九話 教師初日
春らしくて、窓辺から日が差し込む。
暖かな空気で眠気に誘われる人は少なくはない。
就任式でガチで分からせトークしてしまったけど、それを挽回する意味で緩く行こうとは思う。
教室に向かう廊下、担当する教室は二階にある。
ルミナスは、副担任だから俺が不在の時などを任せる流れだろう。
職員室で授業内容の確認とかを任せといて、あとは廃墟都市の情報を探る流れになった。
とりあえずなんとかなるだろう、今日は今日で教師となった初日のわけだしな。
気持ちは切り替えとかなきゃな。
二年Z-七組、なんか歯切れ悪いけど……なんで七組が張り紙追加されてるんだろう?
俺はそんなのはいいとして、教室の引き戸を開ける。中に入ると、少人数の生徒……五人ぐらい。
なんの意味か少なさ、イメージと異なりすぎである。
「ちーす、アンタが新しいセンセーか?」
「………」
「うわぁ……ほんとに一般人先生だ!」
「ふ、しかも中々な逸材であるな」
「あはは……まぁそれはそうとして。数日で辞めなきゃいいよね」
「ギブするのは今のうちってこった。まぁせいぜい頑張れや」
なんか性格に個性がある生徒達だな。
一人は眠そうなロリ女子、二人はチャラそうだし、三人は元気っ子だし、四人は凛々しい貴族だし、五人は中性な顔立ちだし……何この教室。
「先生が固まってるよ?」
「ハッ、驚くのも無理ねぇだろ」
「我ら貴族身分であり、四大貴族が集結してるようなものだからな」
「私だけ一般人だけど……。仲間外れじゃなくなったからいいとします!」
「ビッチかよ」
「ち、違うわよ!? このアホ貴族!!」
「ぐはっ!!?」
なんだかんだで、クラスメイト達に問題は無さそうだな。仲の良さを見ると、それなりに一緒にいる時間長かったのかもしれないな。
「とはいえ、僕たち卒業するはずだったよね?」
「うむ」
「本来ならな、勉強が足りねぇとか出席回数足りねぇとかな」
「私はまだ早いけど一年ほど」
「処女?」
「だから、なんであんたはいつも毎度毎度そんなデリカシーない発言するのよ!!! 死ね百回ほど!!」
「まぁまぁ、私も似た者だ。気にするではない」
「サラッとなに暴露してるの!?」
なるほど、癖が強すぎて卒業出来ない問題もありそうだな。
「先生、私寝たい」
「え? あぁ…もう少し起きてくれないか?」
「むー、なら先生が私の枕になって」
「え、いやそれは……」
女子の視線が痛い! なんか物凄い殺意剥き出しだ!? やばいやばい、これはやばい!!
「先生、私が連れていくから……ね?」
「は、はい」
「大丈夫、私達はロリに手を出したら容赦しないだけだから」
「な、なんか怖いよ……?」
「センセー、早速女子に狙われてやがるなー」
「それ言うぐらいなら助けてくれよ」
「やだ」
「てめぇ……あとで課題増し増しにしてやるからな!」
「な!? そいつはずりーだろ!!」
そんな感じで迎えた初日、ホームルームがようやく始まる。とはいえ一時限目を謎展開で奪われて二時限目からとなる。
生徒の名簿が書かれたノートを開く、出席番号的に名前を一人一人読み上げる。
「えーと、エレクレール・アルト」
「うす」
「次は、アネモス・ラウナ」
「はい」
「…もしかして妹さん?」
「はい、姉は二回戦で負けました。よくわかりましたね」
「雰囲気似てるけど、髪とか少し違うからな」
「ふふ、ありがたいお言葉です」
「次は、エルデ・ルミナス」
「僕だね」
「次は、クロノス・ルナ……」
「さっき、シエルが保健室に連れていったぜ」
「じゃあの子が、シエル・ルキナスか」
エレクレールがチャラ男でエルデが女子顔男子で、アネモスが凛々しい女子で、ルナがロリっ子でシエルが元気っ子女子か……覚えた。
「んでよ? なんの授業するんだ?」
「あぁ、君達の力を見たいから……ちょっと校庭に来て欲しいんだ」
「あん? だりぃな」
「ふむ、まぁ行けばわかるのだろうな」
「行こう」
「あ、武器持って来るように」
「わかりました」
生徒達を連れて広い校庭で立ち止まり後ろを振り返り「さて、ちょっとだけ肩慣らしに付き合ってくれないか?」っとニッと笑みを浮かべて言った。
「ハッ、誰がテメーの挑発になんか乗るかよ」
「ふむ、ならば私が……」
「オイ!?」
「武人なだけに、彼の力がどうも知りたくてな」
「へー、アネモスをやる気にさせるなんて珍しいね? けど、彼一般人先生だよね?」
「うむ、だが……少々気になる力がある」
「なんだそりゃ?」
「だから、私が確かめよう。それが何なのかを」
そういってアネモスは、持参した武器を袋から取り出した。薄い緑色の剣でゆっくりと構える。
俺は頷きケースから刀を取り出した、引き抜くと白銀の刃でありながら鋭さがない。
「なんだあの武器……?」
「東洋ではカタナと呼ぶらしいよ」
「ふーん。けどよ、刃ぽさないよな? 鋭さがどこにもない」
「切るつもりがないとか?」
「舐めてんのかあのセンセーはよ」
特注らしいけど、動力の刀も悪くなかったけど流石に鈍器のようななまくらには出来ない。
しかしまぁ、手にした物ならなんでも物理チートになるし……触れた地点で発動条件満たすけどちょっとばかり武人からしたらそれは失礼かもな。
「ふ、私を見くびるなよ? そのような武器で戦えるはずがない」
「いや、これで十分さ。その鋭さがある武器手にしたら真っ二つに出来る」
「ふむ、闘気、心意気上等……では参る!!」
アネモスは素早く、動き間合いを詰め寄る。
俺はじっと動かず、刀を握りしめたまま眺める。
「新風刃連斬!!」
無数の風の刃が至近距離で放たれる、俺はここで刀を一振する。地表の塵が舞い上がりアネモスの技は粉砕された。
「え?」
「まじかよ、アネモスの技をたった一振でぶっ壊した。至近距離で躱せない奴はいなかったぜ……」
「それだけじゃない、地表すら軽く削ってる。流石に笑えないかな」
俺はゆっくりと刀を構えた、アネモスの動きを探り
足音で位置を確認する。
風だけあって速いな、けど武人という視点からして読み合いが正しければ……背後か!
キイィン! っと音が鳴り響く、互いの武器が交差して火花を散らした。アネモスは少しばかり驚きながら「お見事……!」っと賞賛を口にした。
「流石武人、姉に劣らずかなりの実力があると感じた。だが同時に、迷いも感じたぞ?」
「それは……!?」
「手が震えてるのが何よりも証拠さ」
「ぐっ……」
俺は押し弾いて、刀をゆっくりと鞘にしまった。
アネモスは理解できない顔を浮かべながら「な、なぜ武器をしまうんですか!?」っと言い叫んだ。
「迷いがあるうちは、俺と対等に戦えない。 それが何なのかは知らない」
アネモスは、そんな俺の言葉を聞き入れないまま武器を握りしめて走ってくる。襲いかかる勢いで剣を振りぬくが、簡単に躱して足を引っ掛けるて転ばせた。
「だから、今じゃ無理だって言ってるんだ。 突き放したように聞こえてるかもだけどな、そんなつもりじゃない。その原因が知りたいだけだ」
アネモスは、ゆっくりと立ち上がって俺の方を向いた。その表情はかなり悩んでるのと今にも泣きそうな眼差しでありいつもの凛々しさがどこかに行ってしまったようなギャップを感じた。
「わ、私は……弱い。 だから、いつまでも勝てない。もう全てが嫌なんだ、この世界も。大義名分? そんなのがあるから私は……!」
「アネモス……」
「何も分からないでしょ? 貴方は一般人で、私は貴族……背負う壁の高さが天と地ほど違う。 生きる意味があるのかさえも」
アネモスは、校庭を走って学校へと戻っていく。
どうやらかなり悩みが深そうだ、自分という肩書きが何処にあるのか? 期待に応えなきゃならないとか。 自分で耐え切れなくなって来てるのかもな。
そんな後ろ姿を俺はじっと眺めていた。




