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絶望と渇望 其のニ



細切れになったカーラ()()()()()は崩れ落ちて辺りに散乱した


「そんな…」


レインは長らく行動を共にしてきた仲間の突然の死に動揺する



フォレイガーはその隙を見逃さない

レインの居る方へと接近する



しかしこちらもそれを読んでいたフレイドが剣をフォレイガーに向かって振り下ろす



「グァ!?」


その剣筋はフォレイガーの今まさに振り下ろそうとしていた爪を()()()()()()()


フォレイガーの爪が一つ地に落ちる


フォレイガーはそれと同時に後退した

先程までは「矮小な生物」だと思っていたのが初めて()()()()()()()()()()()と認識を改めたのだ


◇◇◇◇


元々フォレイガーの生息地は、都市ドルフェンのあるソルケン王国とその隣国マルナス帝国の国境近辺に広がる禁足地、オールト大森林の中央部にある大樹である



基本的にフォレイガーはそこから動こうとしない

守りの守護者としての責務を全うするためだ



そのため、フォレイガーを見かけることは普通はあり得るはずがないのだ



では、何故現在フォレイガーはゲインたち〈蒼天の剣〉の居るソレット山脈に居るのか…


…いや実際に居るわけではない



本体は今でも大樹の前に鎮座している



本体は多くの分身体を操って外の情報を得ている



つまり現在〈蒼天の剣〉が戦っているフォレイガーもフォレイガーの本体が生み出した分身体の一つに過ぎないのだ


しかし、情報を得るにあたっての懸念点が一つある

それは分身体が倒される事だ



基本、分身体は本体より大きく力が劣る


倒されてしまうと、この分身体の原料となっている()()()()()が人の手に渡ってしまうのだ


人間を自然を破壊する敵として見ているフォレイガーとしてはそれは絶対に避けたい


そのため、分身体が倒されることへの対策として一時的に本体と同等の力を得る術がある


それが…



◇◇◇◇



「グオォォォ!!」


フォレイガーはそう叫ぶと共に変化を始める

元々緑だった毛がうねり、白く染まる


更に、何も無かった頭頂部から一本の光り輝く()が現れた

そこから放たれる神聖なオーラは、周囲の植物を成長させ、一瞬で高さ50メートルを超える木が広がる大森林へと変貌させた


この間、実に10秒                        


「なんだ!?」


短時間で起きた突然の出来事にフレイドは驚愕する



◇◇◇◇



これこそ、フォレイガーの分身体が一時的に本体と同等の力を得る術


“聖獣化”だ



この技を使うとフォレイガーの分身体の存在エネルギーが大幅に減少し、技の効果が切れると分身体の戦闘が不可能になってしまう



しかし、その分与える影響は申し分ない

フォレイガーの本体の持つ成長の力を得るのだ

この力は植物の成長を早めるだけでなく、植物の損傷を再生することが出来る

しかも、この力はフォレイガーの分身体にも作用する


つまり、フォレイガーの分身体は傷を負っても、すぐに回復することができると言う事だ



◇◇◇◇



突然フォレイガーが淡い光に包まれた


「フレイド! あれを見ろ!!」


俺がそう言って指を指したのはフォレイガーの前足だ


よく見ると先程切り落とした爪の部分が再生してきている



「あいつは回復能力すらも持ち合わせているのか…俺たちはとてつもなく厄介な存在に目をつけられたみたいだな」


フレイドが言う



するとフォレイガーがその場から()()()



そう消えたのだ



フォレイガーの姿は、着地の衝撃によって散る葉などでしか確認することができない



しかしそこからフォレイガーが縦横無尽に森林を駆け巡っていることがわかる



通常だと、このまま姿を捉えられずに狩られるだけだ



しかし、俺には【結界】がある

結界を俺たちの周りに貼れば破壊の際に動きが止まるだろう



「【多重結界 同時展開】」


俺は多重結界を同時に展開し、結界の厚みを増した



相変わらずフォレイガーの姿は見えない

機会を探っているのだろうか



そうしていると、唐突に地面が揺れ、うねり始めた

立っているのもままならない



これはフォレイガーの自然魔法の一つ

【木動】だ

どうやら地中の木の根を操って地面を揺らしたらしい



【木動】


木を自由自在に操る魔法

相手を拘束したり、移動に使ったりと万能な魔法だ



結界は、【木動】によって操られた木の根によって、少し浮き上がった



その隙を見逃すフォレイガーではない




フォレイガーは結界の下に入り込み、体当たりをして上空に結界ごと俺たちを打ち上げたのだ



「これはマズイ!!」



俺は咄嗟に結界を重ねたが、その時には既にフォレイガーは俺たちの()に居た



「ドゴオォン!!!!」



気づけば俺たちは地上に居た

フォレイガーに叩き落とされたのだ


結界が落下の衝撃を抑えてくれたが、それでも全身が痛い



そんな満身創痍の俺たちの前にフォレイガーが現れた



『ヒトよ、ワレの敵トナッタコトを悔いて死ぬガヨイ』


「なっ…!?」


人の言葉を話しただと…

そんな事、前例が無いぞ…



「私達は敵ではありません!!これは誤解d…」


レインはそう言おうとして、フォレイガーに切り裂かれた



『ヒトは皆ソウイウ、ソノヨウナ根拠ハ何処ニモナイでアロウニ』


フォレイガーは俺たちを生かすつもりは無いらしい



「うおぉぉ!!!死ねぇぇぇ!!!」


その言葉を聞いたフレイドは狂乱し、フォレイガーに斬りかかった


『ヒトハヤハリ愚カダ、死ガ目前ニナリ、正気ヲ失うトハナ』


フォレイガーは呆れながらフレイドの頭を押さえつけた



「離せ!!! 離せぇっ!!!」



『其方ニハ黙ッテイテ貰オウカ』



グシャッ!!



フォレイガーがそう言うといとも簡単にフレイドの頭が潰れ、辺りが血まみれになった




『最後ハ其方ダナ、セメテモノ情ケダ、楽ニ死ナセテヤロウ』


そう言ってフォレイガーは一歩ずつゆっくりと、まるで俺に残された少ない時間を嘲笑うかの様に近づいて来た



死ぬのか?俺は


それも()()()奴にか?


そんな事許せるわけがないだろ…


俺は絶対に生き残るんだ


他の奴に殺されなどされない


生きたい


生きたい!


生きたい!!



そう…正にそれは絶望による生への渇望だった…










《スキル【結界】が、【創造結界(ザ・クリエイト)】に進化しました》












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