表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

第12章 花屋とシャンパン

ある日の昼さがり、花屋が活版カフェでシャンパンを飲んでいた。

花屋がテナントとして入居してから二十年、これまで一度も昼間からアルコールを飲む姿はみたことがなかった。


千佳子は、思わず花屋に声をかけた。

「今日は、もう仕事は終わりですか?」

「ええ、今日は店じまいにして、お祝いです。一緒に祝ってくれませんか」

何かを感じた千佳子は、静かに彼の向かいに座った。


その日の朝、千佳子は、花屋が花束を配達に行くのを見かけていた。

何があったのだろうか?


千佳子のグラスにシャンパンを注ぐと、花屋は「乾杯」とグラスを重ねてきた。

「実は今日は、娘の結婚式だったんです」

「まぁ、それはおめでとうございます。娘さんがいらっしゃるなんて知りませんでした」

「別れたかみさんと一緒に、むこうへいっちゃったから、ずっと会っていなかったんです」

千佳子は 黙って耳を傾けた。


「でも、結婚するからって連絡をくれて。お父さんのブーケを持ちたいって」

目を潤ませた花屋は、いつもより饒舌だった。

「今朝、届けてきたんです。ほら、見てやってください」

そういって花屋が差し出したスマホの画面を、千佳子はのぞき込んだ。

「このブーケ、アストランチアですね。清楚でジューンブライドにぴったりですね。

確か、花言葉は星に願いをでしたよね」

「よく覚えておられましたね」

「星の形の花。アストラはギリシャ語の星でしたよね」

「そうです。それにこの花は、娘の誕生日6月24日の誕生花なんです」

「お誕生日に結婚式をあげられたんですね」


その時、スマホが小さく揺れて、メールの着信を告げた。

「すみません」とスマホを手に取った花屋が、

そのまま無言で固まっている。

「どうかしましたか」

心配になって千佳子が声をかける。

「娘からメールです」

花屋は、スマホを差し出した。

そこには、アストランチアのブーケを手に微笑む花嫁と花婿の姿があった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ