六話 物理チートvs最強反射魔法
俺の頭から生暖かい血が流れ落ちる、視界が揺らぐが気力だけで立ってる。
ルークが目の前に袋を置いた、中を開くと沢山のコイン。打撃武器が鉄製のなまくらの剣。
鋭さがない刃で黒い色をしてる。
手に取ればずっしりと重く、ルークがなぜ武器まで用意したのかは少し疑問だ。
「格下は黙ってろ!」
「やだね、僕は僕のやり方で底辺を無くすんだ!」
「イキがるんじゃねぇぞ!!」
ルークはぴょんぴょんと跳ねて、アルトは辺りにある瓦礫を引き寄せて反射させる。
不思議なことにルークに的中しないで、観客席とかに吹き飛ぶ。
「ちっ!? 射程がズレるな…。いちいちイラつかせるやつだなてめぇ!」
「最高な褒め言葉だよ」
「気に入らねぇな、そのバカにした笑みが腹ただしいなぁ!!」
ルークの煽りがアルトをイラつかせてる。
俺は袋からコイン一枚を取り出して弾く、重低音を響かせてアルトに飛ぶが当然の様に反射魔法で弾く。まぁ想定内。
俺はコイン入り袋を背負い走る、逃げるつもりではなく隙とタイミングの為だ。
「逃げてんじゃねぇぞ!!」
アルトは苛立ちながら追撃、足元にある瓦礫を反射して柱を生成。手で押すと巨大な弾丸の様に吹き飛んでくる。
俺は走りながら手にする剣で一振で粉砕した破片を打ち返した。
(所詮、戦いも凡人だな……?)
無数の弾丸の様に飛んだ破片はアルトの反射を上回る速さで的中。ビシビシっと音を奏でる。
この時初めてアルトは数メートル後ろに飛ばされた。
「ッ…! ハッ、さすが口で勝つって言ったぐらいある。弟は爪が甘ぇが、こうも違うとなりゃ話は別だよなぁ? オィ!?」
反射の弱点は、目に追えない数を処理する事だ。
反射を上回る数が連発されたら追いつかなくなる。
アルトは不気味にニヤけた。全力で戦うつもりだろう。
「僕もお忘れなく!!」
「非戦闘員だろ? 格下」
「ひどい!!」
「まぁ、てめぇは今消えてもらうからなぁ?!」
アルトはルークの背後に回り込む、背中に蹴りを一撃受ける。メキッと音がなり地面を滑るように転がった。
ルークが作った隙、無駄にしねぇ!!
俺は飛び上がり袋にあるコインをアルトに撒き散らした。ものつまらなそうな顔を浮かべていた。
「なんだ? 今からままごとでもすんのか?」
「あぁ、てめぇをぶちのめす為のままごとだ! 物理広範囲砲撃!! 」
黒い剣で虚空に無数に浮かぶコインを薙ぎ払う。
触れた衝撃でコインの落下速度が急激に加速する。
まるでアルトに吸い込まれる様に無数のコインが流星群と化して落ちる。
ドドドドドッ!!
連続して爆発音、地が砕かれ、砂埃を舞い上がる。
俺の物理チートの威力に観客は呆気となる。
俺は少しばかり違和感を感じる。反撃してこない事に。
ラウナの戦いをみて、四大貴族があっけなく身を引くタイプじゃない。プライドがある、負けたら貴族の誇りが砕けるからだ。
勝利の確信が得られないのにルークは喜びすぎている。この温度差は絶妙な感じだ。
「勝ったのに、何深刻そうな顔してるの?」
「こう簡単に負ける奴じゃないって直感的に俺は感じてるんだよ」
「そうかな? それより君の魔法は物理魔法なの?」
「ご名答、まぁ強いだろ?」
「強いってもんじゃないよ。あの威力、物理だけで…この世界じゃかなり珍しいかな」
まぁ無属性だし、アルトも似た感じだけど。
魔法が個性の象徴なら…ルークみたいなハズレ魔法使いどれくらい居るんだろうな。
パキッと小石を踏み壊す音、一瞬にして背後から殺気を感じ取る。
俺は冷や汗を流して後ろを振り返る、人影が浮かび上がっていた。ルークはありえないって表情と動揺を滲ませていた。
「勝ったと思っていたか?」
砂埃が舞う中でアルトは俺が放ったコインを手に取り投げ飛ばした。
コインの速度は急激な加速で、砂埃に風穴を開かせてルークの腹部を強打して壁に強く激突。
「やっぱり、そう簡単には負けないよな」
動揺を隠しつつも俺は言った、ルークは呻き声を上げている。見るに耐えがたい。
アルトは頭から血を流しており、身体が傷だらけでもその場に立つ。怒りを滲ませながら言い放つ。
「さいっっこうに、決まっちまったなぁ……? 負け無しの俺が、簡単に負けるだ? 有り得ねぇ、格下、下民が? 俺に勝つ。 お前ら如きが、俺様に勝つとかありえねぇだろうがぁぁぁぁ!!」
怒りにまかせてアルトは地面にある瓦礫を強く蹴飛ばした。瓦礫もまた反射で加速。
俺は瓦礫を殴り飛ばして粉砕した。
「よォ? 隙だらけだぜ」
「ーーーーッ!?」
アルトが眼前にいて悪意に満ちた笑みで俺は冷や汗を滲ませいた。拳が腹部に直撃、バキバキと背骨を折れる音が耳に響く。そのまま反射で吹き飛ばされて外壁にドォンっと激突音がなる。
「呻いてる暇なんてねぇぞ? ほらほらぁ、さっきの活きがいい攻撃はどぉしたぁ?! !!ギャハハ!!」
俺はフラフラしながら立ち上がるが、アルトの想定外以上の速さで俺の目の前に再び現れる。
「寝るには少し遊び足りねぇな?!」
「クソが!!」
俺は拳を振り抜くがアルトに躱されて、腕を捕まれ上空に投げ飛ばされる。
「くっそ……! 速すぎて追いつかねぇ!!」
「眠らせる前に一つ教えといてやる、反射はてめぇが使う物理と似た性質だぜ。違いは物理は叩けば桁外れなだけで、反射は触れれば自在にスペクトルが操れる。例えばてめぇの背後まで飛んで背中から追撃…普通ならありえねぇよな? だが、俺にはできちまうんだよな」
アルトは見上げながら俺にそう言ってから、背後に回り込む。
「こんなふうに…なっ!!」
アルトの拳が全重力が乗っかった様に骨が軋む。
バキバキと音を鳴らして地表に向かって叩きつけられた。
俺は口から血が滲み出た、脇腹を何本か折ったのか呼吸が乱れる。生きてるって感じる程に、心拍数が脳に響く。
「オイオイ? どぉしたんださっきのまでの威勢は!? なんなんですかねぇ、お前には沢山聞きてぇことあんのによ! 立てよ、敗者復活戦見たくよ。ヒーロー気取りになって貰わなきゃならねぇんだよ!!」
アルトは激しく苛立たっている、冷静さなんてそこにはない。これが全力か。
俺は歯を食いしばり立ち上がる、脇腹が激痛で気絶しそうだ。頭がやたら痛いが、血が流れようが関係ない。足場に血溜まりを作るが、関係なく顔が俺はにやけてしまう。
「…頭イカれたか? いいぜ、その顔…今すぐ殺してぇな」
アルトの強さは魔法という力だけで動けるんだ。
俺との違いは、チートであるかないか。
心が折れない限り、チートは持続性がある。
対して魔法は感情が高ぶるほど強力、命が危うくなると威力は低下。
俺は軽くため息を吐いた、全身の力を抜いた。
限界はとうに超えた、今ある身体は悲鳴、魂、いや、命の鼓動がある限り負けられない。
「仕方がないか、ルミナスに使うなって言われてた。禁断系…使っちゃうか」
俺の身体から白いオーラが放たれる。
アルトの渾身の拳を俺は掴んで強く握る。
摩擦領域が発生しない、この状態に
「な、なんだ?! そいつはなんなんだ!?」っとアルトは驚き叫んだ。
俺は何も言わずにただただ言った。
「ーーーーー物理被弾反射!!」
俺は摩擦領域を強制物理変化させた。
反射するアルトに数倍の跳ね返りがその身に襲い、破裂音が馳せながら外壁に大きな風穴を空けた。
「俺の勝ち…だぜ!」
俺は全身の力が抜けてゆっくりと倒れた、天高く差し込む太陽を眺める。
「や、やりやがった!! あいつ、本当にや倒したぞ!!?」
「四大貴族の二名を倒しやがった!! 一般人、いや、底辺なんて君らには不要だ!!」
「よく倒した! 君らに幸あれ!!」
「かっこいいぞ!! 一般人!!」
観客席からの盛り上がった歓声が聞こえる、それと同時に視界に映り込むルミナスの姿。
「やったね、カイト!」
「あぁ、何とか勝てたぞ?」
「うん! まぁ抱きしめたいけど、今は無理だねぇ」
「そんな事言うなよ」
「けど、そんな傷だらけにならないで。血だらけのカイトなんて見たくない」
「ごめんなんか」
「いいよ、君が無事ならそれでいいよ」
「出来るだけそうならないように頑張るよ。今はとりあえず喜ばなきゃな」
「そうだね、この世界の長らく貴族支配が変わる瞬間だもんね」
この時、俺は教師になる意味をここで勝ち取ったんだ。もうあの頃の自分じゃないんだ、守れる力が手に取れたんだ。嬉しい以外に他がないな。
教師試験の模擬戦から数日後、表彰式が執り行われた。男女共に初の一般人参加者の教師だからな。
新聞社達は変わらず貴族側の取材だけどな。
「しかしまぁ、お主らまさかそこまで強いとはな?」
突然老人に話しかけられたが、見覚えがある姿で俺はゆっくりと思い出した。
「あ、何時しか見たじーさん!?」
「何時しかってそんな日経っておらぬじゃろ。孫が行方不明のまま十数年、あの鐘がわしらの約束じゃったが、死を告げられると嫌でも思い出すからのう」
「じゃあ、お孫さんは……」
少しばかり悲しい顔をしたじーさん、淡々とした口調で「あぁ、内乱に巻き込まれて既に亡くなってるのじゃよ。 あの場所から離れられなくて、来る日も来る日も来るんじゃないかと思っての」っと言った。
俺はこの世界を百は知らない、世界情勢とか確かにあるにはあるんだろう。こんな理不尽な話は二度と起こしたくはないな。
「じゃから、ありがとう。君たち若いのを見て久々に山脈を駆け抜けた。そしてワシは魔法学園の理事長ってのも思い出せたのじゃ」
感謝されても、困るが…え? 理事長? っと思い俺は驚く。
「ただのボケじゃなかったのね」
ルミナスの遠慮知らない一言はさておき、理事長が目の前にいるんだ。
少しばかり聞きたいことある。
「理事長」
「ん?」
「"ありあ"と言う人は在学してないですか?」
「ふむ、アリアと言う人は在学してる。じゃがの、今や追放生徒」
やはり追放生徒だったのか、となれば自体はあんまり良くないか。
だけど俺は少しばかり安心した、魔法学園に在学してるだけでも……救われた気がした。
「場所は分かりますか?」
「主ら知ってるはずじゃ、アリアは半年前に追放されて廃墟都市にいるのは確かじゃぞ」
「そこに行きたいです」
「ふむ、気持ちはわかるが…。何やら事情があるのは確かじゃな。ならば、ワシの依頼引き受けてくれんかの?」
その話を聞いた俺とルミナスは互いに顔を見合せて頷いた。呼ばれる魔法学園の裏側の調査依頼だった。
「簡単には行けないのは確かじゃ、そこに真実はある。これはワシ個人の依頼、達成出来れば褒美をやろう」




