婚約破棄回避
三枚目も白紙だった。
残るは二枚。
これで決着がつく。
……まずい。陛下が『騎士』を引く確率が高すぎる。
多分、これで引いてしまうかも。
そうなれば、婚約は破棄しなければならない…………?
そんなの嫌。
それだけは嫌。
お願い……引かないで。
「これで運命は決まる」
手を伸ばす陛下。
……終わったかも。
そんな予感がした。
それでも、わたくしは祈った。お願い……お願い。
その声が届くか分からないけれど、それでも。
「……」
「……さて、結果は」
カードをめくる陛下。
そのカードは………………?
え。
ウソ。
まさか……。
そんな、ウソよ。
信じられない。
どうして。
「………………え」
思わずそんな声が漏れた。
フェイルノートも信じられないと目を疑っているような雰囲気だった。
こ、これはいったい……。
「そうか、白紙だったか」
「ということは、わたくしの勝ち!」
「めくってみるがよい、クリス」
そう促され、わたくしは最後のカードをめくった。
すると。
「……こ、これは騎士のカード」
「うむ。見事なだな、クリス」
「では、わたくしの勝ちということで……?」
「そうとも。お前の運の強さ、この目でしかと見届けた。楽しかったぞ、クリス」
「……あ、ありがとうございます……?」
陛下は諦めれてくれた(?)ようで、帰っていいと言ってくれた。……よ、よかった……一時はどうなるかと。
これで婚約を破棄せずに済むのね。
安心した。
「お疲れ様、クリス。俺は君を信じていたよ」
「運が良かっただけです」
「運も実力のうちさ」
「そうですかね」
「そうとも」
「ありがとうございます。フェイルノート様」
ひとまずは城を出て、再び馬車へ。
このことをバルザックにも話しておいた。
「そうですか、お嬢様。それはよかったです」
「多分もう陛下もなにも言わないはず」
「……だといいのですが」
「え」
バルザックは妙に焦っていた。……そ、その反応はどういうこと?




