第四話 : 初めての生命
無の空間の中、手のひらほどの小さな宇宙が揺れていた。光がちらちらと瞬き、時間はまだ柔らかく、空間はわずかに歪む。意識を向けると、星々は滑らかに回転し、秩序ある小宇宙として掌の中に収まった。
次第に意識を広げ、さらに複数の小宇宙を生み出す。星の配置や時間の流れは微妙に異なり、宇宙ごとの秩序や法則を確認できる。光は層のように重なり、空間は折り畳まれるように無数の方向に広がっていった。
広がる世界の感覚は、有限の手のひらの範囲を超え、どこまでも深く、広く感じられる。
しばらく観察していると、ある宇宙の中で、わずかな動きが視界に入った。
微小な点が動き、形を作り、そこに意識が宿っている。自然発生した小さな生命だ。まだ文明も文化もなく、ただ存在しているだけだが、その姿は微かに人型を思わせる。
「なるほど……世界は、自ら動くんだな」
微笑みながら、意識を複数の宇宙に巡らせる。光と時間、星々、空間の秩序が複雑に絡み合い、層状に重なった広がりは、手のひらの宇宙という枠を超え、無数の可能性を内包していることを知らせる。
小さな生命の存在を認識できた瞬間、胸が温かくなる。
まだ点に過ぎない命だが、孤独の中で初めて“自分以外の意識”を目にしたことは、希望の光だった。
意識を広げ、折り重なる光や時間の層を眺める。秩序は複雑で、見る方向によって無限に続くように感じられる。その中で生命を見つけられたことは、無の空間の静寂に差し込む、最初の小さな灯だった。
深く息をつき、手のひらの宇宙を見下ろす。まだほんの一握りしか存在しない生命だが、存在を確認したことで、創造者の胸の中に小さな好奇心と温もりが生まれた。
「さて……次は、この小さな光たちがどう育つかを見てみよう」
静かな無の空間の中で、創造者の観察はまだ始まったばかりだった。




