さようなら、議員
ガルフォードのことを楽しく語るフェイルノート。夢中になって聞いていた。
和やかな談笑。
事件もなにも起きない時間。
なんて幸せ。
そう思っていたのも束の間だった。
「おやめください!!」「議員、なにを!!」「そこは騎士団長室ですよ!」「いけません!!」「議員といえど、これ以上は!」
なんだか外が騒がしいような。
「どうしたのかな」
フェイルノートは扉を開けた。すると、そこにはセナトリウス議員の姿。
「見つけたぞ、フェイルノート! クリス!」
目に隈が……それとかなり充血していた。恐らく、ミストレアの件で大きなストレスを抱えたのでしょう。
髪の毛もだいぶ薄くなっているように見えた。
「セナトリウス議員ではありませんか。どのような用です?」
「フェイルノート……お前のせいだぞ」
「おっしゃる意味が分かりませんな」
「白々しいぞ! 我が娘ミストレアを幽閉したではないか!!」
やはり、その件だったか。
これについては、もう事件として扱われている案件だ。セナトリウス議員の出る幕はないほどに。
「ミストレアは、わたくしとの決闘に敗北。そして、暴走してフェイルノート様を殺そうとした。この罪は重いですよ」
「そうかもしれん。だが、クリス……お前が不正をしていた疑いもある」
「……はい?」
「禁忌の魔法を使ったのではないか!」
「そんなわけないでしょう。そもそも魔法アイテムの使用も認められておりますし」
ある程度はアイテムを使ってもよいことになっている。体力を回復させるポーションだって本当は使ってもよい。
「ぐっ。とにかくだ、フェイルノートおよびクリス……お前たちには責任を取ってもらう!」
そんなメチャクチャな。それはフェイルノートも感じたようで呆れた様子だった。
「議員。一応、聞きますが責任の取り方は?」
「むろん、お前とクリスは婚約を破棄するのだ。そしてミストレアの代わりに牢に入れ……! クリス!」
なぜか目の仇にされるわたくし。どうして、そうしつこいの。もうウンザリよ。
面倒くさがっていると、フェイルノートは鞘から剣を抜いていた。
「議員。いや、元議員」
「な、なにを!! フェイルノート、これは国家に対する反逆行為だぞ!!」
「元議員になら問題ない」
「違う! 私はまだ元老院議員だ!!」
と、叫ぶセナトリウスだったけれど。
騎士団長室にガルフォードが入ってきた。
「報告致します! 先ほど、セナトリウス氏の議員解任が承認されました。彼はもう議員ではありません」
その報告に凍り付くセナトリウス。彼はもうおしまい。
もう威張り散らすことも許されない、ただの一般人。
「さようなら、議員」
「クリス、貴様あああああああ! 貴様、貴様、貴様ああああああああ!!」
泣き叫び、首を絞めてこようとする元議員。
けれど、フェイルノートが瞬時にセナトリウスにみねうちの一撃を入れていた。彼は気絶して脱力。
「ありがとうございます、フェイルノート様」
「当然さ。これでセナトリウスの処分も完了した。陛下に謁見して正解だったよ」
「そうだったのですね……!」
「ああ。今回のことを重く見てくれたらしい。間に合ってよかったよ」
「さすがフェイルノート様!」
これで今度こそ邪魔者は消え去った。




