謎の結婚指輪
「やはり……」
ガルフォードは、ウワサのことを知っていたようだった。
「ご存じだったのですね」
「ええ。ガウェイン騎士団でも調査をしているんです。ですが、犯人の特定までは……」
できていないと辛そうな表情を浮かべる。
そうだったんだ。
騎士団も、その犯人を追っていたんだ。
「魔法だとか呪いの類なのでしょうか」
「恐らくそうでしょう。魔力が微量だとすると感知するのは難しいのです」
「そうなのですね……」
「ですが、安心下さい。クリス様の結婚式だけは必ず守ってみせます」
「本当ですか」
「ええ。お任せ下さい」
巡回も強化するとガルフォードは約束してくれた。それなら、きっと犯人も出回りづらくなるはず。少しは安心かな。
「ありがとうございます」
「いえいえ。僕は、クリス様とフェイルノート様の幸せを願っていますので」
そう言ってくれて心の底から嬉しかった。
あとのことは騎士団に任せ、わたくしは帰ることに。
部屋を出て通路を歩いて門を目指している最中で、やはり女性騎士がこちらを見ていた。……なんだろう、居心地の悪さを感じるような。
あの女性騎士はいったい……何者なの?
あの方は以前はいなかったはず。
新人なのか、なんなのか。
妙な気持ちを抱きながらも、バルザックと合流。馬車へ乗って帰った。
* * * * * *
宝石店へ戻り、お店の扉を開けて中へ入ると、そこにはライラの姿があった。フェイルノートが対応していた。
「お買い上げありがとうございました」
「いえ。こちらこそ、良い指輪を見つけられて満足ですわ」
ライラはお店を出ていく。
わたくしの方を一瞬だけ、チラっと視線を向けて。
……?
「フェイルノート様、先ほどのお客様なのですが」
「ああ、近所の人らしいね」
「知っていたのですか?」
「いや、さっき自己紹介をね。クリスこそ、ライラと会っていたようだね」
「そうなんです。あの方が結婚式のことを教えてくれて」
「……なるほど」
「どうかしたのですか?」
「ちょっと気になってね」
「え。ライラをですか!?」
「違うよ。指輪だよ」
どうやら、ライラは指輪を購入したようだった。でも、それがまさかの『結婚指輪』だった。……ライラも結婚するということ?
そんな話は聞かなかったけどな。
「……誰かお相手がいるのでしょうか」
「分からないが。でも結婚指輪は普通、男性から女性に贈るもののはず」
「言われてみれば……変ですね」
「だから不思議だった。警戒はいておいていいかもね」
「そう、ですね」
まさかライラが?
でも、彼女はわたくしに未来を教えてくれた人。そんな結婚式をぶち壊すようなことをするとは思えない。
だとすれば、ガウェイン騎士団にいた……あの女性騎士?
うーん、探ってみるべきかな。




