君を愛しているよ
「クリス、君を愛しているよ」
「ありがとうございます、フェイルノート様」
帰宅後にフェイルノートは、わたくしを抱きしめて労ってくれた。
今日も陛下に勝ち、無事に帰って来れた。
「明日は最後のゲームだ。勝って終わりにしよう」
「そうですね。今度こそすべてを終わらせて幸せに暮らしたいです」
「うむ、そうだな。俺も騎士団長を引退して、クリスと共に人生を歩もうと思うよ」
「フェイルノート様! 嬉しいですっ」
最近、彼はわたくしだけのことを考えてくれるようになった。
これからのこと。
将来のことを見据えて。
そう、本来なら陛下のゲームがなければ、とっくに結婚して静かに暮らしていたところ。けれど、それは陛下が許さなかった。
あとは陛下さえ対処できれば、もう今度こそ阻むものはいないはず。
「……まあ、陛下との勝敗がどちらに転ぶにしても、どこかで暮らそう」
「もちろんです! わたくしは、いつだってフェイルノート様のおそばに」
「ああ。なにがあろうと一緒だ」
ぎゅっと抱きしめてくれるフェイルノート。
嬉しくて嬉しくて泣きそうになった。
もうすぐ。
もうすぐで幸せを掴めるはず。
* * * * * *
しばらくして、邸宅に久しぶりにガルフォードがやってきた。
「お久しぶりです。クリス様」
「あら、ガルフォード」
「グラストンベリー以来ですね」
「ええ。そっちは元気そうでなによりね」
「おかげ様で。ガウェイン騎士団の復活への道は険しいです。それにフェイルノート様自体も、そのつもりがないようで……」
少し元気のない声でガルフォードは事情を説明する。
多分そうでしょうね。
フェイルノートは、もうわたくしとの幸せを選んだ。だから。
「ガルフォード。あなたが騎士団長になりなさいな」
「え……僕が?」
「これからは、あなたのような強い騎士が必要です」
「いえ、僕なんてまだまだです」
「そんなことありません。あなたのおかげでグラストンベリーでは助かりましたし」
そう、彼がいなければ今頃わたくしは死んでいたかもしれない。命をかけて助けてくれた。それは事実である。
ガルフォードは、モルドレッド騎士団のメドラウトを取り押さえた。それはとても凄いこと。
だからこそ、わたくしはガルフォードを騎士団長にしたいと考えた。
「……考えてみます」
「ええ。わたくしも応援しますし、援助します」
「それは心強い。では、僕はいったん戻ります」
「久しぶりに顔を見れてよかった。また会いましょう」
「はい、では」
なにか吹っ切れたのか、帰る際はガルフォードの顔に余裕があった。ずっと悩んでいたんだ。
解決したのか解からないけれど、キッカケになったのなら良かった。




