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32話 会談


 相変わらず、俺達は魔獣の森から溢れ出た魔獣を駆除していた。小規模な森を2つ消滅させた俺達であったが、多くの魔獣は直径15km以上の大きな森から出て来る。故に、俺達の出動回数は大して減ってはいなかった。


 しかし、アナハタ(胸のチャクラ)まで開いたおかげで、俺の身体能力は飛躍的に向上し、また、小鳥遊先輩の身体能力も、森を消滅させる毎に上がっていっているようなので、今や熊の魔獣と出会ったところで、指一本で対処できるため、労力としては大幅に減っている。


 ただ、それでもウルズ達の戦闘力には及ばない。


 彼女たち単体の時も侮れないが、連携した時の戦闘力は脅威の一言だ。


 故に俺達はもっと連携を高めるべく、土曜日の午後だけとは言わずに、土曜日丸ごと使って実戦訓練が出来るように申請し……それは問題なく受理された。


 そんなワケで、俺達は大きな魔獣の森の外縁部で魔獣と戦い続けていたのだが、そこに突如としてスクルドが現れたのだった。


 俺達の前に現れたスクルドは最後に遭った時の威圧感が嘘のように消えており、かなり憔悴しているようだった。



「助けて……貰いたい。ウルズとベルザンディが暴走した。恐らくは森のヌシの魔獣核を口にした影響だ。侮っていた、我らなら御せると思っていたのだがな……」



 それだけ言うと、スクルドはその場に崩れ落ちた。どうやら演技というワケではなさそうだ。


 そのまま放っておいては魔獣に喰われかねない。俺達は連携訓練を中断すると、スクルドを拾い上げて魔獣の森から撤退した。



「今日は早かったですねぇ……って、うわぁっ、それってスクルドじゃないですか! た、倒したんですか!?」

「いや……元から弱っていたというか、助けを求められた」

「私たちにも何が何だか……とりあえず放って置くにもいかず、こうして保護した次第です」


 

 残念なことに、この場に居るのは3人だけだった。それだけ、俺達の戦闘力を信じてくれて放っておいていてくれるのは有難いが、こういう突拍子もないことが起こった時にどう対処すればよいのか見当がつかない。


 とりあえず、俺達は東堂教官に状況を連絡すると共に、治安部の寮へ向かうのだった。



---



「スクルドをとっ捕まえたと聞いたが……!! マジか、本当に本物じゃないか」

「虚偽報告はしませんよ。それよりは彼女、どうしたモノですかね」


 

 スクルドは未だ意識を取り戻していなかった。よほど疲れていたのか死んだように眠っている。とりあえず寮のラウンジにあるソファに寝かしているが、俺達は対応に困っていた。


 何せ、コイツ自身が人間兵器みたいなものだ。


 留置所など下手な場所に移して暴れられたりしたら止める術はないし、逃げられるだろう。これまた尋問しようものなら尋問官を殺して逃げられかねない。


 そんなワケで、戦力的に拮抗し得るだろう俺達が様子を見るということで、こうしてスクルドが目覚めるのを待っていた。



「……その判断は褒めてやろう。我が起きた時に下らぬ場所であれば、二度と貴様らに助けを求める事はなかったであろうな」

「目が覚めたか……捕虜のクセして態度のデカいやつだ。お前に聞きたいことは沢山あるが、緊急のヤツだけ早く確認したい。ウルズとベルザンディが暴走したってヤツだ。何があった? そして、これから何が起きようとしている?」

「そう急ぐでないわ……我が同胞であった者、彼女らが『鵺』の魔獣核を喰らって鬼と化したのは、貴様ら二人も見たであろう?」



 鬼……か。確かにあの時、二人の額には小さな角が生えた。その事を言っているのだろうか。



「それを我は単なる力の発現と見ていたが、彼奴等はその力に飲まれた。今は更なる力を求めて、魔獣核を喰らう鬼女と化したのだ」

「それは……!?」



 その果てにある結末を予想して、俺は総ての血が逆流するような感覚に襲われた。


 際限なく魔獣核を喰らい、成長していく魔人――それはもう誰にも止められない化け物だ。今だって倒せるかどうか分からないってのに、これ以上成長されたら本当に手も足も出なくなってしまうだろう。それこそ兵器を使っても敵わなくなるかもしれない。



「それで、彼女らは今、何処に居るんだ?」

「さてな……しかし、恐らくはお主らがいつも修練を行っている森、その中心部におる合成獣キマイラを目指しておるのではないかと思う。更なる力が欲しいと宣っておったからな」



 なるほど、あの森は直径15kmほどもある巨大なモノだ。そこに居るヌシも相当な力を持っているに違いない。そのヌシから魔獣核を抉り取って我が物にしたなら、相当な化け物が誕生するだろう。


 疑問があるとすれば、何故それをスクルドが止めようとしているのかだ。



「お前たちの目的からすれば、力があればあるほどいいんじゃないか? なぜ、あの二人を止めようとする?」

「侮るな! 我はヒトだ。我らの理想はヒトの意思があってこそ意味のあるモノ。それを力ありきで偶然に理想を体現してもそこに意味はない!」



 うーむ……良く分からないが、目的と手段が入れ違いになるという事を言っているのだろうか? それだったら多少は分かる。俺のG機能を説明した時、目的と手段が逆であったなら、治安部は空中分解していただろう。それを大事にしたいという気持ちは分かるつもりだ。


 さて、ではこれからどう動くべきか。やるべきことを煮詰めようじゃないか。


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