4つの水晶と竜の眷属
雷狼を倒した俺は、アルデー雷雲内部を探索していた。
「果たして何が高ランクの魔物の発生の原因なのだろうか」
途中、俺は幾度もそう考えた
周囲を見る限り、魔物を生み出すような生物は居ない
「にしても、ここには何故飛行系の魔物が居ないんだ?」
通常魔物は空にも居る
代表的なものが
パリキートや、ヘロストークだ
パリキートは、中型の魔物で、死角から掴み掛かり、空へと連れていく、別名“初心者狩り”と言われる
ヘロストークは、1mを超える大型の魔物で、よく食用として出回る
その羽毛は岩より硬く、生半可な攻撃ではびくともしない
どちらも冒険者には広く知られる
それらが居ないというのはいくら雷雲の中といえどもおかしい
俺がそう言って空を見た時、突然上から黒い影が現れた
「飛行系の魔物が居ないのはお前のせいか…」
俺はそう言って影の正体を見た
「ライトニングワイバーン」
ライトニングワイバーン
A +ランクの竜型の魔物
ワイバーンの亜種
その体は流線形に近く、飛行速度を底上げする
しかし一番厄介なのが種族固有スキル【天雷】だ
【天雷】
対象に向かって複数の雷を発生させる
当たると動きが阻害される
落とすのではなく、その座標に発生させるため、防御を貫通してくる厄介なスキルだ
飛行能力との組み合わせにより、上空から一方的に攻撃をする事が出来る
通常であればまず勝てない相手だろう
あぁ、通常ならな……
俺なら【空力場】により、空中で行動が出来る
ワイバーンの上空というアドバンテージも関係ないのだ
ライトニングワイバーンは早速【天雷】で行動を阻害しにかかる
しかし、俺は魔力を感じ取って避ける
だが、それはライトニングワイバーンも想定内だった
俺が避けた先に噛みつこうと構えていたのだ
本来であれば全力で避けるだろう…しかし、今回は俺にとってあまりにも……
「都合がいい」
俺はそのままライトニングワイバーンに噛みつかれ、上空に連れ去られる
しかし俺は何も問題がなかった
【治癒鎧】によって牙は刺さっていない
噛みつかれた際の衝撃も既に回復している
そして何より……
ライトニングワイバーンの喉を捉えている
俺はライトニングワイバーンの喉に手を向けてこう唱えた
「結界付与【爆樹】」と…
自然魔法【爆樹】
樹木を相手に飛ばし、爆発させる魔法
その威力は炎熱系魔法の上級に匹敵する
俺は【爆樹】を付与した結界をライトニングワイバーンの体内に貼り、魔法が発動した瞬間に結界を解除したのだ
ライトニングワイバーンは内部から爆ぜて、墜落した
「いい自然魔法の実験台になったな」
俺は原型を留めず、見るも無残な姿になったライトニングワイバーンを見てそう言った
〜〜〜〜
俺は相変わらず探索をしていた
途中【空力場】で、内部空間の構造を確認したが、中心は黒雲に遮られて見えなかった
どうやらこの空間は黒雲で分かれているみたいだ
黒雲は結界でも通り抜ける事が出来ず、解除されてしまった
恐らく“反魔法”の力があるのだろう
まず今俺がいる場所
ここは内部空間の中でも最も外にある
円の中心が切り抜かれたような形状をしていて、雷雲の内部なのにも関わらず、そこには植物が生い茂っていた
更に内側には何があるのだろうか
俺はそう思いながらも探索を続けていた
すると、内側にあるであろう層との境界線上に謎の扉を見つけた
その扉は一見ただの豪華な扉だが、中心には4つの窪みがあった
何かを嵌めるのだろうか
俺がそう考えていると、目の前から石板がせり上がって来た
そこにはこのように書いてあった
“雷電竜王”ライシェンの領域を目指すものよ
竜の眷属を打ち倒し、4つの水晶を集めよ。さすればこの扉は開かん”
そこにはそう書いてあった
“竜の眷属”というものを倒せば水晶を手に入れる事が出来るらしい
俺は竜の眷属を見つけるために、また探索を始めた
〜〜〜〜
……竜の眷属らしきものは見つからなかった
何か仕掛けがあるのだろうか
俺は今までに見つけたものを思い出した
大きな湖
端から端まで続く渓谷
4つの山
ん?
4という数字
これは必要な水晶の数と同じだ……
(もしや、ここに何かが…)
俺は何か怪しいと思い、この層に4つある山を目指すこととした
◇◇◇◇
『もう竜の眷属の居場所に気づいたか!此奴は余を少しは楽しませてくれそうじゃの』
雷雲中央の領域“雷晶の祭壇”で雷電竜王ライシェンはそう語る
『人が来るのは久しぶりですからね。前回の人はすぐ死んでしまいましたし、今回には期待ですね」
竜の眷属が一角“東雲電龍デライン”は言う
『でも今回の奴はしぶといぞ……果たしてお主に倒せるかのぅ?』
ライシェンは囃し立てる
『ここで負けては龍を名乗れません。それに私が人如きに負ける訳が無いでしょう』
デラインは当然だと言う
『余はお主の実力を見込んで竜の眷属とした。余の期待を裏切るでないぞ…東雲電龍デライン…』
『……ご期待には必ず応えて見せます!!』
ライシェンの言葉にデラインは慄きつつもそう返した
その言葉には今までデラインが感じたことの無い程の重みがあった……