表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さようなら、わたくしの騎士様  作者: 桜井正宗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/85

わたくしを舐めすぎた結果

「クリス……敗北を認めなさい」


 不敵に笑うヴァレリアは、警戒するようにわたくしの周囲をゆっくりと歩く。

 油断をすれば刺されるかもしれない。

 それとも、酸を掛けてくるかも。


 一応、バルザックがいるとはいえ……一定の距離を保たないと危険ね。



「認めてどうなるというの?」

「ルドラとの関係を終わらせて辺境の地で静かに暮らしなさい。そうすれば、命だけは助けてあげるわ」


 意味の分からないことを。

 同意する意味もなければ、なんのメリットもなかった。


「拒否するわ。ヴァレリア、あなたは頭がおかしいようね」

「ええ、そうでなければ敵国の王子と結婚なんてしないかもね」


 と、ヴァレリアは認めた。

 なんて女なの……。


「そもそも、それは売国ではなくて? 処刑されてもおかしくないわ」

「ええ、だから滞在もあと一日が限度でしょうね」


 そうか、決着をつけるためにわざわざやって来たのか。恐らく、ルドラや騎士団に捕らえられることも計算済みで――逃走ルートを考えてあるってところかも。

 わたくしを陥れた後に王国へ帰ろうということね。


 逃がさないわ。


 もっと時間を稼がないと……!


「そう。ヴァレリア、ひとつ聞かせて」

「いいでしょう。時間があまりないけれど、ひとつくらいなら聞いてあげる。冥途の土産にね……!」



 ニヤリと自信満々にするヴァレリア。そんなに余裕があるだなんて……よっぽど緻密(ちみつ)に計画を練ってきたようね。



「あなた、フェイルノートが好きだったの?」


「ええ、もちろん。子供の頃から好きだった。彼を最初に狙ったのは私だった。でも、クリスあなたが現れ……彼をかすめ取った。だから許せなかったの……!」



 その場で立ち止まり、ヴァレリアは憎悪をわたくしに向ける。



「だからって殺そうとするのはおかしいでしょう! 記憶を消したり、酷いわ!」

「おかしくなんてないわ。私の愛は本物だもの!」



 近づいてくるヴァレリア。その間にバルザックが守るように入った。


「お嬢様。私の後ろに」

「ありがとう、バルザック」



 けれど、ヴァレリアはスカートの中からナイフを取り出していた。そんなところに!



「執事、邪魔をしない方がいいわ」

「そうはいきません。ヴァレリア様、どうかお引き取りを」

「残念だけどクリスを抹殺しないといけないのよ」



 ナイフを持ち、向かってくるヴァレリアはバルザックに襲い掛かった。そして刃を彼の肩に。



「……ぐっ」

「バルザック!」


「お嬢様……逃げてくださ……」



 なんてことを。

 この女、わたくしの大切な人を次々に。

 許せない。



「ヴァレリア!」

「へえ、素手で来る気!? クリス、あんたみたいなか弱い女では何もできないわ!!」


 こんなこともあろうかと、広間には『レイピア』があった。壁に飾られている剣を取り、ヴァレリアに向けた。



「覚悟!!」


「なッ! レイピアだなんて!!」



 驚くヴァレリア。ナイフとレイピアでは、圧倒的なリーチの差があった。当然、レイピアの方が長くて鋭い。しかもスピードに優れている。


 普段、ルドラの決闘を目の当たりにしていたから、動きを模倣できた。それに、フェンシングを齧っていたから。


 おかげでヴァレリアのナイフを弾き飛ばし、そして右肩と左肩に刺していく。



「てやっ!」

「ぎゃあ!? いやぁあぁッ!?」



 更に気合で突き入れると、ヴァレリアの頬をかすめた。

 そのまま剣を首元へ。


 ヴァレリアはその場にヘナヘナと崩れていた。



「わたくしを舐めすぎた結果ですよ、ヴァレリア」

「そ、そんな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ