はじまる結婚式
ガルフォードは城に行っているらしく不在だった。
ならばと、フェイルノートにミーシャのことを伝えることにした。
一旦、ガウェイン騎士団を後にしてお店へ戻った。
「ミーシャという女性騎士が怪しいです」
「なるほど。彼女は“やるしかない”と言ったんだな」
「この耳で聞きました。間違いないです」
「解かった。俺からガルフォードに言っておく」
「よろしいのですか?」
「任せてくれ。俺もミーシャに警戒するから」
「お願いします」
これでもう結婚式をぶち壊される心配はない。ライラの占いのおかげで幸せを掴めそう。
そして、ついに“その日”がやってきた。
わたくしは、まずお父様に会った。
「クリス、ついに結婚するのだな」
「はい。フェイルノート様と幸せになります」
「そうだな。フェイルノートならきっとお前を幸せにしてくれるであろう」
お父様は寛容に認めて下さった。
結婚式にも出席してくれることに。
それから大叔母様も。
「ついにこの日が来たのね、クリス。幸せになりなさい」
「大叔母様……」
「フェイルノートは、あなたにこそ相応しいでしょう」
と、今までまったく認めようとしなかった大叔母様が笑顔で、そう言い切った。これには、さすがのわたくしも驚いた。同時に、嬉しくもあった。
鬼のような大叔母様がここまで言ってくれるとは。
「お嬢様。私はこれからも全力でお仕え致します」
「バルザック、あなたは最高の執事よ」
「ありがたきお言葉」
「でもね、知っての通り……“結婚式をぶち壊す者”が現れるらしいわ。バルザック、あなたの力も貸して」
「もちろんでございます。もしそのような輩が現れたら、直ぐに取り押さえますので」
「お願いね」
いよいよ教会へ向かう。
すでに新生ガウェイン騎士団の騎士たちが、数百人と囲っていた。いつでも戦闘態勢に入れるよう剣を携えていた。
とても厳重。
これなら、容疑者であるミーシャも簡単には襲ってこれないはず。
過去の被害を聞くと、魔法的あるいは呪術的な方法を使うらしい。なら、その瞬間を取り押さえるだけでいい。
こちらには見方は沢山いる。
きっと大丈夫。
結婚式が始まる前、ガルフォードが合流した。
「クリス様。お話は伺っております」
「今日はお願いしますね」
「もちろんです。しかし、あのミーシャが……」
「はい。彼女は確かに言っていたんです」
「……でも変ですね」
「変とは?」
「彼女は結婚しているはずなんです」
「え……」
詳しく聞こうとしたけれど、わたくしは呼ばれて準備を進めねばらならなくなった。
ウェディングドレスに着替え、結婚式へ。
フェイルノートも今頃は新郎衣装に着替えているはず。
そして時間になり、新郎入場からの新婦入場となった。となると、そろそろミーシャが動き出すはず。
最大限に警戒しつつ、通路を進む。




