七話名門ミスティカリア学園
理事長の依頼から数週間後、俺とルミナスは予定通りに教師となる。もちろん、寮生活となる為……市街地へと探索も兼ねて買い出し中である。
「しかしまぁ、前払いとか拒否権ないな」
「まぁ私的にはいいと思うけどね、お金無かったしね」
「あの金貨二枚だけって、ルミナスさ負けたらどうするつもりだったんだよ?」
ルミナスは体をくねらせて両手を頬に覆いながら
「私と君でイチャイチャ生活……きゃは」っと照れながら言った。女子高生かよ。
「妄想がとにかく豊かだなって思いました」
軽く感想を述べてみたが、ぷんぷん怒るルミナスは
「なによー! 私だって、そんなことを考える時だってあるんですよーだ!!」っと言ってくる。
対して俺は呆れながらも「燦似の容姿で頭がバグるからな。お前が嫌なお酢を三倍にして飲ませる刑に処する」っと反論したらで……。
ルミナスは何故か今にも泣きそうに「嫌だぁ! 最低! 悪魔だ! こんなのないよ!!」 っとポカポカと叩きながら訴えてきたので、流石に俺の冗談もこの辺までかなっと悟る。
「ふははは、まぁ軽い冗談はこの辺までだな」
むーっとした顔をするルミナス、少しばかり機嫌を損ねてしまったみたいだ。
そして沈んだトーンでルミナスは俺に訊く。
「ねぇ、まだ燦の事考えてるの?」
そりゃもちろん、ここまで思って異世界まで来たんだ。キショいと思うけど、それだけまっすぐな愛って他にないのかも。
まぁもう一度やり直せるならいい、でも燦が変わってる事もゼロじゃない。
「まぁな。けどさ…向こうが向こうで進むべき世界があるなら俺はそっとする」
それが俺なりの気持ち、好きな奴には生き方の選択肢もある。
幸せを願うのも俺にしか出来ない事、燦が幸せならそれで十分なんだ。
「未練は少しだけ削れた感じかな?」
「どーだろうな? そうだといいけどな」
そんな会話をして2人は市街地を歩く。
建造物は現代っぽい作りでレストランとかサロンとか……。もう少し田舎なイメージあったんだけどな。異世界だからな、ガチガチじゃないのもまた魅力的だな。
「この学園都市は錬金魔術師も住んでるから、こうゆう構造物に関しては…異世界とゆうより現代かな。ただ、近郊とかこの学園都市から離れると異世界らしい街並みよ」
ルミナスはそう語る、まぁ学園都市は四大貴族が運営してる。生きて生活する意味では金銭面には困らない。大半が無償で設備利用も有料なんてない。
そっから考えれば学園都市の国費赤字なんて想像出来ないな。地方とか他の隣国からの出資とか投資が多いんだろうな……さすが名門と言われてるだけある。
そんなことを考えてれば、とある店前……何やら見覚えがある服が目に止まる。
「お、おいこれ……」
「明らかにカイトのTシャツだね」
服屋だろうか? 展示されたマネキンに俺の"貧乳は希少価値"っと書かれてる服がある。
貴族はこの意味を知らないのだろうか、男女問わずに着こなしていた。
俺のせいで、穢れてしまったよ。高貴な街にやべぇのを流行らせてしまったよ。
「これが一般人が着る服! なんと、なんと貧乳愛を感じる!!」
「嫁が発狂してビンタされたが、メッセージ性が強過ぎて痛さより痛さだ」
貴族って時におかしな部分も考えるんだな。
まぁ楽しそうなのは事実だしな、しかし発売したのは誰なんだろうな。
服屋から店員が出てくる、女性学生の服を着てるルークである。
「お兄さん達、そんな服を着てるとか恥ずかしくないの? だから彼女できないんだよざぁこざぁこ♡」
「「がはっ!?」」
「分からせられないお兄さんはざぁこ」
「「ぐはっ!?」」
貴族で何を流行らせてるんだろうか、メスガキになりきるルークは実にカオスだ。
そんな光景を見ないふりして、街並みを歩いて行く。
「ねぇ、あれとかどう?」
「んー微妙」
「えー、そうかなぁ」
学生カップルを俺はじっと眺めてしまう。
脳裏に浮かんだのは、己の過去でイチャついた時期。そんなことあったなぁっと密かに思う。
「過去を振り返っちゃダメってよく人は言うよね」
「確かにな、あれってなんのために言ってるんだろうな」
「過去を未練って置き換えれば、それが枷になって先を歩むことができない。だから、後ろを見ないで前だけ進めって言うのよ」
「ふーん」
「たださ、カイト見たく深い傷を負った人はそう簡単には行かない。過去のトラウマって、簡単に消せる記憶じゃないから深く根付いてる。軽視した人はさ簡単に前だけ向けって言うけど、その立場にならない人が何を語るんだって私は思うわよ」
「…なんつーか、やっぱり女神だなルミナス」
その一言に、ルミナスは少し戸惑っていた。
なにか思い当たること言ったのか……分からない。
地雷踏んだのか? この間合いの時間は妙な空気が流れる。
「女神は常に|見守る存在よ」
そういう一言を言ったルミナス、少しばかり切なそうな顔をしていた。
ずっと女神だったルミナス、そこを考えれば"慈悲"になれば人の悩みなんて耳にすれば嫌で悲しい話ばかり。
人間がどれだけ救いを求めても、救えない人格は沢山見てきたはず。ある意味つらかったに違いない。
「それに、人間と恋なんてしたくないから。私は君が好きでも、好きになる事さえ躊躇する」
「ルミナス……?」
「人は自分勝手で気ままなんだ、恋愛事情見るほど互いを思いやる人より押し付け。 そんなのを私が見てれば嫌になるよ? 人って怖いなってね」
俺はルミナスの言葉を静かに聞くことにした、女神は死に様を導く救いの存在。
特にルミナスは人間の恋愛で死んだ理不尽さや、複雑なトラブルを見ていたのだろう。
「例えば、自分だけは甘えが許されて一途な恋人は酷く傷付くのに、友達優先で寂しがり屋であるけど優先がおかしい。時に、超えてはいけない一線って人にあるが、友達と恋人どっちが大切かさえも決められない。一途な彼は絶望の日々。当たりが強いい、彼は理解していたけど普通に話したかったのに。これで恋愛の怖さを植え付ける…。とかね」
具体的すぎる恋愛の例えだ、そりゃ感傷的になるし彼自身情処不安定で友達でさえ傷つけてしまうだろうな。特に人の頼り方知らない人ほど。
「特に執着型彼氏や彼女は地雷系に近い、疑い深さも時には人を追い詰める。信用しきって無い関係ほどよく拗れて壊れる、そう言った人間の死を見て私は何のために救いをしてたのか。分からなくなった…純愛な小説みたいな世界は存在しない」
なるほど、ルミナスは女神でずっと一人で見たくないのをずっと見ていたのか。
望んでない死に方、幸せがあれば殺されてしまう。
理不尽や因果応報もある世界だ、幸せってほんとひと握りしかないって感じるほど。
普段馬鹿みたいなドジ神も、人間と変わらないのにな。泣きそうじゃんか。
「ルミナスが、そこまで感傷的になるなんてな」
「ドジで悪かったわね!けど、これが私の運命なのかな? 君と言う優しさと強さがこの世界に呼んだのかもしれない」
「ルミナス、お前は女神でもなくてただの一人の女の子だ。気丈に振る舞う必要なんてないぞ」
「はにゃ?」
俺はそっとルミナスの頭に手を置いた。
「ルミナス、今は1人じゃない。孤独な世界とはもう違うんだから……今を生きよう」
「ーーーうん!」
ルミナスと俺は我ながらくさいセリフを言ったけど、今はその言葉で十分だよな。
それから互いに色々と必要品を買い集めて寮へと帰った。部屋に戻ると、何故かメイド一人立っていた。
「おかえりなさいませ、カイト様」
「え?」
「ふふ、何故メイドが部屋にいるのか? って言いたい顔ですから教えときますね。教師になる方は専属で一名メイドが付き人となります、もちろんルミナス様も付き人メイドが一名居るのでご安心を」
だから安心できないんだけど、まぁ貴族だからこれが普通なんだろうなぁ。
メイドさんは笑みを浮かべていた、そして少し疑問が脳内に浮かんだ。
「メイドさん?」
「はい、なんでしょうか」
「…お風呂ってどうなってるんですか?」
メイドさんは少し頬を染めた、なにやら言いづらそうにこう答えた。
「え、えーと……。背中とか流すのもメイドの仕事みたいでして。わ、私その……新人で恋人歴ないので色々と……」
こればかりは俺は頭に雷が落ちる衝撃を受けた。
かなりまずい、彼氏いない歴=年齢でそういう経験もゼロ……! なんと素晴らしい逸材……!
だが、ダメだ。そればかりはまだ早い。
うん、まず関係を深めなきゃ、うんうん。
「メイドさん、とりあえず……仲を深めてからにしない? そうゆうのさ」
「は、はいっ!? そ、それ以外なら何なりとお申し付けを!」
「わ、わかった……とりあえず掃除お願いしていい?」
「か、かしこまりました!!」
大丈夫だろうか? なんかすごく緊張してて頭から煙が出てるよメイドさん。心配しかないなぁ。
しばらくしてから心なしか、背後から凄い音が鳴り響いてる。
とりあえず明日の就任式とクラス分けしてから、何をするかを考えなきゃなぁ。




