氷の騎士
更に一週間が経過。
フェイルノートは無事に元気になり、歩き回れるようになった。
一緒に庭を散歩したり、街の外も出かけた。
そして、ガウェイン騎士団にも顔を出すように。
騎士のみんなはフェイルノートを大歓迎。
わたくしも、未だにミストレアに勝利したことで賞賛されていた。とても気分がいい。
「クリス様、今日もお美しいですね」「剣を俺にも教えてください!」「フェイルノート騎士団長と婚約されたのですね」「羨ましい限りだ」「素直に祝福できる」「二人には幸せになってもらいたいものだ」
などなど嬉しい言葉が飛び交っていた。
「よかった。みんな変わりないようだ」
「そうですね、フェイルノート様」
騎士団長室へ向かい、そこで二人きりに。
「ここも変わりない」
「これから仕事にも復帰されるのですね」
「ああ。少しずつだけどね。遠征はしないつもりだ」
「そうしてくださると嬉しいです」
未だに王国との小競り合いが続いているという。死傷者も毎日出ているのだとか。ヴァレリアの事件のせいで、帝国はかなりピリピリしているようだった。
だから、王国の行動に目を光らせていて、たまに衝突が起きているらしい。
「ガルフォードを正式に副団長に迎えようと思う」
「あの報告係の……」
「クリス、彼がそう見えたかな」
微笑むフェイルノート。
ガルフォードは少年のようにしか見えなくて、剣の腕もそれほどではなさそうに思えた。けれど、実際はそうではなかった。
フェイルノートによれば、ガルフォードは皇帝陛下も認める凄腕の騎士らしい。その実力は騎士団長クラスなのだとか。凄い人だった。
「ごめんなさい。わたくし、勘違いを」
「ガルフォードは幼く見えるが、戦場では“氷の騎士”と呼ばれている。冷静なだけでなく、彼には神秘があるんだよ」
「神秘、ですか」
「ああ、詳しく話そう。ガルフォードがどうして副団長に相応しいか」
楽しそうに戦場のことを語るフェイルノート。そういえば、戦いのことはあまり聞いたことがなかった。彼やその身の回りのこと、少し聞いてみるのもいいかもしれない。




