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所詮獣だから

 この世界では、獣人は物扱い。困窮した冒険者が最後にすがる藁。獣人は所詮獣。本能に支配されて暴走することもある。

 絶望することよりも絶望しきれずに生きる気力を失っていくことのほうが恐ろしい。


 半年前に冒険者であるミコト様に奴隷商に売り飛ばされてからというもの、この錆びた檻に閉じ込められ三日に一回程度の頻度で与えられる残飯のような餌を貪りながら辛うじて生きている。どのような経緯でミコト様に奴隷商に売り飛ばされたのかはほとんど覚えていない、あるいは思い出したくない。ただ、別れの瞬間に姿をくらます気であられる旨を伝えられたような気がする。ミコト様は今どこで何をされているのだろうか。


 僕はミコト様を尊敬していたし感謝もしていた。所詮は獣でしかない僕のことを、戦闘で疲弊したときにまるで我が子を労う母親のように褒め、慰めてくださる程度には溺愛されていたので、当然だ。だからこそこの現状が信じられないし、受け入れたくない、自決という選択が過る程度には。


 ガチャ


 突然僕の檻がある部屋に奴隷商が入ってきた。この部屋には僕以外の獣人も複数保管されているのだが、奴隷商は弱りきった彼らをゴミでも見るかのような目で眺めながら僕に近付いてくる。そして僕の檻の鍵を開けると、乾いた声で言った。

「売れた。出ろ。」

僕は唖然とした。そして思わずつぶやいた。

「えっ、なんで、ですか?」

奴隷商はその質問には答えず、強引に僕を檻から引っ張り出し、顧客のもとへと連れて行く。その道中奴隷商はつぶやいた。

「獣人はその強さに反して安いし、物扱いだから人件費も掛からない。ある程度需要があるのは分かるが所詮は獣。冒険者の死因トップ5に仲間の獣人の暴走は毎年ランクインしてくる。結局獣人なんざ困窮した冒険者が最後にすがる藁だ。それをなんであんないかにも金持ち冒険者が。しかもこいつを選ぶとか、酔狂な奴だな。」

奴隷商の言葉に共感したのは初めてだ。そんな事を悶々と考えている間に僕を購入した人のもとに着いた。


「君が獣人のアドナインちゃんかな。」

優しい声でそう言ったのは、黒いウエストコートの上に金色のコートを羽織ったいかにも貴族という風貌の美青年だった。金色のコートには絹糸で美しい紋様が縫われている。身長は180cmほどで、少し屈んで僕と目を合わせている。暫く見つめ合っていると、この青年の青みがかった黒色の瞳に天然パーマの茶髪が垂れてきて、それを手で退けて再び少し鬱陶しいほどの視線を僕の目に向ける。僕は嬉しさと虚しさで胸がいっぱいになった。あれだけミコト様を尊敬しミコト様のためだけに人生を捧げるつもりで少なくとも半年前までは生きてきたのに、目の前の素性の知れぬ金持ち冒険者に購入されたことに喜びを感じてしまった。自己嫌悪で押し潰されそうだ。僕は「はい。」と静かに答えた後暫く俯いていた。


 

 主人公の獣人アドナインちゃんの姿について、獣に人間の骨格をねじ込んだ造形を思い浮かべてください。

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