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さようなら、わたくしの騎士様  作者: 桜井正宗


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その婚約、ちょっと待った

 明日、婚約を交わそうとフェイルノートは告げてくれた。

 感激だった。

 ようやく幸せを掴める。


 もう誰にも邪魔されず、辺境の地で暮らすのもいいのかもしれないと思い始めた頃だった――。



 翌日。



 フェイルノートが我が家にやってきた。

 せっかくなのでお庭へ向かい、そこで指輪を受けることに。



「約束通り婚約指輪を」

「嬉しいです。フェイルノート様」



 やっとこの瞬間(とき)が。

 彼は懐から婚約指輪を取り出し、わたくしの目の前に。


 ああ、やっと幸せの第一歩を――。



「ちょっと待ってもらおうか!!」



 え……!?


 誰かが庭にズカズカと入ってきて妨害(?)してきた。いったい、誰なの?



 ……って!



「……セナトリウス議員」



 フェイルノートがぽつりと『セナトリウス議員』と言った。

 そう、あのおじ様は昨日、城内で会った元老院議員だった。どうしてここに。しかも、隣には女性騎士らしき人も連れ歩いていた。……護衛?



「フェイルノートよ、お前に話がある」

「私に、ですか」


「そうだ。その婚約は破棄してくれないか」

「…………? 今、なんと?」


 思わず聞き返すフェイルノート。わたくしも耳を疑った。


「だから婚約破棄してくれと言ったのだ。辺境伯令嬢クリスと親密な関係であることは重々承知しておる。だが、こちらの騎士ミストレアとの婚約も検討してもらいたい」



 ミストレアという女騎士は、フェイルノートを一瞥(いちべつ)して深々と頭を下げた。



「遠征から帰還いたしました、騎士団長」

「無事に戻ってきてくれてよかった。しかし、これはどういうことだ、ミストレア」


「父の言いつけですから」


「なに……?」



 まさか、このセナトリウス議員は彼女のお父さんってことなの……!

 だから、わたくしとフェイルノートの婚約に待ったをかけて――でも、そんな強引な。 さすがのわたくしも抗議した。



「ちょっと待ってください。いくらなんでも突然すぎませんか、セナトリウス議員」

「ほう。では、ガウェイン騎士団が消失してもよいと申すのか?」


「……!」



 議員という立場を利用してくる気ね。確かに、元老院の地位は非常に高い。意見できる立場にない……不利すぎる。


 でも、突然現れて、わたくしとフェイルノートの関係を裂くような真似、許しがたい。

 怒りが沸いているとフェイルノートが冷静に言葉を返していた。



「議員。私はクリスを心の底から愛しているのです」


「お主の感情など関係ない。我が娘と婚約するか、そうでないか……そして、ガウェイン騎士団が必要か不要か。そういう話なのだよ、これは」



 なんて人なの!!


 フェイルノートが大切にしている騎士団を、ある意味では人質にしている。もし、わたくしと婚約すれば騎士団は潰されるってことね。


 そのことにフェイルノートも表情を硬くしていた。


 許せない。

 わたくしから幸せを奪おうとする、この議員が!


 そんな空気の中でミストレアがわたくしの前に立った。



「いかがでしょう、クリス様。ぜひ、私と決闘して勝敗を決めるというのは?」

「え……」


「もちろん、断って逃げ出してもらっても構いませんが。その場合は、敗北と見なします」



 最初からそのつもりだったのかしら。

 でもいい、それで決着をつけられるのなら、わたくしは。



「いいでしょう。では一週間後でよろしくて?」

「はい。さすがに素人相手では一方的すぎてつまらないですからね」



 もう勝った気がいるようだった。そうはさせない。フェイルノートから剣を教えてもらい、腕を上げておく。そして絶対に勝つ……!

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