四話 第二試合
エルドを倒した俺は再び待合室に待機する。
改めて俺は実感する物理チートの強さを。
個体物質なら弾けば飛ぶし……手に触れればどんな物も物質化して殴れば弾け飛ぶ性質。
もちろん握るものによれば性質が変わるだろうな。
これがルミナスが言う救う為の力……。
逆に考えれば強すぎる訳でもない、弱点はあるだろうし……この程度クラスの強い奴がいるって事でもあるのか。
まぁ考えても仕方がない、動力テレビを見る。
第二試合女子グループは、ルミナスは勝ち進み気が付けば決勝戦へと勝ち進んでいた。
元々女神だし、簡単にやられるわけないか。ドジでもあるけどさ。っと思ってると、廊下側で誰かが会話してる声が聞こえる。
「なぁ聞いたか」
「あぁ、女子勝ち進んだルミナスって子」
「魔法使わないで、なんか悩み相談聞いて助言して辞退させたって話」
「まるで神様の助言だって騒いでたけどな」
「次の決勝相手は、四大貴族の一人ラウナ様かぁ」
「あの千日戦争の覇者の父を持ち"ラウナ流"のお嬢様だろ?」
「あぁ、なんでもSクラス魔物を一撃で倒す凄腕の魔法剣で右に出るやつまずいない」
「妹アネモス様は、辛いだろうな」
「そりゃそうだろうな、だってよ四大貴族の筆頭で覇者の父とラウナ流の筆頭姉。ものすごいプレッシャーで生きてる。俺なら投げ出してグレるよ」
「年頃ならやっぱそうだろうな、四大貴族は人間味薄いよな」
そんな会話を耳にしてた俺は、何やら複雑そうだなって思いながらも次の対戦相手表を見る。
初戦突破した次の第二試合は男爵位"ルーク"っと書かれている。そこを勝てば、決勝は四大貴族の一人と戦う流れになる。
ルミナスの勝敗も気がかりだけど、今は考えないでおこう。
「第二試合、カイトさん模擬戦会場へ来ててください」
執事に名が呼ばれたので再び会場入り。
目の前に現れた男性ーーーーかと思えばバニーガールが現れていた。
「え?」
網タイツにふわふわしたスカート、うさぎ耳カチューシャで萌え袖の長めの上着。髪の色はピンクでロングであり瞳は青い。一見女の子にしか見えない、体も細々としてる。…男性だよな?
「こんばんは、僕は泣く子も黙る男ノ娘だから安心して」
その声はあまりにも少女だった、イメージの数倍上回り脳内は思考停止。俺は一瞬だけ違う世界に来てしまったのか……いやいや違う違う。惑わされるな。
「なんも安心ができねぇよ」
「おや、その疑いの眼差しはなんだい? あ、もしや男じゃないだろ? って思ったでしょ? 大丈夫、ほら」
スカートをぴらっと捲り上げたルーク、ちゃんと立派なもっこりがご健在していた。
えげつねぇもの見せられてしまった。居心地ゼロ。
「とはいえ、君は何故この戦いに? 一般と言う肩書きはかなりリスクあったはず。聞かせてくれないかな? ってなぜ青ざめてるの?」
見ちゃいけない、思い出したら吐きたくなる。
耐えなければ、この可愛さに。
「い、いやなんでもねぇ。まぁ、話すと長くなる。お前貴族にしちゃ……イマイチ敵な感じがない」
「なんでよ? あ、お兄さんもしかして……僕に惚れたとか?」
「百あって二百はない」
「ブーブー! でもでもさ、君……僕を見てなんも感じないとかちょっとびっくりだよ?」
「言ってる意味わかんねぇよ」
キュルルンっと言う効果音、可愛いポーズするルークはウィンク。観客男性達「キャホーーー!!」っと頭のネジが飛んでる声で喜んでる。
対して俺、目を細めてじーっと見るだけ。
「くっ!?僕の男の娘のパワーが効かないだと!? そんな、ありえないよ!! なんで耐性あるんだよ!! 」
知らないよ、こっちが聞きたいよって顔を浮かべるしかできない俺だった。
しかしまぁ、このルーク敵意がなくてある意味個性的なんだけど……本当に貴族か? って疑いたくなる。
「"女装する魔法"それが僕の唯一の魔法、君は知らないと思うけど、この世界で魔法はその人の個性の象徴なんだよ」
いきなりルークは話し出したが、それは初耳なんだけど……なんか理不尽じゃない? ルークは女装の魔法、衣類しか出来ないハズレ魔法って所か。
「なぁ? ファッション会場じゃねぇぞここ」
「見せる場なら丁度いいぐらいだよ」
「見せる場ってなぁ……」
「見るかい?」
「存在しない記憶にするよ」
「ヤダ、ダメよ」
視線を背けた俺は観客の声を傾けた「もっこり貴族最高!」や「未使用お得じゃねぇか!」とか「全ては男の娘しか勝たん!」って叫ぶおっさんが多数。
とにかく世代問わない特殊性癖がこの世界にもあった。思わず俺は「お前ら歪みすぎだろ性癖!!」っと叫んでしまった。
それで戦いにならず、ルークは辞退する流れて第二試合が終わったのだがーーーー。
「あのさ」
「なにさ?」
「なんでお前まで特典見たくいるの?」
待合室にて、何故かソファーの真横に座るルーク。
ピッタリくっつきながらニコニコして「そりゃ、君と言う存在に興味でたから」って答える。
何故だろうか、全然安心が出来そうもない。
むしろ身の危機を感じるのはなぜだ。
「安心が不安になっちまった」
「酷いなぁ……ま、一般参加者がこの試験に挑んだからには教師になって貰わなきゃだし。それに次さ、決勝相手は四大貴族の一人だよ? 多分君一人じゃ無理だね」
「そりゃどうゆう意味だよ?」
ルークはテーブルに置かれた冷めた紅茶を手に取りながら話す。
「君は姿からして田舎から来たはずだから、あんまりこの地域を知らないはず。まず魔法学園都市は知ってるでしょ?」
「軽くたけどな、この地域一帯の呼び名のはず」
まぁ軽く本を読んで知った程度なのだけどな。
大陸なんだけど、各地域と領土が存在してるのは確かなんだ。そこまでしか分からないけど。
「うん、それは常識内の話で区分として"魔法術都市ミスティカリア"通称は学園都市。そこにある魔法学園はこの"アルカノヴァ"大陸全土ではかなり名門校でね」
「確か四大貴族が経営してるはずだよな? 名誉とか身分の高さがよくわかる話だけど」
ルークはくすくすと軽く笑い、冷めた紅茶を飲んで一息してこういった。
「そう、身分の高さ。そして誇りやプライド。一般人を排除して維持する治安、結果的に一つの均衡が作り出された街と言うべきかな?」
それが原因でもあるって言いたげなルークの横顔、ガチ女にしか見えないけどなんも感じないな。
「まぁ、貴族であれ家族すら平気で切り離せる世界。廃墟都市って知ってる?」
「名は聞いてるけど、実態は知らない」
「そこに送り込まれる、身分がってもなくても。学園都市の真隣にあるんだ、因みに許可がないといけない」
「なんでだ?」
「さぁ、僕が知る限りは…ある教団の本拠地とか。詳しくは知らないかな」
闇が深そうだけど、確かエルドが言うにはアリアはその廃墟都市に送り込まれたんだっけか。
点と点が結ぶ話だけど、なるほど簡単に救いに行けない感じが出てきたな。
必ず教師にならないと、なんの為に異世界転生したか分からなくなるな。
「あと、決勝対戦相手は元学園都市最強で一位だった四大貴族の一人アルト。防御系と反射が得意だから、もしかしたら君の戦い不利になるかもね」
「不利ねぇ」
「君の戦いは主に物理、それを跳ね返せる存在が反射。防御が崩せでも反射されたら勝てないよ」
話を聞くだけ聞くとかなり厄介なのはわかる。
対策を練るなら…物質の質量が左右しそうだな。
跳ね返される前に、数で叩き込むしかないか。
となれば小石程度じゃダメだな。砕かれるな。
俺が頭に浮かんだのは硬貨、それで閃いたのがコインが沢山あればいけるのでは?っと、そうと思えば話は早いな。
「なぁ、ルーク。コイン持ってない?」
「コイン? 今手持ちにないけど……何に使うの?」
「最強さんに勝つ方法、打撃なら行けるはずなんだ」
「ふーん? むちゃくちゃだね。君の魔法は、打撃が確かにメインだけど……勝算的に低いよ?」
「それでもいい、あと武器もな」
「仕方がないなぁ。まぁ、僕にかかれば何とかなるかな? それに、君には期待してるし……この世界の在り方をぶっ壊せるって思うからね」
ルークはゆっくり立ち上がり、スキップしながら待合室を出た後ろ姿を何気に俺は見送った。




