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17話 会敵


 それにしても気になるのは、結局この場に現れなかった3人だ。そいつらは今、何をしているのか。



「進堂! 片付いたのか!? ……これはまあ、しかし、なんとも派手にやったものだな」



 俺が倒した十人の内、特に四人は余裕が無くて魔獣核の摘出を手荒にやるしかなかった。そのことを言っているのだろう。


 あと、校舎に1発だけ流れ弾が飛んだ箇所は酷いことになっており、修繕工事に何日かかかるかもだ。


 しかし、会敵したすべての魔獣核の寄生者――この際、魔人と呼ぶ――は、全て倒したし、今のところは存命だ。褒められてもよい戦果では無かろうか。いや、それよりもだ。



「東堂教官、小鳥遊先輩や大島との連絡はつきませんか? 俺のスマホはさっきの戦いの衝撃でダメになったようで、連絡できないんです。とりあえず戦いが終わった事を連絡して、後片付けを手伝ってもらわないと」

「おお、そうか。そうだな。コイツらをブレードネットから外して早く運ばないと出血多量で死んでしまう。救急車の手配もしないとだ」



 そう言って、まずは小鳥遊先輩か大島に連絡しようとしてくれたのだが……。



「おかしいな……電話に出ないぞ、まさか」

「もしかしたら残りの3人と交戦中かも。俺が様子を見てきます」

「ああ、こちらの事は任せておけ」



 それだけ言葉を交わすと、お互いに頷いて、それぞれの仕事をすべく走り出した。



---



 中庭から治安部部室までの距離は約200m。それを俺はチャクラを駆使することにより15秒で駆け抜けた。そして――目の前では小鳥遊先輩が大島を背にして、何やら高級そうな薄手の服を着ている3人と対峙していた。



「おやおや、彼が来てしまったようだね」

「ッ!! シュウジ君、敵です! 貴方に向かった十人とは別の三人です。全員が全員、かなりの手練れですよ!」



 見たところ全員が女で、倒した十人とは違い理性があるようだ。何より違うのは魔獣核による寄生跡――瘤や太い血管がなく、普通の人と何ら変わらないところか。同じなのは強烈な敵意を放っている事だけだろう。


 俺は油断なく構え、その三人と対峙した。


 するとその内の一人が感心したように喋り出し、続けて他の二人も喋り出す。いずれも氷を想像させる冷徹極まりない声だった。



「これは驚いたね。覚醒の度合いが低い戦士階級エインヘリヤルの者でも数だけは揃えたのだ。彼を倒す戦力としては十分だと思っていたが」

「一応は吾輩たちの親とも言える存在だ。侮るべきではない」

「修正を加えなければ……この場は一旦引いて、確実な作戦実行を我は望む」



 その冷徹な殺意に肝を冷やしていたが、聞き捨てならない言葉があった。


 『作戦』だと……?


 彼女たちは単なる暴走した被験者だと思っていたが、作戦行動を取るという事は、戦略的な行動を取ることができるバックボーンがあるという事だ。そしてそれは俺達が想像していたよりも二段も三段も高い難事である事を示している。


 もしもだが、他国の諜報員とかであるならば、学生の身には余る事態だろう。



「……お前たちは、一体何者なんだ!? 何をしようとしている!?」



 俺の質問に対して、彼女たちは薄ら笑いを浮かべるだけであった。


 それならば強引にでも聞き出してやるとチャクラを回し始めると、脚に今までには無かった木枝が絡みついて動きを阻害された。そして、一人からは巨大な火球が、もう一人からは巨大な水塊が放たれ、俺に迫る。


 やっべえ!? ……動きを封じた上で水蒸気爆発を引き起こして吹き飛ばすつもりか!?


 俺は手にチャクラの力を集めると、脚に絡みついた木枝を手刀で切り払い、迫り来る火球に向かって先ほども放った双掌打を放ち、空中に弾き飛ばした。


 同時に迫り来た大水塊に押しつぶされて、ベキベキと肋骨が折れる音が響いたが、しかし小鳥遊先輩や大島と一緒に爆死するよりはマシだろう。反吐を吐きそうになりながらも、巨大水塊が通り過ぎるのを耐えきった。


 だが、流石にダメージが大きく、膝をついてしまう。


 くそっ、確かに小鳥遊先輩の言う通り、三人が三人とも凄まじい手練れだ。ただ力に振り回されていた先ほどの十人とは何もかもが違う。


 小鳥遊先輩と協力しなければ殺されるだろうが、大島を守りながら何処まで出来るか……。


 しかし、どうやら彼女たちにもう攻撃の意思は無い様だ。殺意を霧散させ、感心したように俺の質問の一部に答えてくれた。



「貴方の能力に敬意を表して名乗りましょう……妾はウルズ」

「吾輩はベルザンディ」

「我はスクルド」

『この世に混乱をもたらす者』



 それだけを宣うと、彼女らは踵を返して去って行った。


 ……北欧三女神の名を語るとは、真面目に答える気はないな。それにこの世界に混乱をもたらすだと? 何を言っているんだあいつらは? 今でも俺は絶賛、混乱中だと言うのにスケール感が狂う事夥しいぜ。


 だが、今は悪態を吐く余裕すらもない。さっきから全身が焼け付くように痛いのだ。



「ごめんなさい、シュウジセンパイ。ボクが足手まといになった所為で、って……す、すごい怪我じゃないですか! 腕が折れ曲がっていますよ、さっきの水塊をまともに受けたから!?」

「いえ、その前の大火球を弾き飛ばした時に折れたのでしょう。大水塊による怪我ですが何本かまとめて肋骨が折れていますね。それに水圧によって全身に細かい骨折をしたようです、早く病院に運ばないと!」



 なるほど、全身が痛いのはそれの所為か。


 痛みと疲労で急激に意識が薄れていく中、いつものポップアップが浮かび上がる。



『二人の命を救ったことで、大幅な好感度の上昇を確認しました。ウルトラスーパーフルアーマーヘビーデラックス・グッドコミュニケーションです。これによって次のマニプラ(鳩尾)のチャクラを開きました。早く習熟して次の戦いに備えましょう』



 だから、この状況でずっこけを誘うようなアナウンスは止めてくれっての!


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