裏切りません
メドラウトは、もう切り上げるようで立ち上がった。
その際、わたくしを呼び出して二人きりで話がしたいと言った。フェイルノートは拒絶したけれど、わたくしは話を聞くことにした。
「大丈夫です、フェイルノート様。少しお話をするだけです」
「……近くで見張っている。もしなにかあれば直ぐに駆けつけるからな」
「もちろん、その時はお願いします」
本当はお傍を離れたくはない。
でも、話しをしなければきっと将来恐ろしいことになる。
だから、メドラウトと話をすることにした。
庭に出ると彼は、僅かに微笑んでいた。
気難しい人かと思ったけれど、そうでもないようだった。
「クリス、一応君にもチャンスを与えよう」
「……?」
「婚約を破棄して私と一緒に来い。そうすれば不幸になることはないだろう」
また婚約破棄……しかも、メドラウトと一緒に? それはありえない。彼のことをよく知らないし、知るつもりもなかった。
幸せは自分で掴む。
「お断りです」
「ハッキリ言うのだな。……ウム、悪くないぞ。だが、本当にいいのか? 考え直すなら今の内だ」
「先に教えて下さい。あなたとアンジェリクス議長は、どういう関係ですか?」
元老院がモルドレッド騎士団を動かすなんて、ちょっと納得がいかない。なにか裏があるに違いない。
「やはり気になるか」
「……はい」
「そうだな。こうして話し合いに応じてくれた礼に教えてやろう。アンジェリクスは、私の姉でね……。だから要請に応えないわけにはいかないのだよ」
姉! そうか、それでこんなアッサリ騎士団を動かせるんだ。
アンジェリクスは弟であるメドラウトに指示を出し、ガウェイン騎士団を追い出した――ってところね。なんてことを。
「そうですか。では交渉は難しそうですね」
「そういうことになる。だが、フェイルノートを捨て、私のモノになるのなら命は保証してやろう。姉には黙っておいてやる」
そんなことはしない。わたくしが愛しているのはフェイルノート。彼から離れるなんてありえない。
そもそも、アンジェリクスの弟という時点で敵だ。
「話はなかったことに。わたくしは戻ります」
「よかろう。では、グラストンベリーは焦土と化す。三日後を楽しみにしておくがよい」
鋭い言葉、口調でメドラウトは去っていく。最初からそのつもりだったように。
……っ!
姉弟そろってヒドイわ。
「大丈夫かい、クリス」
「フェイルノート様。メドラウトは、わたくしにあなたを裏切るようにと……」
「やはり、そんなことを」
「ご心配なく。わたくしは常にフェイルノート様と」
「ああ。俺も君と共にいる」
期限はあと三日……?




