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さようなら、わたくしの騎士様  作者: 桜井正宗


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婚約破棄しないと処刑

『――婚約を破棄してもらう』



 そんな声が部屋の中から聞こえた。


 え……?



 いったい、なんの話をしているの……?



 扉の前で立ち止まっていると、扉を開ける気配があってわたくしは数歩下がった。すると、そこにはフェイルノートの姿が。



「クリス!」

「フェイルノート様……ごめんなさい。聞き耳を立てるつもりはなくて」

「いや、いいんだ。それより、この会合は俺とキミの仲を裂く謀略だった」


「え……」



 まさか、アンジェリクスの魔の手がここまで迫っているの?

 詳しく聞こうとしたけれど、フェイルノートは険しい表情でわたくしの手を取って通路を歩く。



「ここにいては危険だ」

「どういうことですか?」

「詳しい説明は後でする」



 騎士団の外へ向かうようで、わたくしは黙ってついていく。

 本当になにがあったのだろう。


 出入口で門番らしき二人現れ、フェイルノートを止めた。……いえ、彼らはガウェイン騎士団の騎士ではなさそう。



「お待ちください、フェイルノート様」

「申し訳ございませんが……ここを落とすわけにはいきませんな」


 二人は、フェイルノートを(にら)む。


「どういうことだ?」

「モルドレッド騎士団の騎士団長メドラウト様のご命令です」



 モルドレッド騎士団って、まさか。

 今、会合で顔を合わせていたのも、この騎士団なのね。



「では、こう伝えるがいい。婚約破棄ならお断りだとな」



 やっぱり、さっき扉の前で聞こえたアレは、わたくしとフェイルノートの婚約に口を挟んでいたのね。

 でも、なんで他の騎士団の騎士団長であるメドラウトという人がそんなことを……?


 アンジェリクスと何か関係があるのかな。



 フェイルノートは、そのまま門を出た。

 二人の騎士は止めてこようとしたけれど、フェイルノートのプレッシャーに負けて一歩も動けずにいた。


 す、凄い……。ひと睨みしただけで大男二人を止めてしまうだなんて。




 バルザックの馬車に乗って、帝国を出ることになった。



「すまない。しばらくは辺境の地グラストンベリーへ避難する」

「辺境の地、ですか」


「ああ。モルドレッド騎士団の騎士団長メドラウトは、俺にクリスとの婚約を破棄するように迫ってきた。もし拒否すれば元老院の正式な決定で……クリス、君を処刑すると」



 …………?


 あまりに突然のことに、わたくしは頭の処理が追い付かなかった。……処刑? わたくしを?



「……意味が、分かりません」

「もしかしたらと思うが、クリス。君は今日、アンジェリクス元老院議長と話をしたんじゃないか?」


「そ、そうです! 元老院でも婚約を破棄するよう迫られて……! ということは、元老院とモルドレッド騎士団は……」


「結託しているということだ。俺とクリスの仲をどうしても裂きたいらしい」


「そんな!」



 アンジェリクス……そこまでして、わたくしとフェイルノートを別れさせたいの。そんな積年の恨みを晴らすみたいに、酷すぎるわ。


 馬車はついに帝国の外へ。


 こんな形で外へ出ることになるなんて不本意。本当なら新婚旅行とかで……いえ、今は命があるだけマシかもしれない。

 処刑されては意味がない。


 帝国を離れることになり、辛いけど今は辺境の地に身を隠そう。



「大丈夫だよ、クリス。我々、ガウェイン騎士団はこのまま引き下がるつもりはない」

「え……」


「部下は全員、俺とクリスの味方。今は、水面下では動き始めているのさ」

「モルドレッド騎士団と元老院と戦うのですか?」


「ああ、そうだ。全面戦争も避けられないかもしれんが、それでも――だ」



 ……不安はある。

 でも、今は彼らを頼る他はない。


 ガウェイン騎士団のみんなの力を借りる。あの騎士たちなら、きっと。

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