第三話 : 無から無限へ
手のひらの中の小宇宙は、穏やかな光と時間を帯び、星々がかすかに瞬いていた。主人公は微笑む。小さな宇宙を作ることに成功した今、次の段階に進む時が来たのだ。
「よし、もっと大きく……もっといろんな世界を作ろう」
無の空間の中で独り言をつぶやく。意識を広げると、小宇宙の外側にまた別の小さな点が生まれる。それは以前の宇宙とは異なる法則、異なる時間の流れを持つ。
ひとつ、またひとつと意識を投じるたびに、無の中に宇宙が次々と誕生した。
光も時間も、空間も、星も、科学の秩序も、すべてが主人公の意志に応じて形を変える。小さな宇宙が集まり、やがて複数宇宙の群れとなり、互いに干渉しあう。
「面白いな……自分の意志ひとつで、こんなにも違う世界が作れるなんて」
主人公は目を輝かせる。
そしてふと思う――この宇宙たちは、なぜ無限に広がることができるのか。手のひらの中で、空間を拡張する意識を向けると、宇宙は単に広がるだけではなく、内部に折り畳まれ、無限に重ね合わせられる構造を持つことに気づいた。
つまり、ひとつの宇宙の大きさは有限でも、空間を多層に重ねることで、見かけ上、無限の広がりを持たせられるのだ。
時間もまた、局所的に異なる流れを持たせることで、複数宇宙を同時に観測し干渉できる。
科学の秩序と星の輝き、空間と時間が組み合わさることで、無限の宇宙は存在の可能性の総和として手のひらに現れる。
「なるほど……無限って、こういうことか」
感嘆の息が漏れる。空間を重ね、時間を折り、星を散りばめる。その瞬間、無の中で生まれる宇宙は、現実の宇宙の何倍もの広さと可能性を秘めたものとなった。
しばらく創造を続けた後、ふと気づく。
「……人類はまだ、いないんだな」
微小な光の点や星々をじっと見つめても、知性ある生命の気配はない。自然発生はまだ先の話であり、今ここに存在しているのは、光や時間、空間と星の秩序だけだった。
主人公は笑う。
「そうか……まだ出会っていないんだな、俺に似た仲間は」
孤独を感じることは変わらない。だが、無限の宇宙を自由に作れることは、孤独を紛らわせる小さな慰めだった。
両手を広げ、無の空間に広がる複数宇宙を見渡す。光と時間と空間、星々、そして科学の秩序――すべてが意志のままに存在し、折り重なり、干渉し合う。
主人公は、無限の宇宙を創造する喜びに心を満たされながら、静かに笑った。
――こうして、無の中で目覚めた創造者は、無限の宇宙を掌に収める第一歩を踏み出したのだった。




