好きという気持ちは変わらない Side:フェイルノート
◆Side:フェイルノート
「……フェイルノート。ルドラが戦死した」
父上がそう悲しそうに訃報を告げた。
その瞬間、俺の中で何かが崩れ去っていくような、まるで世界の終わりのような感覚に陥った。
弟が死んだ……?
病気で伏せた俺の代わりに騎士団長として戦争に出たルドラ。
誕生日を迎えたばかりだったのに、それでも帝国の為に、ガウェイン騎士団存続の為に、なによりも俺の為にと遠征していった。
あの時、止めていれば。
そんな後悔だけが渦巻く。
「父上……俺のせいだ」
「入れ替わっていたのは知っている」
「俺が死ねばよかったんだ」
「馬鹿なことを言うな。フェイルノートよ、お前はルドラの分も生きねばならん」
「こんな病に犯された俺になにができる……?」
もう無理だ。弟がいなくなっては俺には……もう。
今まで上手く入れ替わってお互いを支えてきた。そうだ、だからこそ騎士団長の地位まで上り詰められた。
ミステル家の辺境伯にも認められたんだ。
だが、弟を失った以上は……俺ひとりでは何もできない。俺よりも弟のルドラの方が優秀だったからな。
「悲観する必要はない。お前にはお前にしかできないことがあるのだ」
「……父上。俺は弱い人間です。成し遂げられる自信がない」
「いいや、フェイルノート。お前には圧倒的なカリスマ性がある」
「え……」
「騎士団長という立場をモノにしたのは、間違いなくお前の力だからだ。それを私は知っている。だから誇って良いのだ」
「父上……」
「それに幼馴染を今でも思っているのだろう?」
「ああ。彼女は……クリスは覚えていないようだけど、俺は覚えている。ずっと好きで、今でもその気持ちは変わらない」
微笑む父上は、俺の肩に手を置いた。
昔から父は優しくて俺たちを正しい方向へ導いてくれた。
そうだな、ルドラの分もがんばろう。
弟の死を無駄にしない為にも。
俺は弟の遺志を継ぎ、フェイルノートとしてもルドラとしても生きる――。
* * * * *
犯人がようやく解かった。
クリスの執事バルザックのおかげで全てが判明した。
さすが元隠密部隊の隊長だ。
父が言っていた通り、バルザックは不思議な魔法も使えて有能だ。
証拠を見せてもらった。
弟を殺したのは『ヴァレリア』だ。
その昔、子供の頃にも奇襲をしてきた悪魔のような女。……そうか、あの時の少女が。
その血で罪を償ってもらう。




