十三話 私の存在意義
私とクロノスが先生の前に現れる数時間前まで時を遡る。
私は帰宅後、父により監禁されてしまった。
部屋ではなく地下にある石畳の一室、荷物部屋であり肌寒い。
私は先生と剣を交えた、確かにすごい強さがあるのはわかった途端……手足が震えた。
何故だろう、誰かに期待されて生きてきてずっと自分を押し殺してた。
姉の存在は偉大で、あまりにもその強い光に当てられて私までが……姉と同じ期待感を向けられていた。
それがけ怖い、いつの日か期待に応えられなくなったら。負の考えが背中を押す、息を吸うのも吐くのも……貴族という肩書きのせいで不自由だ。
コンコンっとノック、この場所に来る人は殆ど居ないのに誰だろう? ゆっくりとドアが開く。
入ってきたのは、私の幼なじみでもある一人のメイドと執事だ。
「アネモス様…」
「ミケ」
「君らしくないね」
「リク……何故君たちふたりがここに?」
「決まってますよ、救いに来ました」
「まて、そんな事したら……!」
「バレたら死刑だろうな、けど……俺達はお前が苦しんで悲しんでる姿を見る方が何倍も嫌だ」
「わかっててなんで……? こんな私に、なんの価値があるのよ。 先生は私の迷いを見抜いた、自分の存在はここにでもなければ……居場所は何処にあるの?」
ミケとリクは互いに顔を見合せて、そしてこう話し出した。
「居場所なんかなくてもいい」
「え?」
「今、私達にとっての居場所はアネモス貴方だけ。貴族がなんですか? 期待に応えられない恐れなんて考えるだけ無駄よ」
「……私よく分からないそれの意味」
「はぁー、アネモスは昔から頭硬いなぁ。あのな、応えようとするから自分が見失う、存在意義はお前自身が作っていくもんだ。家に居場所がなくても学校とか自分にしか輝けない場所があるだろ」
「自分にしか……輝けない場所?」
「えぇ、私達はアネモスがいてこそ頑張れるのですよ。その人がいるから頑張れる、これって綺麗事に聞こえるけどそうじゃないわ。何かを守りたい救いたい大切にしたい……それが原動力になる」
私にはよく分からない部分、だけど、この2人がそんな事言ってくるなんて思わなかった。
ミケに手を引かれて私は物置部屋から抜けでた、三人でコソコソと地下通路に向かって歩く。
そんな時だった、誰もいない地下通路に人の声が響いていた。それが外に近づく程に、話内容が分かる。
「良いのですか? 」
「私には娘が一人、アネモスは……不要だ。記憶を消してくれ」
「なんと、なんと、なんとなんとなんとまぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁ。実の娘を愛せないなんて、貴方中々……愛が足りてませんねぇ」
「ふん、私には期待に添えるラウナがいる。それ以外は要らぬ」
「ぐふふ、それでは、それではそれではそれではそれではそれではそれではそれでは……愛の教団憎愛担当アイノフレシャスが貴方の記憶をーーーー」
ミケとリクは私の顔を心配そうに見る、だが、今の私には迷いなどはない。剣を片手にゆっくりと父の方へ向かって歩いた。
「……おや? 貴方は?」
「……何故ここにいるアネモス」
「何をやられてるんですか? 父上」
「なんという事でしょう! 娘が現れるなんて、愛がゆえで、愛がありますねぇ!! けど……邪魔をしないでもらいたいですねぇ!!!」
私は剣を振るい、魔法を次々と切り裂く。
「答えてください!! 父上!!」
「……アネモス、あとは任せた」
「ーーーー!?」
父がそう言い残した瞬間、頭から血が吹いた。
アイノフレシャスの右手には父の頭を貫いて引き抜いた。淡い光が放つ何かを愛おしいそうに眺めてから私を向いた。
「さてさてさて、貴方は今より一般人となりました。さぁさぁさぁさぁさぁ、どこまで狂うのかを私を楽しませてください。そう全ては愛の為に!!!」
黒い波動が放たれ、意識が遠のくのと同時に……記憶から父の姿が霞んでいくのを感じた。
そして、先生の存在が浮かぶ。助けてっと。
「はっ!?」
次に私が目を覚ました時には、ミケとリクがベットの両サイドで寝ていた。
「アネモス起きた?」
「目が覚めたんだね!」
「ったく、ようやく本題に動けるな」
「とりあえず大丈夫? アネモスちゃん」
クロノス、エルデ、エレクレール、シエルとルミナス先生が座って目覚めるのを待っていた。
気絶する前にあった目の前にした話と、そして私がようやく見つけた答えが目の前にあったのを実感した。
なんだ、最初からあったんだ。私だけの居場所。
ルミナスは、キリッとした顔で
「みんな、準備はいい? カイト先生を救いに行くよ」っと言うと「おう!」ってエレクレールが応えて「うん、ひとりでカッコつけてさ。私、どうしたらいいか分からなかったけど……戦うわ」っとシエルは言ってまもなく「先生に惚れたのか?」っとニヤニヤしながらエレクレールは口にした瞬間にシエルの空き缶が顔にストライクしてから「だから、なんであんたはいつもいつも!!」っと怒りを顕にしてる姿をエルデは「その辺にしときなよ」っと呆れ顔で言った。何故だろう、私このやり取り毎回見てるけど面白い。
「ふふ…」
「アネモスが笑った!?」
「お、貴重だな? 写メ撮りてぇな」
「チャラ男は変態」
「んだとクソびっち!!」
ルミナス先生が手を叩いて
「まぁまぁ、とりあえず……クロノス。アネモスと先に行って」っと指示を出した。
クロノスは「あい」って言って敬礼して、私はベットからゆっくりと降りて壁に置かれていた剣を手にした。
「じゃ、いくよ」
「うん。待ってて……カイト先生」
こうして、私とクロノスが先行して先生の所へと戻ったんだ。




