さようなら、自称王妃
ヴァレリアの首筋に刃が向けられる。
ルドラ……いえ、フェイルノートは本気だった。
「……フェイルノート! なんで……」
「ヴァレリア、お前は罪を重ねすぎた。弟のルドラだけでなく、クリスの命も狙った。……万死に値する」
言葉に怒りをにじませるフェイルノートは、光の魔法を作り出してヴァレリアの手足を拘束した。
「わ、私をどうする気!?」
「この場で切り捨てることは簡単だ。だが、それでは俺の怒りは収まらない。騎士団長としてお前に宣告する。戦争犯罪および殺人罪で死刑に処す」
ヴァレリアは、主にルドラを暗殺した罪を問われた。もちろん、妹のマイナに対する殺人も含まれた。
しかもバルザックの情報によれば、エルドリア王国の王妃――“候補”ということが判明した。
婚約すらしていないという。
つまり、ヴァレリアは王妃を『自称』していただけだった。
どこまで見栄を張っているのやら呆れるばかりだ。
だから、ヴァレリアは本当にだだの罪人として裁かれることになった。
「ルド……フェイルノート様」
「ずっと真実を告げられず申し訳ない、クリス」
改めて謝罪するフェイルノート。
今は胸がいっぱいで言葉が見つからなかった。嬉しくも思い、悲しくも感じた。
弟のルドラは、ヴァレリアの手によって暗殺されていたのだから……。心中は複雑で、素直には喜べなかった。
でも、それでもフェイルノートがこうして目の前に帰ってきてくれて、わたくしはそれだけで涙が出そうになった。
せめて感謝を。
「ありがとうございます」
「こちらこそ、こんな俺のそばにいてくれてありがとう」
壊れないよう丁寧に抱きしめてくれるフェイルノート。嬉しい。
「……くッ! クリス、あんたばかり幸せになれると思わないことね!」
ヴァレリアは、まだ負け惜しみを口にする。
もう何を言われても感じない。
これから彼女は罰を受けるのだから。
その後、複数の騎士が到着してヴァレリアを連行。
まずは取り調べが始まった。
どうしてヴァレリアが敵国であるエルドリア王国と蜜になっていたのか。どうやって王国へ入ったのかなど、ラングフォード家自体にも疑惑の眼差しが向けられた。
そもそも、ラングフォード家はいろいろ問題を起こしていた。
このままなら徹底追及されて、貴族としても終わるのではないかと囁かれ始めていた。
そうして時が流れ、ヴァレリアは簡単な裁判で死刑が言い渡された。




