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27話 作戦立案


「なんというか……ボクら、このままでいいんですかねぇ」

「と、いいますと?」

「上に言われるまま、任務をこなす。それはそれで大事な事ですが……」

「ああ、分かります。わたくしたちにしか出来ないことがあるんじゃないか。そういう事を考えているのですね? アユミちゃんは」

「ええまあ……せっかく作ったこの前の報告資料は、役に立つ前に事件を起こされてしまいましたし」

「そうは言うものの、わたくしたちに出来ることと言えば、魔獣の駆除しか今のところありません。何か新しい情報なり、何なりが無ければなんとも動きようがないというのが現状です」



 確かにそうなのだ。どれだけ強大な力があろうとも、敵組織の全貌が明らかになっていない今、戦闘単位でしか役に立てない。いわば行き場の決まっていないミサイル。それが俺達の今の状況なのだ。


 いや――まてよ。



「小鳥遊センパイ、そして大島、今の魔獣駆除を極大にまで拡大してみる……と言うのはどうでしょうか?」

「それは……つまり、何を指しているんですか?」

「黒き森そのモノを消滅させるとか、どうでしょう? 連中への魔獣核の供給を止められるかもしれないし、黒き森がある一帯の安全を確保できるようになる! 出来るかどうかは別として試してみる価値はあるんじゃないかな!?」



 そんな提案に大島は呆れたような、しかし、面白いものを見つけたような表情になった。



「なんとまぁ、偶にシュウジセンパイは凄いことを思いつきますね。魔獣の森の消滅なんて誰もが望みながらもやった事がない大変な仕事ですよ?」

「ですが面白いですね、わたくしとシュウジ君ならやれるかも。少なくとも森の中心部に何があるかを突き止める事は出来そうです……意見具申してみましょう! 東堂教官に話しても難しいかもですが、栗田一尉なら話が通るかもです」



---



「なるほど、確かにそうだな。大きな森は無理だとしても、小規模の魔獣の森を探索してみるのは面白いかもしれん。その上で消滅せしめたら万々歳だ」

「しかし、栗田さん。こいつらの身の安全は保障できませんよ!? 何せ調査に行って誰も帰って来なかった魔獣の森なんです!」 

「分かっている。しかし、現状、取りうる手段がこれしかないのも事実だろう? 前政権の下では全てが後手後手に回って大きな失態を犯した。このままではその二の舞になる。こうして自身の身を顧みずに提案してくれたのだ。私としてはその意気を汲んでやりたい」



 おお、ダメもとで言ってみた作戦だが、意外に乗り気になってくれた様だぞ? ここはもう一押しと言ったところだろうか?



「あの、自分達、『アインヘリヤルの大量発生事件』で誰も救えなかった事を後悔しているんです。もう二度とあのような悔しい思いはしたくないと考えておりまして」

「なるほどな……あの時は人員も機材も足りず、誰も救えなかった。後手に回るという事はそういうことだ。それを今度は我々が先手を取る……悪くないんじゃないかな、東堂」

「それは……確かにその通りですが……」

「よし決まった! 決行は明日の12:00だ。明日の9:00までに必要な機材要望書と、作戦概要をレポートとして提出したまえ。それで実行に移る!」

『了解しました!』



 そんなワケで俺が提案した『魔獣の森の探索&消滅作戦』は、決行されることと相成った。すると――



『状況を打破する提案を行った事で、全員の好感度が大幅に上昇しました。アナハタ(胸のチャクラ)を開くミッションカウントを大幅に低減。黒き森を消滅させることでボーナスが与えられる事があります。是非ともこの作戦を成功させましょう!』



 なんと、黒き森――魔獣の森を消滅させる事でもミッションカウンターが低下するらしい。ずっと俺はこの機能をギャルゲー機能と呼んでいたが、もしかしたら……いや、そう考えるのは時期尚早だろう。そういう事を考えるのは実際に黒き森を消滅させてみてからでも遅くはない。


 俺は明日の作戦決行に備えて、小鳥遊先輩、大島と共に治安部部室で作戦を練る事にした。




---




 黒き森――魔獣の森が認識されるようになってから結構な年月が経過しているが、それが一体何なのかは全くと言って良いほど分かっていない。


 ただ、通常の野生動物よりも凶悪な力を持つ『魔獣』が生息しており、それが外へ出て来て被害をもたらす事だけは確かだ。それ故にフェンスや有刺鉄線で囲われているが、魔獣の外部流出は止められず、自衛隊の精鋭が中に入って間引くという事を行っている。俺達、治安部が土曜日の午後に行っているのもその間引く行為であり……それでも流出を止められずにいると言うのが現実である。


 これまでも調査は行われてきていたが、中心部へ近づけば近づくほど魔獣の生息率は高くなり、常時戦い続けると言う状況に陥る。そうなると弾薬も足りなくなって撤退せざるを得なくなる。


 その点、俺と小鳥遊先輩の武器は、自前の拳と切れ味が落ちない日本刀であるため、武器を失う事を恐れて戦い続けると言う不安が無い。


 問題は出現する魔獣の数に対して、俺達の体力が持つかどうかであるが……こればっかりはやってみない事には分からない。


 ただそれではあまりにも無謀なので、一応は次のように作戦を考えて作戦書を提出した。以下はその概要である。



【目標】

・魔獣の森の中心部に何があるかを確かめる

・可能であれば、森を消滅せしめる(中心部に核のようなものがあると推測)


【実行者】

・小鳥遊キョウコ

・進堂シュウジ

・大島アユミ(事前探知)


【手段】

・魔獣の森、突入前に大島の探知能力で生息する魔獣の数を可能な限り把握しておく。

・魔獣を駆逐しながら森の中心部へ向かう。


【補足事項】

・調査対象は、最も小規模な魔獣の森とする。

・戦う魔獣の数をあらかじめ決めておき、その数に到達したら撤退する。



 俺も小鳥遊先輩も死にたがりではない。自身のキャパシティを超えると判断したら即座に撤退する予定だ。故にこの作戦の要は、いかに大島が正確に魔獣の生息数をカウントできるかにかかっている。


「せ、責任重大ですね、頑張ります!」とは、大島の談である。


 そんなワケで作戦書を通した俺達は、魔獣の森の探索に挑むこととなった。


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