十二話 現れる刺客
さて、生徒を逃がしたはいいけど……どうするか。
このジジィ、頭がイカれてるのは確かなんだ。
もし戦うなら隙が必須になるが、難しいかもしれないな。
「おやおやぁ? 信者が減りましたねぇ……。ふふ、愛が故に重すぎたのでしょう。ですが、ですが、ですがですがですが!! 貴方は違うっ!! その古く錆びた愛を貴方から感じ取れます……えぇ。それが私の呼び覚ます、否、可能性を導いてる!!」
もはやジジィは、理性すらない。
あの狂気、愛だけを語り歌う。そうかこれが執着。
歪みきった笑みが、変わらずに鳥肌で背筋をさらにゾクゾクさせるほど。狂気だ。
「ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハ……貴方、顔が……歪んでますねぇ!?」
歪むまくるそのニチャァとした笑み、吐息レベルにうざいハァハァ。俺は若干引いていた。
「な、何を言ってんだお前。 いや、聞きてぇことある、廃墟都市を支配信仰者ってお前らか?」
「以下にも、私達が、愛されなかったもの達への救い……救済をして活動してる。しかし、支配信仰? ノンノン、私達は愛を届けるためだけに……ねぇ」
やはりそうだったのか、こいつらが廃墟都市を支配してる教団。燐がいる場所に……胸糞がわりぃな。
落ち着く様子はないジジィ、左右を行ったり来たり
しながら天高く見上げながら言い出す。
「歪んだアイノカタチもはやそれすら結晶となる。実に、実に実に実に実に実に実に実に!! 儚さを兼ねている!! だがぁ、この私にかかればすぐにでも救済出来る……。そう愛の教団に入ればーーーー」
謎に勧誘してきてうざい、俺は苛立ちに任せてジジィの背後に回り込み強打。バキャァッ骨を圧縮して砕いた音が鳴り響き吹き飛ばした。
「誰が入るかよ? お前みたいな歪んだ愛なんて要らねぇよ。純粋なでなければ、相思相愛なんて言わねぇよ」
俺は唾を地面には吐いた、胸糞が悪いったらありゃしねぇ。だが、このジジィ……物理チート受けても満面な笑み。確実に決めたのに、この不気味さに鳥肌が収まらない。
「何をムキになってるのですかねぇ? あぁ、バカにされたとか思ってましたかぁ。ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ……。私、今、物凄く……溶けそうなほどの熱量を感知!!! 貴方を殺さなければなりませんね……ハァハァハァハァハァハァハァハァ」
そして、ジジィのこの発言……キモさと変態が混ざってる。ここまで愛に対して執着の塊。
「んふふ、さっきの攻撃は、実に気持ちよすぎるぅぅぅ。お礼に私からの愛の囁きをーーーーーーー!!!」
ジジィから気色悪い色の魔法弾を放つが技名が「執着の愛!」キショい!!
冷や汗しを流しながら、俺は深いため息を吐きながら地面に刀を突き刺した。
「破滅防御陣」
魔法は実体だけど物理チートは物理じゃないと有効じゃない。一応弱点は補うものだけど、これは持続性ないから一度っきりの跳ね返しだ。
「おっ!? おおおっ!!? 」
魔法弾がジジィの顔に的中、肉塊が溶け落ちる。しかし、高笑い。何がおかしいんだよ。
顔から白煙を上げながらもジジィは、平然と立っておりゆっくりと自己再生しながら話す。
「無駄ですよ? 私は既に愛をあの方に授けたのです! ご覧の通り死にやしない、なんて! なんて素晴らしいぃぃぃぃぃ!!! これぞ! これぞ神の力なのです!!! そんな生ぬるい愛なんて、私になんか響かない……ですっ!!!」
再び魔法弾を放つジジィ、俺は刀で次々と叩き落とす。
「おーほほ!! いつまで耐えられますかねぇ!? 私、ゾクゾクしてたまりませんよ? ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ……ジュルリ。おっといけませんねぇ」
魔弾が当たるほど、力が抜けていく感じがする。
あのジジィ……! ただの魔弾じゃねぇな!?
奥歯で苦虫を噛み殺す、維持でも俺は刀を振り続ける。地面に突き刺して瓦礫を物理チートとして放つ
が、ジジィの身体をすり抜けて背後の壁に的中。
「物理通じないとか、ふざけやがって」
時に透けたり、時に本体……読み合いがつかない。
まるで手のひらで遊ばれてる感覚だ。
しかも、身体が痺れてきやがる……!
「愛が全て、貴方にはそれを知る価値がある。ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ……さぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁさぁ……私の、私の、私の……下僕になりなさい!!愛の裁き!!」
ジジィはニヤニヤしながら黒い波動を放つ、ハァハァが相変わらず気持ち悪い。
俺は身体が痺れて回避が出来る状態じゃない、ゆっくりと地面に倒れてしまう。
迫り来る黒い波動を睨むように眺める。
くっ、俺はここまでなのか……?
まだ諦める訳には……燦、ごめんな。
「ーーーーー全拒絶反応」
波動が一瞬で消え去る、目の前に現れた少女。
覆面姿であり、どことなく見覚えがある後ろ姿。
「!?!?!?!?!?!?!?」
「…探したわよ。今度こそ仕留めてやる」
武器を持たない後ろ姿だけ、ただわかるのは……全身が黒くて長めのロングコートであるぐらいだ。
流石に驚いたジジィは、焦りながら言い始める。
「おやおやおやおやおやおやおや、愛によって導かれた客人ですかねぇ。 えぇ、この響き愛は運命……ハァハァハァハァハァハァハァハァ。こうせずには居られませんねぇ、このお二人方はなんとも悲しき愛がそうさせた……これこそ極上な愛はありません!!! あぁ、早く帰らねばなりません!! 」
なぜジジィはあんなに慌ててるんだ? しかも助けに入った子の子は……?
「ま、まて!!」
おかしいな、燐と重なる気がする。
うっ!? なんだ……? 思い出そうとすると頭がズキッと痛みが走る。
「構ってる暇は無いのですよ……その時が貴方達を導くまではーーーーー。」
ジジィは転移魔法を起動して黒い炎が燃えてゆっくりと、不気味な笑みを浮かべてその姿を消した。
「ようやく場所を掴めたと思えば……チッ。 あの忌々しい教団、何が愛が世界を救うだ」
体の痺れが落ち着きゆっくりと立ち上がる。
少女を目の前にして「さっきは助かった、ありがとう」っと感謝を口にした。
だが、少女はツンとしており「たまたま通り掛かっただけ。ただ、それだけよ」っと素っ気ない。
まぁ気になるところは沢山あるが、今はいいとしてだ。とりあえず名を名乗らねばならないな。
「俺はカイト、君は?」
「私は実名は言えない。だから組織のコードネームで《A》だ。それにしても、君は学園都市の教師がなぜこの場に?」
事情を淡々と俺はこう《A》に説明する。
「生徒を救いに来た。ある意味"偽装婚約"という名目の怪盗をするつもりだった。それであのジジィと此処に居たのさ」
「生徒だと? それはまずいな……」
「どうゆう意味だ?」
《A》は意味ありげにこう話した。
「簡単さ、教団は愛を奏でてる。それが愛されない人を救済として記憶を奪うんだ」
「記憶を奪うだと?」
更に《A》は淡々とした口調で説明を語り出した。
「あぁ、残念な事に……廃墟都市の由来はその名通り。記憶を奪う救済で出来た街だ。貴族共を見ただろ? 不要なら肉親であれ切り捨てる。 希望がない絶望しかない奴らには愛がない。だから教団はそこを狙い記憶を奪い……再び愛されるように導くやり方だ」
思ってたよりかなり複雑な話だ、記憶を奪うが彼らの愛の教団が救済処置としてる。
それがあの廃墟都市で起きていて、学園都市のもう一つの現実……。厄介な話になってるな。
「カイト、先生なんだろ? そこまで深入りしたら後戻り出来ないぞ」
当然リスクはあるのは理解してるけど、過去の俺に今出来ることがあるなら誰かを助けて救う。
それだけは譲れない話になるな。
「わかってるさ、けどこれが俺なりの正義? いや、"自分がしたい事"なんだ。間違ってる救済なんて見過ごせない」
真っ直ぐな眼差しに《A》は少し笑みを浮かべて
「へぇ、変わってるね。ただのお人好しにしてはかなりの十分な覚悟を感じるよ。けどね、今この地点で運命に抗えるかしら?」っとこれまた意味深いのを口にした。
俺が何かを話そうとした時だった足音が響く。
その足取りはゆっくりで、前方から現れたのは四大貴族の筆頭カールド。
「確か、軍へ戻られたはず。なぜ貴方がいるんですか?」
その問いにかールドは微動たりせずに
「…簡単な話だ、アネモスを教団へ送り込む為に。私は軍と行くと嘘をいい……戻ったのだよ」っと感情がなくて短直的な言い方だ。
妙なのは確かだ、俺はカールドの目を見たら虚ろで光が宿ってない。違和感しかない、それに何だこの胸騒ぎは……?
「ふ、私には一人しか娘はいない。2人目の娘に関するこの書簡は不要だ」
書簡をビリビリと破いて捨てるカールドを俺はじっと睨むように眺めた。
カールドは笑みを浮かべる、その面影はあのジジィとそっくりだ。
実の娘をそうしてまで……!
あのジジィ、何しやがったんだ!!
俺は刀を構えようとすると、右手を掴まれた。
アネモスとクロノスの姿がそこにあった。




