ガウェイン騎士団の解体要求
今日からグラストンベリーで暮らすことに。
まさか自分が辺境の地に移住する日がくるなんて。
でも不便はなさそう。周囲は静かでお花もキレイ。
優しい人も多そうだと感じた。
「お紅茶でございます、お嬢様」
「ありがとう、バルザック」
「ご不便をお掛けいたします」
「いいの。フェイルノートと一緒に過ごせるのなら十分よ」
「そう言っていただけて安心しました」
まだ到着して一日で、帝国の情報もあまりない。
今頃向こうでは何が起きているのだろうか。
このグラストンベリーに攻め込んで来たりしないか、ちょっと心配。
でも、ここは見つかりにくいという。
アルフォネス大佐の存在が大きくて、そう簡単には手が出せないようだった。
「安心するといい、クリス。この辺境の地は騎士も多い」
「そうなのですね、フェイルノート様」
「ああ、ガウェイン騎士団の者も多数いる。それに、これから駆けつけてくれる者もいるはずだ」
フェイルノートによれば、元老院に不満を持つ者が多発しているようだった。今回のわたくしとフェイルノートの『婚約破棄』について反対が占めているとのこと。
なんて嬉しいの。みんな、わたくしたちの味方ね。
でも、元老院とモルドレッド騎士団だけは違う。
二大勢力がわたくしたちの仲を裂こうと、あの手この手を使ってくるに違いない。
もしかしたら内戦のようなことにもなりかねない。
でもそれは、さすがに皇帝陛下が見過ごさないとは思うけれど。
「今は、このグラストンベリーでゆっくりするしかないようですね」
「その通りだ、クリス。大丈夫、俺が君を守る」
「ありがとうございます」
今日のところは移動で疲れた。
清潔感のある広い大浴場を借りたり、美味しい晩御飯を戴いたりした。ベッドもフカフカで広々としている。
実家よりも過ごしやすいかもしれない。
こんなことなら、もっと早く辺境の地に移住するべきだったかも。
――二日後。
早朝から慌ただしい雰囲気がそこにあった。
「失礼します、フェイルノート様」
「もう到着したかのか、ガルフォード」
「不眠不休で只今、グラストンベリーに。騎士三十名を連れて参りました」
「それほど事を急ぐ必要があったのだな」
「はい。元老院は、ガウェイン騎士団の解体を要求。更に、フェイルノート騎士団長の元老院への召喚も……これを拒否した場合、監獄行きもありうると」
そんなムチャクチャな。アンジェリクス、そこまで必死なの……! あまりに身勝手すぎて許せない。
三十人の騎士たちは一晩中歩いてきたようで疲労で倒れそうになっていた。いえ、もう倒れていた。
「バルザック、みなさんにお水を」
「承りました、お嬢様」
けど、これだけの騎士を常駐できるのなら凄い戦力。これならそう簡単には攻められないはず。
まさかガウェイン騎士団がここに揃うとは思わなかったけど、頼もしい。
きっと大丈夫。きっと。




