再び婚約破棄の危機
平和な日々が続いていく。
もう誰もわたくしとフェイルノートを邪魔しない。
そう思っていたのに……。
「お、お嬢様よろしいでしょうか……」
結婚も見えてきた今日この頃。バルザックは慌てて、わたくしの部屋にやって来た。
「何事なの?」
「……そ、その……大変申し上げにくいのですが」
バルザックは妙に歯切れが悪い。
あの戦いから三週間が経ち、何事もなかったというのに……また何か始まるの?
「その顔、まさか……」
「はい。単刀直入に申し上げますと……アリステア皇帝陛下が前回のアンジェリクス議長の不正を正したことを……大変お気に召したようでして……その、クリス様との婚約を認めぬと……」
「………………は?」
どういう意味、それ。
と、わたくしはただただ頭が混乱するばかりだった。
「陛下は、フェイルノート様との婚約を視野に入れているそうなのです」
「は? はぁ?!」
思わず声が裏返った、わたくし。いや、もう本当に意味が分からない。どうしてそうなるのよ……!
今度の敵は、皇帝陛下ってこと?
そんなの敵わないじゃない!!
「……駆け落ちするしか」
「ですよねぇ……」
バルザックも汗を滝のように流して肯定してくれた。今回のことが……皇帝だけに。
ああああああ、もうどうすればいいのよぉ……!
フェイルノート様に相談しなくちゃ。




