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絶望と渇望 其の一



Aランクパーティ〈蒼天の剣(プロミネンス)〉は冒険者ギルドの依頼で、都市ドルフェンの北にあるソレット山脈に現れた魔物の討伐に向かっていた


「今回の討伐対象はフルメタルスライムか、少し厄介だな…」


「何度も戦ってるけど、あの硬さと素早さは慣れないね」


このパーティのリーダーの「魔剣師」フレイドの言葉に「氷術師」レインがそう返す


「でもリーダーの魔炎剣ならフルメタルスライムくらい一撃でしょ?」


「治癒師」カーラが不思議そうに言う


「一撃でも当たらなければ意味が無いよ」


俺 「結界師」のゲインは言う


今回の討伐対象 フルメタルスライム

B +ランクの魔物

その表皮は鋼鉄並に硬く、伸縮性がある

その伸縮性を活かした高速移動は常人には姿さえ捉えられない


確かにフレイドの持つ魔炎剣ブレイズはミスリルすらも容易に溶断する

しかし、フルメタルスライムの素早さの前では当たることすらも難しいのだ


「…にしてもBランクのフルメタルスライム相手にBランクパーティ2組が共闘したのにも関わらず、Bランクパーティ側は全員再起不能か」


普通B +ランクと言えど2組のBランクのパーティには勝てない

それなのにBランクパーティはフルメタルスライム相手に敗れた

これは何かがおかしい


その時、


「…!?」


突然付近に気配を感じた

その瞬間俺は「結界師」の固有スキル【結界】をパーティの周囲に展開した


【結界】

結界師にとっては基本中の基本のスキルだ

対象の周囲に魔力を変質化させた壁を作り出す

その硬度は鉄と同等だが、ダメージを受ける程脆くなるという弱点もある

同時展開も可能だが、普段は使うことはない


「フルメタルスライムだ!!」


視界に映った影を見て、咄嗟にそう叫んだ


実際そこにはフルメタルスライムが居た

しかし俺たちが見たことのあるフルメタルスライムとは少し見た目が違った

全身がミスリルで出来ていたのだ

フルメタルスライムでは無い…フル()()()()スライムだ


フルミスリルスライムはAランクの魔物だ

表皮がフルメタルスライムよりも更に硬くなり、速度も速い


フルミスリルスライムは移動の慣性を利用した突撃で結界を破壊しようとした


パリンッ!!


結界はフルミスリルスライムの攻撃を受け切れずに破壊されてしまった


「【氷壁】!!」


フルミスリルスライムが結界を破壊した際に出来た一瞬の隙を突いてレインが得意技でフルミスリルスライムを氷の壁で囲う


【氷壁】


氷を対象の周囲に生み出して動きを制限する魔法

氷魔法の中でも使いやすく、魔力消費が少ないのが特徴だ



「今です!!」


レインがそういうと同時にフレイドがフルミスリルスライムに向かって走り出す


しかしフルミスリルスライムはそれ程甘い相手ではなかった

跳躍して氷の壁を飛び越えたのだ


「なっ!?」


自分の得意技に一瞬で対応されたレインは驚きを隠せなかった


フルミスリルスライムはその隙を見逃さずに、種族固有スキル【聖銀剣】で、短剣を生み出して剣を一度振るった


固有スキル【聖銀剣】

魔力を凝固させてミスリルをも凌ぐ硬度の剣を作り出すスキルだ


フルミスリルスライムが剣を振ったその余波で、周囲の木が細切れになり、森林が消滅した


「ぐっ!!」


余波に巻き込まれたレインは吹き飛び、全身を強打した

このままではフルミスリルスライムの餌食になってしまうだろう


俺がレインの周囲に【結界】を展開しようとするも、それより素早くカーラが動いた


「【聖光】!!」


【聖光】

治癒師が得意とする神聖魔法の中でも治癒力に特化したスキルだ

連発は出来ないが、その分効果は高い



それにより傷は完治し、レインは動けるようになった


レインにとどめを刺そうと接近していたフルミスリルスライムをレインは捉えた


「今度こそ捕らえる!【氷獄】!!」


レインは自身の切り札とも言えるスキルを使用した


【氷獄】

対象とその周囲を凍らせ、対象を動けなくするスキル

硬度も申し分無く、フルミスリルスライムといえど簡単には抜け出せない


「終わりだ!!【蒼天の剣(プロミネンス)】!!」


フレイドが、スキルを発動させ、身動きの取れないフルミスリルスライムを仕留めに掛かった


蒼天の剣(プロミネンス)

魔炎剣ブレイズを持つことにより使用出来るスキル、

その瞬間のみ、魔炎剣の温度を通常のニ倍にまで引き上げ、敵を溶断する

このパーティの名前の由来となったスキルだ


スキル【蒼天の剣】によって温度が引き上げられ、青白く燃え盛る剣が、フルミスリルスライムを氷ごと溶断した


フルミスリルスライムは内部から沸騰し、断末魔を上げることなく絶命した


「これで今回の依頼は達成だな」


フレイドがそう言ったそのとき…


フレイドの後ろから()が飛び出して来た


フレイドは身を捻って回避を試みるも避け切れず、脇腹を光が貫いた


「あれはなんだ…!?」


俺が向こうを見て言う

そこには()が刺さっていた

しかし、よく見るとそれは光では無く、()だったのだ


もしや…


その予感は的中した


現れたのだ


()


「あれは…フォレイガー」


フォレイガー

Sランクの魔物

その命の全てを自然のために使う自然の守護者

非常に気高く、他の生物が近づく事を許さない

自然魔法を使用し、敵を打ち滅ぼす

森林を切り開いて都市を作らないのもコイツの怒りを買うからだ



「なんでここにフォレイガーが居るの…⁈」


「フルミスリルスライムとの戦闘で、森林が消滅したのに反応したんだ!!」


…これはマズイ


フォレイガーを倒すのは不可能に等しい

怒り狂ったフォレイガーは国すらも簡単に滅ぼすからだ


そのように思考を巡らせていると、フォレイガーが襲いかかって来た


「【多重結界】!!


俺は咄嗟に一番丈夫な結界を張った


「グルゥ!!」


しかしフォレイガーは爪を振り下ろして簡単に多重結界を破壊した


やはり敵わないか…

フォレイガーの爪は伝説級の金属アダマンタイトと同等の硬さだと言われている

結界が敵うわけが無い


そして障害の無くなったフォレイガーは走り出した


治癒師(カーラ)の方へと…


まさか奴は分かっているのか?

誰が敵の()かを…?


「カーラっっ!! 逃げろっ!!」


カーラはこちらに振り向く…

…と同時に()()()になった





















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