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さようなら、わたくしの騎士様  作者: 桜井正宗


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アンジェリクス議長を断罪

 グラストンベリーに敵はいなくなった。

 わたくしは、アンジェリクスがいないか馬に乗って周辺を探した。


 それにしても、凄い遺体の数。


 ガウェイン騎士団のみんなは思った以上に奮闘してくれていたらしい。


 ざっと見ても数百は転がっていた。

 そんな屍の中を進んでいくと、炎の中に影を見つけた。


 あのノロノロと歩いている後ろ姿。

 場違いなドレスに身を包む女性。



「アンジェリクス……!」

「…………ぐっ」



 やはり、グラストンベリーに来ていたのね。

 彼女の服装はボロボロで炎で焦げていた。手も、足も、その顔も泥まみれ。


 そうか。


 モルドレッド騎士団の敗走に巻き込まれて、あんな姿に……?



「……………がはっ」



 モルドレッド騎士団の生き残りらしき騎士が何者かによって倒され、その場で力尽きていた。


 もしかしてガウェイン騎士団の騎士が外周でずっと戦っていたの?


 この遺体の数……もしや、相当強いお方が。

 まさか。



「これで最後。残るはアンジェリクス、お前だけだ」

「フェイルノート……」



 振り向くフェイルノートは、アンジェリクスに対し、冷たい眼差しで見つめていた。

 そうか、やっぱりグラストンベリーに来ていたんだ!



 わたくしは馬を進め、フェイルノートと合流した。



「フェイルノート様!」

「クリス! すまない。駆けつけていた時には既に戦闘になっていた……」


「間に合っていたんですね……!」

「ああ。外から攻撃をしていた。相手が多すぎて時間が掛ったが、百人は倒した」



 それでこの屍の数々。

 なかなか会えないと思ったら、こんなことになっていたなんて。


 それより、アンジェリクスだ。



「わざわざ乗り込んでくるなんてね。てっきり帝国で高みの見物かと思いましたよ」

「クリスッ! よくも、我が弟を……!」


「先に攻め込んできたのは貴女でしょう」


「最後まで地獄を味わっておけばいいものを……!」



 唇を噛むアンジェリクスは、護身用らしき剣を取り出していた。そんなもので、わたくしを戦おうなんて。


 しかも手がぶるぶると震えて青ざめていた。


 そんな状態でよくもまあ戦場に出られたものだと呆れるばかり。



「アンジェリクス、貴女の置かれている立場……理解しておりますか?」

「……クリス! 元老院議長である私を殺す気ですか!? そんなことをすれば、皇帝陛下が黙ってはいませんよ!!」


 命乞いのつもりだろうか、アンジェリクスはそう叫んだ。


 わたくしはフェイルノートに視線を送る。


 すると。



「皇帝陛下はお怒りだ! アンジェリクス、お前のバカな行動を陛下はお見通しだ。昨日、議長を解任してくださった! だが、それでもお前はグラストンベリーを攻めた! これは国家に対する反逆行為! 死罪に相当する!」



 交渉も間に合っていたんだ!


 よかった。……本当に良かった。


 フェイルノートはきちんと仕事を終え、グラストンベリーまで戻ってきてくれいたんだ。けれど、軍勢に阻まれていたと。


 状況が状況だっただけ。



 それに、百人の騎士を倒してくれた。これだけでも、少しはガウェイン騎士団の騎士たちの無念が晴れるだろう。




「い、いや……いやあああああああ!!」



 乱心して剣を振り回してくるアンジェリクス。そんな乱れた剣では、わたくしには当たらない。


 そもそも疲れを一切見せていないフェイルノートが瞬時に対応してくれた。



「お前は終わりだ」


「ぎゃああっ!?」



 剣が宙を舞っていた。


 くるくると落下して地面に突き刺さった。

 アンジェリクスは武器を失った。



「我が騎士たちをよくも……!」

「ち、違うの……あれはモルドレッド騎士団が勝手にやったこと!!」

「アンジェリクス、お前が命令を下した。指揮官はお前だ」


「命だけは!! 命だけは!!」


「黙れ」



 涙をボロボロと流し、顔面を崩壊させるアンジェリクス。地面には水たまりも出来ていた。……こうなってしまえば哀れでしかない。


 バカな女。


 敵にはしてはならない人を敵にしてしまったのだから。



 まず、フェイルノートはアンジェリクスの両足を剣で両断していた。



「あぎゃあああああああああああああ!!!」



 これでもう逃げられない。



「我が痛み、クリスの痛み……騎士たちの痛みはこの程度では晴れない」



 次に右腕と左腕がお別れしていた。



「ひぎいいいいいいいぃいぃぃぃぃい……! も、モウ、ヤ、ヤメ…………」



 きっとこれでも足りない。

 でも、終わりにしなければならない。



「フェイルノート様、わたくしも」

「ああ……一緒に」



 わたくしは、フェイルノートに手を添える。


 剣をアンジェリクスの心臓のあたりに。




「…………ぁ、あぁっ。お、おねがい……だから…………」




 こんな惨めな姿になっても、アンジェリクスはまだ命乞いをしていた。



「貴女に“さようなら”は言わない。その価値すらもない」



 力を込め、剣を振り下ろした。



 ザクリと肉を割く音と感触。

 アンジェリクスは直ぐに動かなくなった。



 これでようやく……やっと終わり。長い長い戦いが終わった。

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