認められた結婚
しばらくはグラストンベリーで療養した。
ガウェイン騎士団の騎士たちを弔ってもあげたかったから。
一週間が経過。
ようやく帝国へ帰還することになり、フェイルノートの馬で帰ることに。
「この日を待ちわびたね、クリス」
「はい。やっと帝国で元の生活が送れるんですね……」
「ああ。もう問題ない。アンジェリクスは断罪したし、メドラウトも君が倒してくれた」
「いえ、わたくしだけの力ではありません。ガルフォードとバルザックがいなければ無理でした」
二人の力のおかげ。必死に押さえつけてくれたから。
あの戦後、ガルフォードは一足先に帝国へ戻った。バルザックも。
だから今日は、わたくしとフェイルノートの二人きり。
一緒に帝国へ帰る。
馬は帝国を目指して走り続ける。
* * * * * *
帝国内に入った。
出ていく前と変わりなく、いつもの日常がそこにはあった。
「まずはミステル邸へ向かう」
「ありがとうございます」
あれからお父様も大叔母様も実家に無事に戻ったらしい。二人の状況を確認しなくては。
ようやく見えてきた我が家。
燃やされていることなく、当時のままを保っていた。
よかった。
アンジェリクスの手によって破壊されているかもしれないと、心配していたけれど杞憂のようだった。
さすがに家にまで危害は加えなかったようだ。
庭に入って馬から降りて玄関へ。
早々、バルザックが現れた。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「バルザック、久しぶりね。お父様たちは?」
「ええ、ご無事です。それでは中へ」
久しぶりの邸宅。空気もニオイも変わりない。なにもかもが無事だった。
通路を進み、広間にお父様の姿があった。
「おぉ、クリス!!」
「お父様!!」
ケガなく健康そうなお父様が歓迎してくれた。
「本当にご無事でよかった……」
「それはこちらのセリフだよ、クリス。お前たちはアンジェリクス議長の攻撃に遭ったと聞く……」
「はい。アンジェリクスは乱心して、グラストンベリーを狙ったんです」
「噂通りか。お前とフェイルノートの関係を恨み、モルドレッド騎士団を差し向けたと……」
「でも、フェイルノート様が皇帝陛下と交渉してくださって、議長は解任されました」
「うむ。こちらでも聞いた。ともあれ、アンジェリクスは反逆者として処理されておる。安心するがいい」
よかった。わたくしたちが悪者にされているのではないかと不安だったけど、皇帝陛下のおかげで全て上手くいっている。
「辺境伯、この度はクリスを巻き込んでしまい……申し訳ありません」
「いや、謝罪は不要だ。フェイルノート、貴公はよくやってくれた。それより、ガウェイン騎士団の騎士たちを多く失ったと……そう聞いた」
「はい。モルドレッド騎士団と衝突し、大切な仲間を失いました」
今でも心が痛い。
わたくしもフェイルノートも、そして騎士のみんなも宴をする仲だった。
もう会えないなんて寂しすぎる。
「彼らの分まで精いっぱい生きるのだ、騎士団長」
「ありがとうございます。辺境伯」
「お前たちは幸せになれ。結婚を認めよう」
「本当ですか!」
「ああ。クリスを頼むぞ、フェイルノート」
お父様は結婚を了承してくれた。これでようやく戦いのない世界に身を置ける。
わたくしは彼と共に人生を。




