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さようなら、わたくしの騎士様  作者: 桜井正宗


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35/85

伯爵が経営するとあるお店

 フェイルノートから剣を学び、少しだけマシになった……と、思う。


「うん。フォームは様になったし、動きも中々に機敏だ。クリスは、確かフェンシングをしていたんだっけ」


「はい。ほんの少しですけれど」


 僅かな間だったけど、お父様から教えてもらった過去がある。

 残念ながら長続きはしなかった。

 わたくしは剣よりも花を愛でたり、宝石を眺めたりしている方が良かったから。



「クリスは、剣のセンスがあると思う」

「本当ですか?」


「ああ。俺が保証する。……さて、ここまでにしよう」



 空はすっかり茜色に染まっていた。

 そろそろ日が沈んでしまう。


 剣の修練はここまでにして、邸宅(いえ)の中へ。

 フェイルノートはしばらく我が家で泊まることに。騎士団で何かあれば信頼できる部下が動いてくれるという。


 幸い、お父様もフェイルノートならいいだろうと珍しく納得していた。


 てっきり反対されるものと思っていたのだけど、彼が生きていたことが相当嬉しかったようだった。




 大浴場で汗と疲れを流す。

 節々が少し痛い。こんなに体を酷使したのは人生で初めてかもしれない。

 辺境伯令嬢で貴族あるわたくしが、ここまでする必要は本来ない。けれど、戦わずして敗北はプライドが許さない。

 あの女、ミストレアに負けるわけにはいかないのだから。


 それにしても爪に負担が……うーん。




 翌日。

 重い体を起こすと、すぐに違和感を感じた。


 あれ……なんか変な感触が。



「……って、フェイルノート様!」



 隣に彼の姿が――って、前にもこんなことがあったような。

 でもいいか、彼がそばにいてくれるだけで力が湧く。勇気をもらえる。

 フェイルノートの寝顔をじっくりと見つめ、彼の頬に手で触れる。……必ず、勝ちますからね。



 * * * * *



 庭にあるティーテーブルで自身の爪を眺めていると、フェイルノートが声をかけてきた。


「どうしたんだい、クリス。妙に落ち込んでいるけど」

「その、爪に負担が……」


「なるほど。剣を握る力のせいだね」

「やっぱりそうなのですね……」


「俺がなんとかしよう」

「本当ですか?」


「ああ。知り合いにネイルサロンを営む貴族がいる。そこへ行こう」



 費用は負担するからとフェイルノートは言ってくれた。そういうお店があるなんて知らなかった。



 さっそくバルザックに馬車を出してもらい、そのネイルサロンへ向かった。

 そこは街中の中央噴水エリアにある大通りのお店だった。


 すご、こんな場所にお店を構えているなんて。さすが貴族ね。



 フェイルノートのあとをついていく。

 やがて見えてくる三階建ての建物。とても立派で驚く。


 お店の名前は【ローズマリー】とオシャレな文字で書かれていた。


 中へ入ると、落ち着いた雰囲気の内装が見えてきた。……あ、柑橘系の良い香りがする。これはアロマね。



「いらっしゃいませ。……おや、フェイルノート」

「久しぶりだね、シリウス」



 優雅にお茶を楽しむシリウスという銀髪の男性。若い青年で、とても顔立ちが整っていた。片眼鏡がオシャレ。

 この人がネイルサロンを経営しているの……?



「彼女を連れてくるとはね」

「……まあ、そんなところだ。クリスに最高品質で可愛いものを頼む」


 わ、嬉しい。そこまでしてくれるなんて。



「はじめまして、クリスです」

「僕はシリウス。シリウス・エヴァンスです」



 エヴァンス。どこかで聞いたことがあるような気がする。

 確か、伯爵家だったような。

 そんなお方がお店を経営しているなんて不思議なこともあるんだ。



「今日はよろしくお願いします」

「そう硬くならなくていいですよ、クリス様。ミステル家の辺境伯令嬢でしょう?」

「よくご存じで」


「ええ、有名ですからね。それより、好みのネイルチップをお選びください。どれも最高峰で魔力も込められておりますので、あなたの安全を常に守ってくれます」



 ケースを取り出し、ネイルを見せてくれるシリウス。そこにはズラリと可愛い爪が並べられていた。こんなに様々なデザインがあるんだ。知らなかった



「か、可愛い……」

「そうでしょう。こちら貴族様専用となっておりますので。こちらの花柄は特に人気がありますよ」


「おぉ」



 まさかこんな世界があるなんて知らなかった。フェイルノートに感謝ねっ。

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