大樹の枝葉
すいません。あらすじと第一話の内容を少し変更しました
フォレイガーの切断された首が転がった
「俺は生き残ったのか…」
生の実感とはこのようなものだったのか
フレイド、レイン、カーラ…仇は討ったぞ…
俺が感傷に浸っていると突然フォレイガーの死体が光り出した
もしや、まだ生きていたのか!?
俺はそう考える
しかしそれは杞憂だった
光り出したフォレイガーの死体は、木の枝に変化したのだ
「これは木の枝……?」
俺がそう言って木の枝を取ったその時…
《大樹の枝葉を検知しました。吸収を敢行しますか?》
頭にそう言葉が流れてきた
「大樹の枝葉?しかも“吸収”? どういう事だ」
大樹の枝葉って、あのオールト大森林の大樹か?
俺はそう疑問に思いながらも吸収を選んだ
すると手から大樹の枝葉が消えた
《吸収率0%、1%〜》
どうやら時間が掛かりそうだ
俺はその時間をスキルの考察に費やす事にした
〜〜〜〜
《吸収率99%、100% 吸収が完了しました。素材の解析を始めます》
《解析が完了しました。【創造結界】に《付与効果》が追加されました。《付与効果》に【自然魔法】が追加されました》
おい、待て待て、情報量が多すぎる
というか結界の《付与効果》って結界で魔法が使えるっていう事だよな
相手を結界に閉じ込めれば魔法が使えるんじゃないか?
結界の可能性が広がるな
俺はそう思いながらも、山を下ってギルドに依頼達成の報告をしに行く事にした
◇◇◇◇
『まさか、スキルが進化した直後にフォレイガーの分身体を倒すとは…やりますねあの者は…』
創造主はそう言った
フォレイガーが生み出されたのは数百年前…
そう、フォレイガーはあの破壊者が死に際に生み出していった生物の一つなのだ
フォレイガーは人たちの中では森の守護者などと言われているが、実際は違う
創造主にとっては、勝手に森を占拠した異物なのだ
フォレイガーが森を占拠した理由は大樹にある
大樹は、この世界の始原の七秘境の一角であり、強大な力を有するからだ
本来大樹から溢れるエネルギーは世界のバランスを整えるのだが、そのエネルギーもフォレイガーによって吸収されている
元々フォレイガーなどの七天魔は、属性を持たない唯の魔物だった
しかし、始原の七秘境のエネルギーを吸収する事によって、変質化してそのエネルギーと同じ力を使えるようになったのだ
創造主は直接世界に影響を与える事が出来ない
他の生物を経由してしか関与する事が出来ないのだ
『私にとって邪魔な奴らを倒してくれると幸いですね』
◇◇◇◇
俺は今ドルフェンのギルドの前に居た
何故中に入らないのか…
それは今回の事件の内どれを報告するかだ
フルミスリルスライムを討伐した事と、仲間がフォレイガーによって殺された事は絶対に説明するが、“何故俺が生きて帰ってきたのか”については説明に困る
俺が偽物とはいえ倒してしまったからだ
フォレイガーから逃げ切るのは至難の業
それが一般常識だ
それなのに『倒して来ました』と軽々しく言ったら大問題だろう
まぁAランクパーティだったから逃げ切った可能性も考えてくれるだろう
俺はそう考えてギルドに入った
ギルドはいつも通り騒々しい
酒場が併設されているからだ
いつも冒険者たちが宴などで騒いでいる
「すまん、ギルドマスターに用があるんだが…」
俺は受付嬢に言った
「あれ? あなた〈蒼天の剣〉のゲインさんですよね、仲間はどうしたんですか?」
「それも含めて、だ。ギルドマスターと話をさせてくれ」
「は、はい! わかりました!」
受付嬢はそう言って奥へ走っていった
しばらく待つと受付嬢が慌てた様子で戻って来た
「ゲインさん、ギルドマスターの許可が出ました。案内します」
俺はそう言われて付いていった
受付嬢に付いていくとそこには見知った壮年の男が居た
ここ冒険者ギルドドルフェン支部のギルドマスター、カイル・ガーテンだ
「久しぶりだなゲイン。今回は何の用だ?仲間も居ないようだけどな」
会って早々、カイルはそう言った
「あぁ…今回俺が話したかったことは、俺ら〈蒼天の剣〉が俺を残して全滅した件についてだ」
俺はそう言った
「ほぅ…あの〈蒼天の剣〉がお前を残して全滅か……何に遭遇した?」
「フォレイガーだ」
カイルの質問に対して俺は簡潔に答えた
「フォレイガーから逃げるのは至難の業だ。あいつの速度は異常だからな。それなのに何故転移を持たないお前が生き残れた。見逃されでもしたのか?」
「あぁ、倒した。偽物だけどな」
俺が軽々しくそう言ったがカイルは反応しなかった
「………ハッ!!すまん気を失っていた…それで偽物だったとはどういう事だ?」
どうやらあまりのショックに気を失っていたようだ
そして、偽物だった事への説明を求めて来た
「俺がそいつを倒した際、そいつが木の枝に変化した。多分分体か何かだったんだろう」
俺は大樹の枝葉については秘匿した
しかし、俺がフォレイガーを倒した事を言ってしまった
「頼む、俺がフォレイガーを倒した事については秘匿してくれ…こちらも力を誇示したくはない」
「……お前の頼みだ 善処しよう」
俺の頼みをカイルはあっさり承諾してくれた
しかし、何か怪しい…
「その代わりにだ、お前にはその力で、“アルデー雷雲”の調査を行って欲しい」
カイルはそう言った