貴方が私といるのか、追求されますよ」



ふむ。確かに面倒くさいことになりそうだ。


この際、死んだ死んでないは、どうでもいい。



「じゃあ、とっとと出て行ってもらえます?」


「ですから、私は本当の高田晴之さんではないのです。仕方ないですね、本当の高田さんをお見せしますから、お待ち下さい」



ガク、バタン・・・。



音を立てて、高田さんはその場に倒れた。



「ちょっと、高田さん? お、おいしっかりしろ、おい!」



いくら呼んでも返事が無い。


しかも息をしていない‥‥。



脈はあるか?


彼の手首をつかみ、確認する。


しかし、何も感じない‥‥‥。



し‥‥‥死んでる。



その時、俺の脳裏に瞬時に浮かび上がる、様々なフレーズ。



「捜索中の死体、無職の男性宅にて発見」

「無職の男、腹いせの犯行か?」

「無職の男、逮捕」

「無職の男、無罪を主張」




イヤだあああああああああ!!



慌てて高田さんに馬乗りになり、心臓マッサージをする俺。



やばい、全然手応えがない。


それどころか、身体がだんだん冷たくなってきてるんですけど!!



「ね、悠真さん、高田さんは死んでいるでしょ」



突然、頭の中で声が響いた。


誰だ? 誰かいるのか?


周りを見渡しても誰もいない。


当たり前だ、ここは俺んち。



「ですから、私です。宇宙人です」



再び、頭の中に声が響く。


こ、この声は高田さん。


まさか、死んで幽霊に‥‥‥。



「本当の私は実体がありません。ですから、高田さんの死体をお借りしたという訳です。見た目もここではとても一般的でしたし、なによりも、毒殺されていた為、死体の状態が良かったのも好都合でした」



うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!



幽霊が、頭の中にいいいいいいい!!



「落ち着いて下さい。私は、本当の高田さんではありません」



俺が悶絶している間も、ずっと声が語りかける‥‥‥。



なかなか俺が信じない為、高田さんこと宇宙人さんは、何度も高田さんの身体を生き返らせたり、死んで見せたりした。


さすがに、そこまでされると非現実的すぎる。


信じるしかないか‥‥‥。


でもさ、怖いんですよ。本当に。


だって、死体があって声が聞こえるんですよ? 頭の中で。



怖いだろ? 想像してみ?



今もちょっと震えてるよ、ボク。



ま、逆にいろいろあって、今は宇宙人であってほしいと切に願うね!



「宇宙人ですって。ただ、人型ではありませんけど‥‥」



よし、お前は宇宙人だ。幽霊ではない。


俺は断固信じるね。



「おお、信じていただけましたか」



って、やっぱり高田さんの声だもーん。

幽霊じゃないのー? ガクガクブルブル‥‥‥。



「申し訳ありません。私たちには、声を出して会話すると言う概念がありません。現在は、この声しかデータがないもので‥‥‥しばらくは我慢していただけますか」



う~む。


さっきから、言ってることは幽霊っぽくないんだよね。


逆に宇宙人と考えた方が‥‥‥。



分かりました。踏ん切りつきました。


信じてみましょう。



でもさ、いくら映画やアニメでファンタジー慣れしているとはいえ、そりゃ現実的じゃあないもの。


さすがに、現実と想像の世界の区別くらいはつくさ。



だけどこれは、現実っぽいぞ。


‥‥‥俺、もしかしてピンチ?



「大丈夫です、私は温和な宇宙人です。この星風に言うと、いわゆる草食系宇宙人というやつです」



なにを伝えたいのか今いち不明だが、安全な宇宙人だと言いたいんだろう。



「そう、そんなところです」



あいかわらず頭の中で会話しているのだが、とりあえず怖くはなくなったかな。


若干、おっさん幽霊に捕りつかれている感は否めないが。



「私には年齢に該当するものがあるか分かりませんので、おっさんかどうか判断できませんが‥‥‥しかも性別などもありませんし」



声が完全におっさんなんですけど。



「それは、この人の声帯を真似ているからです。なんでしたら、女性の身体に変えてきますか?ちょうど良い死体があればですが‥‥‥」



えっ、そんなことできるのか? じゃあ可愛い女子高生で‥‥。


って、ダメだろ! 死体じゃダメだろ! 気持ち悪いんですけど!


じゃなくても、殺すわけだろ!?



「そうですね。死体の方が脳が停止しているので都合がいいのです。逆に、生きている人間に私が入り込むには、脳を停止させなければなりませんので、殺すことになってしまいますね。私としても、わざわざ人を殺そうとは思っていないのです」



一応常識あるんですね、宇宙人さん。


でもそうか、ちょっと残念だな。


最初っから、可愛い女の子で来てくれれば、何も追求しなかったのに。



いやいや、順応しちゃいけない。


今、俺は非現実の世界にいる。



「ていうかさ、高田さん死んでるんでしょ。気持ち悪いって! 俺、3日も死体とともにすごしたっての?やめてくれよ!」



「まあ、そうおっしゃらずに。人間の身体というのは、脳細胞が死滅したとしても、身体全体の細胞はまだしばらく生きているのです。ですから、この状態の高田さんもまだ生きていますし、私が干渉することによって、細胞を活性化させることができます」



そんなこと言われてもさー。



「私の存在は、微弱な電流の集合体。いわば、この星で言うプログラムのようなものなのです。許容できる媒体には何でも入れますし、巨大なネットワークが存在します。ですから、電波に乗ればどこにでも存在することが可能なのです。今現在は、そのような状態だと思って下さい」



なるほど、そういう設定ですか。


よく分からないが、面倒なので、分かったフリでもしておくか。



「分かった。お前は宇宙人だ。それは確定としよう。それでいったいどこからやってきた?」



‥‥‥‥。


‥‥‥‥‥‥‥‥。



あれ? 返事がない。


おかしいな。


おーい宇宙人さーん、出ておいでー。



ガバ!!



「おわっ、びっくりした!」



突然、高田さんの死体が起き上がったので、腰が砕けてしまった。



「すみません。あまりそのままにしておくと、身体に良くありませんから。しかも、ここは電波が弱く、私自信も微弱な電流ですから、媒体がないと消滅してしまうのです」



なんだか、宇宙人っぽくないなー。



宇宙人っていったらあれだろ?


やっぱりグレイ的なあの感じを想像しちゃうよね。


それが微弱な電流とかって‥‥。



「そうですね。高田さんの中にある知識も、宇宙人とはそのような物と、認識されています」



「で、どこからやってきた? 木星か? パプティマスかお前は」


「違います。宇宙です」



いやー、だからさー、どの辺なんだよ。



「えーと、説明不足でしたか。宇宙には、この星にあるような巨大なネットワークが存在します。そして、ネットワークの中には意思を持ったプログラムが無数に存在します。その一つが私――というわけです」



というわけですって言われても、イメージ湧かないんですけど。



「じゃあ何か?知的生命体ならぬ、知的プログラム体ってわけか?」


「まあそんなところです」



それはいいとしてだ。



「何の用で、こちらに宇宙人様がいらしたんでしょうか?」


「私のような存在は、昔から地球にたくさんいました。特に、ネットワークが充実してきた近年ではそこらじゅうにいます。悠真さんは、幽霊やポルターガイストなどは、信じていますか?」


「そりゃまあ、人並みには信じてるよ。それがどうした?」


「幽霊など、存在しません」



へーそうですか。


またきっぱり否定されましたね。


幽霊評論家にそんなこと言ったら、朝まで生トークになっちゃいますよ。



「存在について、口論しようというわけではありません。その現象の犯人が我々だからです」


「ゾンビ伝説などが良い例です。この高田さんのようなことが、世界で起こっている。それがゾンビの由来です」



あーなるほど。宇宙人のいたずらってわけですか。


そりゃ迷惑千万。



「まあそう、いたずらと言われればそうかもしれません。ですが、私たちが人間を調べる為には、その方法が一番簡単だったのです」



調べるねー。


興味があった――ってことか。



「そうです。人間は生物であり、私たちと対話できる貴重な存在だからです。しかも、人間のごく一部では、私たちの存在に気づき、対話を試みているものもいます」



宇宙人の存在を知っている人間ね。


なんだ?


アメリカの有名な、スペースシャトルとか開発してるあそこか?



「まあそんなところです。ですから、私たちも人間と接触を開始したのです。悠真さんが第1号です」



そりゃ光栄です。


なぜ俺に?


まあ行き倒れていたんだから、偶然だろ。間違いなく。



「ま、まあいいじゃないですか、細かいことは気にしない。真の男とは、そのようなものなのでしょう?高田さんの知識がそう言っています」



死体から情報を引き出すな、気持ち悪い。



「で、俺に何をしてほしいんだ。人間代表で、宇宙に進出すればいいのか」



せっかくの、グレイとの遭遇だ。


俺も興味あるぞ。



「違いますよ、貴方は私たちの世界に来ることはできません。悠真さんと対話し、しばらくの間共存させていただければ、勝手に情報収集させていただきます。ようするに、人間と実際に接触して問題がないか調査も兼ねてと言えば、分かりますか?」



なるほど。俺は実験体なわけね。


まあいいでしょ、貴重な経験だし。


下手に逆らって記憶消されたり、キャトルミューティレーションとかされたら困る。



「そんなことはいたしません。私たちは、知的体といっても、人間ほど感情を持っていないのです。ようするに、喜怒哀楽といったものは、理解が難しいのです」



ふーん、そんなものなのか。



そりゃ逆に冷徹な判断を下される可能性もあるってことだろ。


情が湧くってこともないだろうし。



「分かった。俺は甘んじて被験者第1号となろう。但し、殺したり、改造したり、記憶を消したりするのは無しだ。オーケイ?」


「ええ、もとよりそのつもりです。では改めて、しばらくこちらに置いて下さい。宜しくお願いいたします」




ま、そんな事情で、宇宙人との先行き不安な生活が、始まってしまいました。次回では、宇宙人の特殊な能力が明らかに―――?



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